俺は伝説の剣を求めた‼︎
俺の問いかけに対して王女は不思議そうな顔をして後ろの老人たちに目を向ける
するとそのうちの一人が口を開いた
「ヴォルケレスト山の事でしょうか?あそこは一年中炎が燃え盛る山ですが
しかしその様な伝説の武器があの山にあるなどと聞いたことはございませんが……」
王女と重鎮たちと思われる老人たちが顔を見合わせて首をかしげている
何だ、話と違うぞ?そうだバルドに直接聞けばいい、その為のスマホだしな。
これ見よがしにスマホを見せつけつつ使おうとすると周りから
〈おおーー‼〉っという声が上がる、悪くない反応だ。
さてこの無知な人々に文明の力であるスマホとは何かを説明してやるとするか
俺がそう思っていたその時、一人の老人が俺のスマホを指さして叫んだ
「勇者シンジ殿、その手に持っている物は⁉」
来た来た、いいぞいいぞ、それでこそ説明のし甲斐があるってものだ
「え~っと、これはですね、スマートフォンと言って……」
俺がドヤ顔で得意げに説明に入ったその時である
「それはドコUバンクの最新機種、XK―5SJではないですか⁉」
「へっ?」
すると他の老人が割って入る様に口をはさんだ
「何を言っておる、アレはソフトAコモのGX4ー510Sじゃ‼」
「そんな訳なかろう、勇者様があれ程のドヤ顔で出したのじゃ、そんな古い機種である訳なかろうが‼」
「お主らどこに目を付けておる、アレはアップウェイのDHー5GXじゃ‼」
「嘘を言うでないわ、わざわざ勇者様がドヤ顔で説明しようとしたのだぞ、そんな安物の訳あるか⁉」
何やらスマホの機種でモメ始めた重鎮たち
俺の先ほどまでの優越感はどこかに逃亡し、ここにいること自体がいたたまれなくなってきた。
〈正解はどれなんだ?〉
とばかりに俺に視線が集まる。ヒリつく視線をこの身に浴び、背中に冷たい汗が流れる
察するにこの連中はなぜかやたらとスマホに詳しそうだ、恐らく誤魔化すことは無理だろう
こうなったら本当のことを言うしかない
「こ、これはですね、神様からいただいた特別なスマホなのです
だから俺にも機種やメーカーまではわからないというのが本当のところでして……」
それを聞いて明らかにガッカリ感を出す重鎮の老人達、大きくため息をついて軽蔑の眼差しを向けるモノすらいた
何でだ、俺そんな悪いことした?自慢気に説明しようとしたら相手の方が全然詳しかったってだけじゃん
恥ずかしい思いをしたのは俺の方だよ⁉
もう安易に自慢するのは止めよう、俺はそう固く心に誓った。
そんな時、助け舟を出すかのように王女が口を開く
「で、勇者シンジ様。先程はそのスマホを使って何をしようとしていたのですか?」
「ああ、そうでしたね。実は神様より〈この世界には伝説の剣があり、それは炎の山の頂上にある〉
と聞かされていたのです。どうも皆さんは知らないご様子でしたので神様に直接聞こうとしたのですよ」
それを聞き、またどよめく重鎮達
「それは凄い、そのスマホは神様と直通で繋がるのですか?」
「凄い技術じゃ、LTEを使っておるのか?」
「いやいやさすがにWiFiじゃろう」
「そんな訳ないじゃろ、LTEに決まっている、まだAD―SLを使っているお主と一緒にするでないわ」
「何じゃと、もう一度言ってみろ‼」
また何やらモメ始めた老人達、世界が破滅の危機を迎えているというのに
この人たちの沸点はどこにあるのか?甚だ疑問だがとりあえず関わり合いになる事は避けよう、ちっとも話が進められない
「いい加減にしなさい貴方達、勇者シンジ様が困っているではありませんか‼」
見かねた王女が年甲斐もなくモメている重鎮達を一括した。
おお、正に救世主というか救いの女神である、俺は王女に対し目で感謝を告げる
するとそれに気づいた王女はニコリと微笑み軽く頷いた、心と心が繋がった瞬間である
「勇者シンジ様、部下の者たちが大変失礼をいたしました
どうか早急に神様と交信し、ちゃっちゃと話を進めてください」
どうやら心で繋がっていたと思っていた回線はブツリと切れていたようだ。
俺は気を取り直し神様であるバルドに連絡を取る事にした
このスマホの中の連絡先はバルドしか登録されていないので迷うことなくかけてみる
すると2,3回のコールの後、すぐに繋がった
「あっ、バルドさん?俺シンジだけど実は……」
しかし返ってきた声は別人の感情のない機械的な言葉であった
〈こちらは神様サポートサービスです、音声ガイダンスに従い入力してください
料金やサービス体制に対するご質問は①を。
仏教、もしくはイスラム教に改宗されたいという方は②を
神様と直接話したいという方は③を入力してください〉
何だこれは、あのジジイふざけているのか?そういえばあの神様、妙に庶民的だったし
こういうモノなのかもしれん。俺が想像していたのと違うというだけで勝手に幻滅するのは良くないな
俺は気を取り直し③を入力した、すると再び2,3回のコールの後、繋がった
だが俺は同じ過ちを繰り返さない、今度は向こうの声を聴いてから対応すると決めていた
〈は~い、こちら神様センターですけどぉ~ご用件はぁ~?〉
何故か電話口からはやる気のないおばさん声が聞こえてくる
一瞬パニックになるがそこは聡明な俺である、落ちついて対応する
「あの~バルドさんはいらっしゃいますでしょうか?私はシンジ、松岡真二という者なんですが……」
〈ああ~バルドさんね~ちょっと待ってて……おーいバルドさ~ん、電話ですよ~~
シンジっていう人間から……えっ、居ない?居ないって言えばいいんですか?
でも私、居るって言っちゃいましたけど……今、乃〇坂46のDVD見ているから手が離せない?
はぁ……じゃあしょうがないですね、後から掛けなおすって言えばいいんですねわかりました……
お待たせしました今いないそうです、後から掛けなおすとの事です〉
その言葉を聞いた時、俺の怒りは最高潮に達した
「バルドのジジイに早く出ろと伝えろ‼そうしないとお前の失態を上にチクるぞ、と言え‼︎」
〈わかりました少々お待ちを……〉
何だあのジジイ、世の中には幻滅してもいい神様がいるってことを俺は学んだ。
しばらくすると息を切らせて電話口に近づいてくる音が聞こえた
〈おうシンジ君か?今々偶然帰ってきたところなんじゃ
いや~グッドタイミング、神がかっておるのう。で要件は何じゃ?〉
何という白々しさ、これで乗り切れると思っているのだろうか?まあいい、俺は俺の道を行くだけだ
「乃〇坂46のDVD見ている最中に悪かったな、アンタに聞きたいことがあって電話したんだ
炎の山にある伝説の剣の話だ、ルドラン王国の人達は知らないといっているぞ」
〈乃〇坂46、何の話じゃ?何を言っているのかサッパリわからんが、間違いなくその国に伝説の剣はあるぞい〉
まだシラを切り通すつもりかこの被疑者は、盗っ人猛々しいとはこの事か?
いやしかし今はそこを追求しても仕方がない、俺は忸怩たる思いを飲み込み改めて質問する
「そんな伝説の剣があるならどうしてこの国の人が知らないんだ、おかしいじゃないか?」
〈まあルドラン王国は建国して三百年しか経っておらんからな
伝説の剣は五百年前に封印された物じゃからルドラン王国の人々が知らないのも仕方のない事なのかもしれん〉
五百年だの三百年だの気の遠くなるような話だが正直俺にとってはどうでもいい事だった
伝説の剣さえ手に入ればオールオッケーなのである
「じゃあ、あるんだな、そのヴォルケレスト山に伝説の剣が?」
〈間違い無くそこにある、ワシが言うのだから信じろ〉
アンタの話だから信用できないんじゃないか⁉とツッコミを入れたくなる気持ちをグッと抑え、今回は止めておくことにした。
「でも炎に包まれている山の頂上にあるのならどうやってそこに行けばいいんだ?
初期設定でそれなりの炎耐性を持ってはいるのだろうが
さすがに炎の真っただ中にずっと身をさらしていたら体がもたないだろ⁉」
その問いかけにはすぐに答えるバルド
〈大丈夫じゃ、ルドラン王国には確か炎の耐性を持つ飛竜がおるはず
のうシンジ君ルドラン王国の人間と直接話したいのだが?〉
「直接?電話を替わればいいのか?」
〈いや画面にあるスピーカーを押してくれればよい〉
俺は言われた通り、スマホの画面に表示されているスピーカーのボタンをクリックする
すると誰もいない空中からバルドの大きな声が聞こえてきた、それに驚きザワつく老人達
「聞こえる、ワシらにも聞こえるぞ‼」
「これが神の声か⁉何と有難い」
「凄いスマホじゃ、やはりドコUバンクのXK―5SJじゃ、この機能は最新の……」
驚きを隠せない一同を尻目にバルドは話始めた
〈王女に聞きたいのじゃが、ルドラン王国には炎に耐性を持っておる飛竜がおると聞いているが?〉
「あっ、はい、確かに我が国はバーニングワイバーンという飛竜を一頭所有しておりますが
それでもヴォルケレスト山に近づくのが精いっぱいで、山頂に降り立つまでは無理だと思われますが」
〈それで構わんよ、山頂ギリギリまで近づいてそこから飛び降りればよい
シンジ君の足には特殊なスキル〔ショックアブソーバー〕が付与してあるからの〉
何だそれは?初耳だぞ、俺はサイボーグにでも改造されたのか?
どうせなら可愛い幼馴染のオートメール技師にでも世話になりたかったが。
まあいいや、こんなスキルでも役に立つみたいだ
ヒモ無しバンジーでも大丈夫そうだしな、現実世界だったら絶対にやらんけど
「では早速向かってください、バーニングワイバーンは
町はずれの森に放し飼いにさせておりますので、家臣の者に道案内を……」
その時である、一人の兵士が血相を変えて入ってきたのだ
「王女様に申し上げます。今報告がありまた例の魔犬の群れが
こちらに向かってきているとの事です、いかがいたしましょうか⁉」
早速巻き起こる波乱の展開に俺の胸は高鳴った。
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