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俺は作戦を進言した‼︎

変わり果てた元【軍神】の姿を見て愕然としてしまった俺


自身の息子を大切にしようと固く誓った瞬間だった、今後せいぜい親孝行してくれることを願うばかりである。

 

そんな俺の思いとは関係なく怪しげな笑みを浮かべて近づいてくる筋肉オカマ……


いやラブニルド将軍は俺にピタリと身を寄せ、顔を近づけてきたのだ


「そんなに怯えなくてもいいじゃない、うふふ、ウブなのね~可愛いわ」


背中に大量の嫌な汗が流れる、虫唾が走るとはこの事か⁉


俺は精一杯顔を背け嫌悪感たっぷりの表情を浮かべる。パーソナルスペースって言葉知っていますか?


「あ、あの……初めましてラブニルド・ポンジョバーニ将軍


私は松岡真二と申します、お会いできて光栄ではありますが、もう少し離れてはくれませんか?」

 

俺は取りあえず挨拶をし、何とかこの筋肉ダルマと距離を取ろうと試みた


「あ~ん、そんな他人行儀な呼び方は止めてシンジちゃん。私の事はラブポンって呼んでちょうだい」

 

俺の思いとは裏腹に、さらに近づいてきて馴れ馴れしく顔を摺り寄せてくる筋肉オカマ


何だろう、全く話が通じないぞ!。自身のバナナと共に他人との距離感や


常識的なコミニュケーションという概念も食いちぎられてしまったのだろうか?


俺は美女とイチャラブしたくてこの世界に来たんだ


こんな筋肉ダルマと〔おっさんずラブ〕するためでは断じてない。


「あの将軍、勇者様はこちらの世界に来たばかりですので……」

 

さりげなくフォローしようとしてくれる王女、やはり女神である


そんな時、息を切らせた兵士が慌てた様子で入ってきた


「王女様、魔犬の群れが進軍速度を上げて接近中との事


このままでは二時間後にはここに到着して……あっ⁉」

 

その兵士はラブニルド将軍の姿を見て思わず口に手を当てる、王女を始めの顔から血の気が引く


「あいつらが来るの?……あの犬共が、また私の、私の……」

 

ラブニルド将軍の顔色が見る見るうちに変わり顔面蒼白になる、そして


「ぎゃあぁぁぁ~~~~‼」

 

ラブニルド将軍は急に叫び声をあげたかと思うと両手で頭を抱えながら床にうずくまりガタガタと震え始めたのだ。

 

うわ~凄いトラウマになっているじゃん。無理もないか、自分のバナナを食いちぎられたんだもんな


同情はするぜ、二度とお近づきにはなりたくないが。

 

するとラブニルド将軍は急に立ち上がると大声で叫び始めたのだ。


「処刑よ、あいつらは処刑するしかないのよ‼」


何かに取り憑かれたかのように叫び始めるラブニルド将軍


「処刑よ、処刑、あの犬共は全員処刑なのよ‼」

 

俺は言葉も無く、ただその光景を見ているだけだった


そんな将軍の姿を見て目を閉じながらゆっくりと首を振る王女


「将軍を医務室に運びなさい……」

 

数人の兵がラブニルド将軍を抱える様に運んでいく


運ばれていった廊下の向こうからでも将軍の声はずっと聞こえてきた、バツが悪そうに俺の方を見る王女


「お見苦しいところをお見せしました。将軍はその……少々精神的に不安定な状態でして……もう少し休養が必要なのです」

 

少々精神的に不安定な状態?いやいや少々なんてもんじゃないでしょ


あれはもうサイコパスだよ、魔犬絶対殺すマンになっちゃっているじゃん

 

俺は苦笑いを浮かべつつ視線を逸らすと窓から見える大きな橋が目に入ってきた


その時、ある事を思いついたのである


「そうだ、魔犬が必ずあの橋から来るとわかっているならば、あの橋を封鎖することはできないのですか?」

 

王女を始め重鎮達も驚いた様な表情を浮かべ顔を見合わせる


おいおいそんなの誰でも思いつくことだろ⁉


後ろの老人達が何やら小声で話し始めた


そして王女に耳打ちすると王女はむつかしい顔をして俺に語り掛けてきたのだ


「実はあの橋は我が国の所有物ではないのです」


「えっ⁉どういうことですか?」


王女は何かを思い出す様に、悲しげに語り始めた


「あの橋は隣国であるゲセラ共和国の所有物なのです


我が国は二年前までゲセラ共和国と戦争状態でした


そしてようやく和平を結び国交正常化の証としてあの橋が造られたのです


両国をつなぐ橋ではありますが費用は全てゲセラ共和国が出しており


我が国にはあの橋を自由にする権利は無いのです」


「しかし現在、この様に国が危機的状態なのです


国交が正常化しているのなら、話せばわかってくれるのではないですか?」

 

そんな俺の意見に王女を始め皆がざわつき始める


「そうですね、交渉してみる価値はありそうですね」

 

王女の後ろで話していた重鎮達の話がまとまったのか、大きく頷き王女に進言した。


「そういう事でしたら、交渉役にはタメリオが良いでしょう


国交正常化の際にも随分と骨を折ってくれて、あちらの国にも顔が利きますから」


「そうですね。ではタメリオ、お願いしますよ


貴方の交渉に我が国の命運がかかっているといっても過言ではありません」

 

王女の名を受けたタメリオという名の男はまだ三十代前半と見られる容姿をしていて


頭の良さそうな鋭い目つきが只者でない事を思わせる、そして王女の命に対し不敵に微笑んだ。


「お任せください王女様、必ずやこのタメリオがゲセラ共和国との交渉を上手くまとめ


我が祖国の危機を救ってみせましょう‼」

 

後ろから〔おお~~〕という感嘆の声が聞こえる、王女も嬉しそうに微笑んだ


「では早速行ってまいります‼」

 

そう言い残し、足早に出ていくタメリオ。王女はその後姿を祈るような目で見つめていた


「あの~王女、どうしてもっと早くゲセラ共和国と交渉をしてこなかったのでしょうか?」

 

素朴な疑問を聞いてみた、こんな簡単な事を誰も思いつかないなんて有り得ないからだ。


「そうですね、ただ今までは軍事を含めた外交の指揮権は全てラブニルド将軍が握っていましたので


我々もその指示に従っていたのですが


将軍は二年前まで敵同士だったゲセラ共和国に多くの部下を殺されています


ていますからどうしても頭を下げる事が出来なかったのかもしれません


【軍神】と呼ばれた男の誇りなのかもしれませんね」


男の誇り?アレが?思い出すだけでも背筋が寒くなる筋肉オカマを必死で忘れようと頑張る俺


そして王女は話を続けた。


「それに比べるとあのタメリオは大丈夫です、幼少期にゲセラ共和国で過ごした事があって


ゲセラ共和国に対して敵愾心がありません、国交正常化の際には一番働いてくれた人物と言ってもいいでしょう」


「なるほど、今回の交渉役には適任という訳ですね⁉」


コクリと頷く王女


「ええその通りです、彼は将軍と違って太いパイプを持っていますから」


「言い方、その言い方‼ダメですって貴方はそういうことを言っては⁉」

 

俺は慌てて王女に忠告した。ワザとやっているのか?だとしたら中々の発言である


ある意味ご褒美と言ってもいい。だが祖国が危機というこの状態で


あえて下ネタをブッこんでくるとしたら、かなりの剛の者である。

 

王女は窓の外の橋へと視線を移した。心配そうな表情を浮かべながらジッと橋を見つめている


その視線の先には今まさにタメリオが橋を駆けて行くところが見えた。


「頼みますよ、タメリオ……」

 

独り言のようにボソリと呟く王女、その眼差しはやはり一国を背負っている者の重みを感じさせた。

 

しばらくの間、重い空気が場内を支配し誰もが沈黙したまま口を閉じていた。

 

こういった重い空気に耐性が無い俺は、堪らず窓の外に目をやる


湖と森に囲まれたこの城はおとぎの国の様なたたずまいを見せていた


鳥の鳴き声が耳に届き、暖かい気候が肌をそっと撫でる


戦争だの魔犬だのという物騒な話とは無縁にしか見えない。

 

よく見てみると湖にかかったその巨大な橋は建造されたばかりな為


まだかなり綺麗で所々に装飾も施してあってとても美しい


日の光が水面に反射してキラキラと橋を照らし、その効果で橋自体が七色に輝いていた。


「橋の封鎖の交渉、上手くいくといいですね」

 

俺は沈黙を破る様に王女に声をかけた、この空気に耐えきれなくなったから


というのもあるが俺自身心からそう思ったからだ。


気休めかもしれないがそんな思いだけでも届けたい、そう考えた俺は本心からそう告げたのだ


王女に対してさりげなくポイントを稼ぎたいからでは断じて無い。


「ええ、そう信じたいですね、きっとタメリオがやってくれます


このレインボーブリッジが封鎖できれば我が国は……」

 

ん、今なんて言った?俺の聞き間違いなのか?


「今レインボーとか何とか言いませんでしたか?」


「はい、この橋の名はレインボーブリッジと言います。両国の間に虹をかけるという意味を込め建造されたのです


それを封鎖しなければいけないとは皮肉な話ですが、どうしてもレインボーブリッジを封鎖しなければ……」


いやいやいや、あの橋の名がレインボーブリッジであるならば、もう既にフラグが立っていますよね?


「レインボーブリッジは封鎖できないと思いますが……」

 

王女と重鎮達がギョッとした目で俺を見た


「どうしてですか⁉何故そんなことがわかるのです⁉」


王女が問い詰めるような勢いで俺を見つめた、続いて後ろの老人達も食い気味に問いかけてくる


「勇者様はどうしてそのような事がわかるのですか⁉」

 

いや、どうして?と言われても〈昔そういう映画があったから〉とは言えない

 

それからすぐ俺たちの目の前にタメリオが帰って来たのだ


ハアハアと息を切らせ顔面は汗だくである、それにしても早くね?


疲労困憊といった様子のタメリオであったがそれを気遣う余裕のある者はいなかった


一刻も早く結果が知りたいのだ、王女を始め皆が息をのんで結果報告を待っている、そしてついにタメリオが口を開いた


「レインボーブリッジ封鎖できませ~ん‼」〔織田裕二風〕


俺にとっては懐かしいフレーズと言い回しだが、その報告にガックリと肩を落とす王女と重鎮達


中には膝から崩れ落ちる者もいた。そんな中、俺だけが思わず口走る


「でしょうね」

 

しかしやり切れないのか、老人達からタメリオに対し抗議の様な言葉が浴びせられた


「何でじゃ、ちゃんとこちらの事情を話したのであろうな⁉」


「今、両国は友好的な関係にある、なのにどうして封鎖できないのじゃ‼」


「な~にやってんだよ、タ~メ~‼」〔織田裕二風〕


タメリオは息を整えながら説明を始めた


「ゲセラ共和国側の言い分は、レインボーブリッジの封鎖には元老院の評決による承認が必用との事なのですが


二時間ではとても無理との事なのです。ただそれは表向きでおそらく本音は


もし橋を封鎖すれば行き場を失った魔犬の群れがゲセラ共和国になだれ込んで来て暴れ回る事を恐れている様です」


成程、それはよくわかる理屈だ。いくら国交を正常化させ友好的な関係を築いているとしても


自分の国が可愛いのは当然であり、他国を救うために自国民を危険にさらすわけにはいかないという事だな。


しかし困った、魔犬の群れは刻一刻と迫ってきている。


【軍神】と呼ばれた将軍は男としての誇りも○○○もなくしもはやヒステリックに叫ぶだけの有害対象と成り果てた


俺は転生したばかりの世界でいきなりとんでもない場面に出くわしてしまったのである。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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