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俺はお兄ちゃん。

「シンジさん、ではアナタが勝ったら私にどのような要求をするつもりだったのですか?」

 

サーラがストレートに質問してきた。そんなまっすぐな目で見つめられて聞かれると


こちらが照れてしまうじゃないか。この子が魔性の女というのはあながち間違いじゃないのかもしれない


「いや、その……一度でいいから、俺の事を〈お兄ちゃん〉と呼んでくれないか?」

 

その瞬間、サーラの顔が嫌悪感で歪み思わず口にした。


「うわぁ……」

 

その一言に全てが集約されていた、やはり小さくても女である。


この一言の前に今まで何人の同胞たちが散っていった事か


「止めろ、その態度。いいじゃねーか一度ぐらい


〈お兄ちゃん〉の一言は、全ての男達の憧れなんだよ‼」


しかし俺が熱く語れば語る程、サーラが引いていくのがわかる


もはや呆れ顔を通り越して哀れみすら感じさせる目をしていた。


いやいや、君は俺を癒す為にゲームを提案したのだよね?


そんな君が俺を絶望のどん底に突き落とすのかい?


もはやツンデレとかいうレベルじゃないよ、死刑宣告だよそれ。


見事に一刀両断され、首と胴体が切り離させた俺に対し


サーラは再びため息をついた後、口を開いた。


「わかりました、そんな事でいいのなら別にかまいませんよ」


「おぉ~嘘じゃないよな、武士に二言はないな⁉」


俺は食い気味に念を押す、事はそれほどまでに重大なのである。


「私、武士じゃありませんけど。どうしてそんなことで喜ぶのか意味が分かりません


血の繋がっていない女性から〈お兄ちゃん〉と呼ばれて、何が嬉しいのですか?」


「何言っているんだ、血の繋がっていない妹から〈お兄ちゃん〉だぞ⁉


この世でこれ以上の至福は無いと断言してもいいだろ、な、わかるだろ⁉」


「いえ、何言っているのかサッパリわかりません。大体現実問題として


小さい頃ならともかく、ある程度の年齢を重ねた妹が兄の事を


〈お兄ちゃん〉と呼ぶ事なんてほとんどないと思いますが」

 

今、サーラが看過できない問題発言を口にした。


これは俺のアイデンティティーにかかわる非常に重大な問題である。


「馬鹿なこと言っているんじゃねーよ、世界中の妹は兄の事を〈お兄ちゃん〉と呼ぶんだよ‼


それが妹のいない俺の……俺達の最後の砦なんだ、だからそんな事を言うのは止めてくれ


そもそもサーラに妹の何がわかるっていうんだ‼」


「その無駄な熱はどうにかなりませんか?シンジさんがどう思っているのかは知りませんが


リアルな妹の立場から言わせてもらえば、年齢と共に人前で


〈お兄ちゃん〉と呼ぶ事が段々と恥ずかしくなってきます


男性でも年齢と共に、母親の事を〈お母さん〉や〈ママ〉と呼ぶ事が恥かしくなってきますでしょ?


それと同じですよ」


「リアルな妹って……サーラ、お前、お兄さんがいるのか?」


「ええ、まあ」


「へぇ~そうなんだ、それは知らなかったな、だからサーラは〈妹論〉に一家言あるのか


ならば納得だ、君には妹について語る資格がある。この俺が認めよう‼」


「〈妹論〉というのが何かわかりませんので、一家言とか資格とか全くの意味不明ですが」

 

冷淡な口調で淡々とそう語る美少女、そして俺は気が付いてしまったのだ。


サーラの俺を見る目が真冬の風の様に肌に突き刺さる程冷たい事に


昔散々クラスの女子から味わった洗礼、そしてつい最近では王女様から頂戴した冷ややかな視線


この俺に向けられた視線が、クズから虫、そしてゴミへと変わっていくのである


俺はこの現象を〈シンジ変格活用〉と名付けた


いや今はそんなこと言っている場合ではない。


ここでサーラにまで見捨てられたら俺はこの世界でも引き籠る事になるだろう


ワザワザ異世界まで来て引き籠る勇者とかマジで意味不明である


そこで俺は話題を変えることにした。


「なあ、サーラのお兄さんはどんな人なんだ?」

 

サーラは少し驚いた顔をして戸惑いながらも話始めた。


「えっ、私の兄ですか?私の兄はですね、一流大学を出て一流企業に就職


学生時代にはテニス部のキャプテンで、人望もあり、美人の恋人がいて……」


「うわ~~~止めろ~~~‼出来のいい兄貴なんて大嫌いだ‼」

 

俺は頭を抱えながら思わず叫んだ、強烈なトラウマが俺の心をかき乱す、優秀なお兄ちゃん何か大嫌いだーーー‼


するとサーラがクスリと笑った。


「冗談ですよ、先日聞いたシンジさんのお兄さんの事を真似して言っただけです


私の兄はシンジさんのお兄さん程、優秀ではありませんでした


どこにでもいる平凡な……でも私にはいつも優しくて、いつも私を子ども扱いして……」

 

サーラは話ながら唇を震わせ、必死で感情を抑えている様であった


俺はそこで初めて気が付いたのだ、サーラのお兄さんはもうこの世にはいないのだという事を……


俺はまたとんでもない地雷を踏んでしまったようだ、しかもとびきりの

 

サーラの目から涙がボロボロとこぼれ落ちる、俺は反射程にサーラを抱きしめた。


「ごめんサーラ、俺が悪かった。無神経な事を聞いてしまって……」

 

俺の言葉で余計に感情が爆発したのか、ダムが決壊したかのように泣き崩れるサーラ


「兄は……魔王軍に殺されました……弱いくせに、私と母を守るんだって……


私、最後まで兄には憎まれ口ばかり言って……最後も……あああぁぁぁ~~~‼」

 

嗚咽交じりに泣き崩れるサーラ、俺を抱きしめる細い手が妙に痛々しく感じた


こんな年端もいかない少女が俺には想像もつかないような地獄を見てきたのであろう


それに比べて俺は……俺はこの時初めて〈俺が守ってやらないと〉という純粋な気持ちになる事ができた


お兄さんが命がけで守ったサーラの命を俺が……

 

しばらく泣いていたサーラは小一時間もすると落ち着きを取り戻す。


「すみませんでした、お見苦しいところをお見せしまして」


「いや、俺の方こそごめん、無神経な事を聞いてしまって」


「いえ、シンジさんに責任はありませんよ、知らなかったのですから……本当にすみません」

 

丁寧に頭を下げるサーラ、この年でこれだけしっかりしているのである


普通の生活では無かった事ぐらい察してやるべきだった。

 

そんなサーラに、ようやく自分の出番だとばかりに声を掛けるスパイシードッグ。


「お嬢ちゃん、俺で良かったらいつでも話聞くぜ、何かあったら力になるからよ


何ならストレス発散に俺の尻をぶってもいいぜ、思い切りな」

 

まだ諦めきれないようですねスパイシードッグさん


その尻尾の動きが気持ちを代弁していますよ、今回はまた随分と欲しがっていますね。


「有難うございますスパイシードッグさん、私あまり優しくされるのに慣れていないので


また泣いてしまいますから……気持ちだけいただきます」


再び丁寧に頭を下げるサーラ。そんな彼女の姿を見て


益々愛おしく感じている様子のスパイシードッグさん


しかしご褒美はいただけないジレンマに複雑な表情を浮かべていた。


「有難うサーラ、お前のおかげで俺も元気が出たよ、そうだよな、落ち込んでいる場合じゃないな


これからだ、これから俺達の伝説が始まるのだから‼」

 

そんな俺の言葉に嬉しそうに微笑むサーラ、その何とも言えない眩しい笑顔がこんな俺の勇気を奮い立たせる


これで立ち上がらない男はいないだろう


そういう意味でもこの美少女は将来とんでもないスーパーレディになるだろう


あの王女様と肩を並べるほどの、いやもしかしたらそれ以上の


そんな健気で賢い美少女が俺のパートナーなのだ


そう言う意味では俺は最高の幸せ者なのである。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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