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俺が見た軍神‼︎

その報告に王女を始め皆の表情がこわばる、まだこの世界に来たばかりだというのに


武器も持たないまま戦う羽目になってしまうのか?

 

俺がそんなことを考えていた時、王女が右手を前に突き出し大きな声で皆に指示する


「全員戦闘配置につきなさい、そして対魔犬用の例の物を大至急用意してここに持ってきなさい


それと兵達には例の作戦を徹底させて。一刻を争います、急ぎなさい‼」


急激に慌ただしくなる城内、何が何やらわからない俺はただ茫然とその光景を見つめていた


ハッと我に返った俺は疑問に感じたことを王女に聞いてみる


「あの……王女様、この国ではあなた自身が戦闘指揮を執るのですか?」


そんな俺の質問に顔を伏せ表情を曇らせる王女、何か訳アリの様である


「実は我が国にはラブニルド・ポンジョバーニという将軍が軍の全てを統括しておりました

 

彼は軍事の専門家であり戦略、戦術に長け、武人としても国内に並ぶ者がいない程強く


〔ルドラン王国の獅子〕とか〔軍神〕の異名を取る程の武人でした


しかし先日、魔犬の襲撃の際、部下たちをかばって……」

 

そこで言葉に詰まる王女、後ろの重鎮たちも思わず目頭を押さえていた。

 

おいおいまさか部下をかばって自分が犠牲になったのか⁉だとしたら正に英雄じゃないか


そんな男がいなくなったとしたら、そりゃあ不安にもなるよな……


「あの……それでラブニルド将軍は亡くなったのでしょうか?」


「いえ、将軍は亡くなってはいません。しかし心と体に回復しようのないダメージを……」


その時、兵が次々と大量の荷物を荷車で運び込んで来た、先ほど言っていた例の対魔犬用の物であろう


しかしその荷車の荷台に乗っている物を見て俺は思わず言葉を失ってしまう


見覚えのある黄色い物体、何度見直しても間違いない


そうそれはバナナであった、荷車一杯の大量のバナナが城に運び込まれて来たのだ。


「これは一体?」

 

俺にはこれから何が起こるのか皆目見当がつかなかず呆然としてしまうが


そんな俺の戸惑う態度を見て、王女が説明がてら声をかけてくれた


「我がルドラン王国は小国で、産業もあまり盛んではありません


ですからこの暖かい気候を利用して、観光と果物の輸出で利益をあげているのです


バナナとマンゴーが輸出品の主力商品なのです」

 

そう丁寧に説明してくれたのはいいが、俺が聞きたいのはそういう事ではなくて


何故この場に大量のバナナが運び込まれてきたか?という理由を知りたかったのだ


「あの王女様、このバナナは一体……」

 

俺が疑問を口にしようとしたその瞬間、王女を始め重鎮たちまでもが一心不乱にバナナを食べ始めたのだ


両手にバナナを握り黙々と食べ始める王女たち


頬をリスの様に膨らませ皆が無我夢中でバナナを平らげていく、その姿は鬼気迫るものがあった。

 

俺はその光景を呆然と見守っていたが、あまりに不可解な行動だったので思い切って聞いてみる


「王女、貴方達は一体何をしているのですか?」


「はい、これは魔犬対策なのです」


「魔犬対策ですか?魔犬はひょっとしてバナナが苦手なのですか?」


「いえ、そうではありません……外を見てください」

 

俺は言われるがまま窓から外に視線を移した。この国は周りを美しい湖に囲まれており


その湖を横断する大きな橋で隣国とつながっているのだ


他国からルドラン王国へ入る時はこの巨大な橋を渡るか、森を抜けてこなくてはいけないとの事だった


「魔犬は必ずあの橋から渡ってくるのです。森には他のモンスターが生息しているので避けているのでしょう


だから我々はこのバナナを使って侵攻を阻止するのです‼」


そう言って再びバナナを食べ続ける王女。これ程美しい王女が両手にバナナを握り


頬を膨らませながら懸命に食べ続ける姿はある意味シュールさを感じさせた。

 

その時俺の頭に電が走った、バナナの中身はどんどん胃袋へと収められていったが


その大量に残った皮は次々と荷台に戻されていったのだ


「まさか⁉︎」


そのまさかだった


「そうです、この大量のバナナの皮をあの橋に敷き詰めることによって


魔犬がバナナの皮に足を取られ転倒し自滅するのを狙った作戦〔走狗廃滅の計〕といいます」


何だそれは⁉︎名前だけはやたらカッコいいが……馬鹿なのか?


「この作戦はラブニルド将軍発案した奇策なのです」

 

いや、こんな作戦を考えた人間を〔軍神〕と呼ぶのはいささか大げさなのでは?


この世界にはジャロは存在しないのだろうか?


「何度も来襲する魔犬の群れをこの作戦で迎え撃ち、毎回半数の魔犬を撃滅しているのです」

 

半数も死ぬの?この作戦で⁉︎敵にも指揮官がいるはずだろ、もしかして馬鹿なのか魔犬使い?


その時、俺は先程の事を思い出し気になっていた事を聞いてみた


「そういえばラブニルド将軍はどうなったのでしょうか?」

 

すると王女は再び目を伏せ悲しそうに語り始めた


「ラブニルド将軍は前回の魔犬来襲の際にバナナの罠を突破してきた魔犬に部下達が襲われ


その者たちを逃がす為、将軍は一人で魔犬の群れに立ち塞がり将軍は……


自身のバナナを食いちぎられてしまったのです」


「おーーーい、貴方は〔自身のバナナ〕とか言っちゃダメ‼」

 

思わずツッコんでしまった俺、王女を始め後ろの重鎮達も悲しそうに目頭を押さえているが


シュールなコントにしか見えない、そんな時である


「あら~ん、何やら私の話をしていたのね~~」

 

背中から聞こえてきた声に振り向くと、そこには奇怪な男がこちらに近づいてきていた


180cmを超す長身に鍛え抜かれた筋肉質の肉体、しかしその体に黒いボンテージを着込み


ご丁寧に黒い網タイツまで履いている、厚化粧の匂いをプンプンとまき散らし


これ見よがしに唇に塗りたくった真っ赤な口紅が気持ち悪さをより一層引き立たせた


「こちらが先程来た勇者様なの?あら、私好みのいい男じゃない~」

 

気持ちの悪い筋肉オカマが腰をくねらせながらゆっくりと近づいてくる


こちらを舐め回すような視線に思わず背筋が寒くなる、何だこいつは⁉

「ラブニルド将軍、来ていたのですか……」

 

ボソリと呟くように王女が口走った。

 

えっ⁉ラブニルド将軍?これが〔軍神〕の成れの果て⁉


〔ルドラン王国の獅子〕も自身のバナナを食いちぎられるとこんな風になっちゃうの⁉


【軍神】の成れの果てとも言えるその姿に俺は言葉もないまま立ち尽くしてしまったのである。


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