俺は史上最低の勇者になった。
異世界で不当な洗礼に打ちのめされ、心身ともにボロボロの状態となっていた俺を
暖かく迎えてくれたのはサーラだけであった。
この世界で俺の味方となってくれるのは目の前にいる幼気な美少女だけだと思うと
俺の目から自然と涙がこぼれ落ち感激が胸に込み上げてくる。
「サーラ。俺、俺はさ……」
そんな俺を見てサーラは駆け寄ってきてくれた。
いいよね、今なら君に思いっきり抱き着いても、合法だよね?
両手を広げて待つ俺の頭に、なぜか慌てて大きめのフードをかぶせるサーラ。
そして自分も大きめのフードを深く被り辺りをキョロキョロと見回す。何だ、何が起こった?
困惑する俺を見て周りを警戒しながら俺の耳元に小声でささやいた
「いいですかシンジさん、そのフードを深く被ってなるべく顔を上げないでください
声もダメです、喋る時は私の耳元に小声でお願いします、さあここから早く立ち去りますよ」
何が何だか訳がわからない。俺がブタ箱に放り込まれている間、何があった⁉俺は命でも狙われているのか⁉
戸惑う俺の手をぐいぐいと引っ張りながら住宅街の裏路地へと連れていくサーラ
こんな小柄な少女のどこにこんな力が秘められているのか?と思えるほどその手は力強かった。
薄暗く細い道を早足で進み、ある家にたどり着くと周りをキョロキョロと確認した後
俺たちは素早くその家の中に入りそこでようやく安堵したのか
サーラは自分の被っていたフードを脱ぎ大きく息を吐いた。
「ふう、もういいですよ、シンジさん」
俺は素早くフードを脱ぎ去り思わずサーラに問いかけた。
「どういう事なんだサーラ、説明してくれ。俺がいない間に何があった?」
「う~ん、どこから説明したほうがいいやら……」
その時、入り口の扉が開いて誰か入ってきた
よく見るとそれは魔犬の司令官で元魔王軍幹部スパイシードッグだった。向こうも俺に気が付くとニヤリと笑った。
「おっ、ようやく出所できたのか?アンタも散々だったな、まあ同情の余地はあまりないが
ただアンタがブタ箱に放り込まれていた間、このお嬢ちゃんは本当に苦労していたんだぜ」
やはり何かあったという訳か、一体何が?
戸惑う俺にサーラは一枚の紙を渡してくれた。
それはどうやら町で配られるような号外の様だ
俺はそれに目を通すとそこにはとんでもない事が書かれていたのである。
【勇者のセクハラここに極まる、明日にでもギロチンか⁉】
我々取材班は今回大変な情報を耳にした。
それは何と魔王を倒すはずの勇者が魔王軍と戦う事もせず悪逆の限りを尽くしているというのだ。
さすがに信じがたい情報なので調査を進めると、どうやら事実という事が判明したのである。
この勇者S・M(仮)は飛びぬけた性欲の持ち主であり、何と王女様に対しても
セクハラの限りを尽くしているという驚愕の情報を得たのだ。
勇者という立場を利用し我等が王女様にセクハラの限りを尽くしたこの勇者S・M(仮)は
そのあまりに酷い行いによりとうとうブタ箱に投獄される事になったのである
関係者の証言によると急遽開かれた元老院での会合の結果、この勇者に対して
【もう勇者をギロチンにかけちゃえ】決議案が提出され、近々本会議で可決される見通しとの事である。
我々取材班は今後もこの勇者の悪逆非道なおこないを徹底的に追求し糾弾していくつもりである。
そもそも勇者とは何なのかを彼に問いたい。
S・Mというイニシャルも本人と同じく卑猥なのは果たして偶然なのだろうか?
「何じゃこりゃ⁉」
俺はわが目を疑った。何だこの記事は⁉︎芸能ゴシップ記事並みの偏向報道じゃねーか⁉
東○ポでもここまでひどくないぞ‼︎
その号外に書いてあるあまりの内容に完全に固まってしまう俺
するとスパイシードッグが俺にもう一枚、紙を手渡してきた。
「ちなみにこんなのもあるぜ」
俺はスパイシードッグからひったくる様にその紙を奪い急いで目を通すと
そこには更にひどい記事が書かれていたのだ。
【遂に暴かれた勇者の実態 驚愕の事実とは⁉】
我々は遂に決定的な証拠をつかむことに成功した
我等の懸命の取材の結果、たどり着いた驚愕の事実、それを皆様に伝えよう。
我々は取材を進めていくうちにある人物へとたどり着く
勇者の事をよく知っているという人物の証言を得ることに成功したのだ。
その人物とはカリーノ村のメンディ弥左衛門村長である
彼は数日間勇者と共に行動し、彼の人となりを見て愕然としたという。
そのメンディ村長は我々の取材に快く応じてくれ単独インタビューを受けてくれた
その衝撃的な内容を包み隠さずここに載せることにしたのである。
【村長】奴は人間のクズじゃ。
【記者】と、おっしゃいますと?
【村長】奴は我らの村にやって来ていきなり「女を差し出せ」と言ってきたのじゃ。
【記者】到着早々に、ですか⁉
【村長】ああ、ワシは当然拒絶した。大切な村人を守る、それがワシの使命だからじゃ。
【記者】ご立派ですね、勇者に対してそこまで堂々と、村長さんは怖くなかったのですか?
【村長】もちろん怖かった、しかしワシの正義感が許さなかったのじゃ
村人の為ならばこの命など惜しくはない、決して来月に村長選挙があるからではないぞ。
【記者】それで勇者はどのような人物だったのでしょうか?
【村長】奴はモンスターを倒す為に王女様から頼まれてきたと言っていた
しかし一切何もしなかったのじゃ、何もじゃ‼
【記者】じゃあ何しに来たのでしょうか?
【村長】そんな事は勇者に聞いてくれ、何もしない癖に態度だけは横柄で
いつもニヤニヤと笑いながらこう言っていた「いずれ王女は俺の物、俺の物ったら俺の物」と
【記者】それはひどいですね
【村長】それと奴は奴隷少女を連れておった、その少女はどれほどの虐待を受けてきたのか
体はアザだらけでいつも怯えた目をしておった
【記者】それは、まさか勇者が奴隷少女に対して酷い虐待をおこなっていたという事でしょうか?
【村長】それはわからん、ワシの口からは何とも……その少女の名誉にも関わるからな
だが、あの奴隷少女があの卑劣で極悪な勇者に
〔*ここからは不適切な表現が使われていますので当社の判断で割愛させていただきましたご了承ください〕
という様な卑猥で淫乱な虐待を受けていても何の不思議もないという事じゃ。
【記者】ですが奴隷の扱いと待遇については憲法第十七条で保障されています
本当にその様な事がおこなわれているのであれば、彼は村を守るどころか
法律すら守る意思がないという事ですか⁉
【村長】それはわからん。しかし奴は言っておった
「俺、異世界から来た勇者。法律、守る必要ない。女好き」と
まあ奴は歩く無法地帯とでもいった方がいいかもな。
【記者】上手いこと言いますね村長。では最後に彼にかける言葉があるとすればどんな言葉をかけますでしょうか?
【村長】これからは、まっとうな生き方をして真面目に生きることをお勧めする
嘘偽りなくまっすぐに生きる、それが人の思いやりというモノじゃ
ワシはこの信念をもって村長をやっておる。新しい村長候補の若いのが言う改革など嘘偽りよ
信念と思いやり、これが人間というモノじゃ。
メンディ弥左衛門村長は最後にこう締めくくった。
この記事が勇者に届くことを切に願う。そしてわが社の独占インタビューを受けてくれたメンディ村長に感謝と清き一票を。
「何じゃこりゃあ‼あの糞ジジイ何てこと言ってやがる‼」
俺は怒りのあまり、その記事が書いてあった紙をビリビリに引き裂いた。
「その記事を見てわかりましたか?今やシンジさんの評判は地の底まで落ちています」
「とんでもない風評記事じゃねーか‼︎トバしにも程があるぞ‼」
そしてサーラが大きくため息をついた。
「私なんか、まだ男の人と手も繋いだことがないのに、この記事のせいで【性奴隷少女】とか
【魔性のビッチドール】とか【チン略イカ臭い娘】とか呼ばれているんです。迷惑千万ですよ、全く」
「しばらくは外に出ずにじっとしていた方がいいかもな。
困ったことがあったら俺が協力してやるからよ、なんでも言いな」
スパイシードッグは自分の胸を叩いて〈ドンとこい〉という態度である
コイツ元魔王軍の癖に妙に優しいな、俺にというよりサーラにだろうけどな。
こうして俺はこの世界に来てほとんど何もしていないまま
最低のクズ野郎というレッテルを貼られてしまったのである。
頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。




