俺は彼らのソウルを受け取った。
「残念ながら、庇っている訳でも嘘をついている訳でもないのです、証拠もありますよ」
俺の淡々とした口調に固唾を飲んで見守る王女達、だがバローだけが断固としてそれを認めない。
「証拠ですと、そんなモノある訳ないでしょうが⁉
犯人はこの少女、それ以外は認めない絶対に認めないぞ‼」
もはや言動が支離滅裂である、お前は一体何と戦っているんだ?
「俺の特殊能力に【アイキャッチ】というモノがあります、これは俺が過去見たもので心に深く残っているモノ
つまり印象深かったモノを画像化できるといった能力です
つまりそれを見れば俺が真犯人であることはわかりますでしょう、百聞は一見に如かずという訳ですよ」
俺は早速スマホを取り出し、バルドに電話をし皆にも聞こえるようにスピーカーにすると
いつも中々電話に出ないバルドが今回はコール2回で出た
〈よう、どうしたブラザー、何かあったのかい?〉
天から妙に明るい調子のバルドの声が聞こえてきた
それにしても何という変わり身の早さだろうか?
この爺さんも中々の食わせ者である、一周回って一角の人物と言っていいだろう
俺はバルドに事の成り行きを説明し【アイキャッチ】能力で例の置物を壊した画像を送ってくれと頼んだ。
〈わかったぜブラザー、仲間の少女の冤罪を晴らすために自分の罪をさらす、GJだ‼
お安い御用だ任せとけ~♫ お安くないぜ噛ませとけとけ~♫
お前の母ちゃんで~べ~そ~♫ ちぇきら‼〉
何でラップ調で韻を踏んでいるんだ?脈絡も雰囲気もまるで無視したこのブッコミ
最後は全く意味不明だし。できないなら最初から無理にやるなという典型例だな。
するとそれを聞いていたバローが対抗意識を燃やしてきたのか
突然体をゆすりながらリズムを刻みだした、まさか⁉︎
「犯人少女で間違いな~い♫ 証拠なんてある訳な~い♫ 勇者の未来に希望はな~い♫
そもそも勇者に興味はな~い♫ お前の母ちゃんで~べ~そ~ ちぇきら‼」
何だこの糞ラップの応酬は⁉︎下手糞だわ意味不明だわで呆れて言葉を失う一同
そもそも何の為にラップをやったのか意味不明にも程がある
単にラップバトルの様な真似がしてみたかっただけなのか?
昼休みの教室レベルの芸を見せられて呆然とする一同だったが
そんな俺たちに向かってなぜか満足げなドヤ顔を見せるバロー
もうコイツも魔王討伐に向かわせてはいかがでしょうか?
そんな空気を読まない謎のクソラップのせいで誰もが言葉を失っていると天から声が聞こえてくる
〈やるのうお主……〉
どうやらバルドさんの感性には触れたようです、良かったですね
そうだ、今度お二人で公開ラップバトルとか開催してみたらどうでしょうか?
まあ無観客試合にはなるでしょうけど
「シンジさん……本当にシンジさんが?」
サーラは驚きを隠せないといった表情を浮かべながら
どう対応していいのかわからない様子で戸惑っている。
「いいんだサーラ、お前の命が奪われるくらいなら俺は喜んで犠牲になるさ
君は大事な仲間だしな、勇者として当然の事をしたまで、感謝されるような事じゃないよ」
俺はさりげなくそう言った。決まったな、もう俺に惚れちゃった?
「いえ、私が壊したと思って狼狽えていた時
なんで本当のことを言ってくれなかったのか?と呆れていたのですが……」
そうですよね~全くおっしゃる通りです、弁明の余地はありません、こんなふつつか者でスイマセン。
これで俺達の関係も壊れてしまったのかもしれないな
今後両者の関係修復には私、誠心誠意、全力をもって望む所存にて何卒……
ん、修復?もしかしてバルドの爺さんならあの壊れた置物を修復できるんじゃないのか?
あんなでも一応神様だし。
「なあバルドさんよ、壊れた置物ってアンタの力で直せないのか?」
〈そうじゃな……〉
俺の問いかけに対しバルドの爺さんは重苦しい口調でそう答えると少し沈黙した。
何か思う所があって考え込んでいる様である
それはそうだ、いくら神様でもできる事とできないことがあるのは当然だし
それをすることによって何かの規約に引っかかるのかもしれない
神様の世界って意外と規約とか制限とか厳しいとかよく聞くし
まあバルドがそれを守るかはまた別の話だが。
その沈黙が重苦しさをより一層加速させ、時間がやたら長く感じる
できるのかできないのかハッキリ言ってくれ、何かに引っかかるならどんな規約や制限で悩んでいるんだ?
俺は我慢しきれなくなって思わず問いかけた
「なあバルドさん、やっぱ厳しいのか?置物を直すことで何かの規約に引っかかるのか?」
〈いや別に規約に引っかかるから悩んでいる訳ではないぞ⁉〉
「じゃあ何で悩んでいるんだよ?」
〈修復できるからやってあげるぞ という気持ちをどうリズムに乗せて韻を踏むか考えていたところじゃ
あれ程のラップを見せられたらワシも負けていられんからな〉
「どうでもいいわ、そんな事‼︎だったらさっさと直せやジジイ‼」
〈どうでもよくはないぞ、ラップで重要な点は配置と歯切れ、そして発音
それが一体となって繰り出される、いわば総合芸術とでもいうべきモノなのじゃ〉
「やかましいわ、あんな糞ラップを聞かせたアンタが偉そうにラップを語るな‼世界中のラッパーに謝れ‼︎」
そこにバローがすかさず口を挟んできた。
「アンタのソウルは確かに受け取った、間違いなく本物だったぜ⁉」
バルドのラップを称賛し、右手の親指を立てながらキメ顔でウインクするバロー。
あのラップから何を受け取った?
アレが人々に与えたモノといえば〔不快感〕という名の悪感情だけだと思うのは俺だけではないはずだ
そんな糞ラップを臆面もなく本物と鑑定したバロー
なぜだかはわからないがバロー的には本物に見えたのであろう。死ぬ程どうでもいいが。
何はともあれ紆余曲折ありながらも事件は解決し大事な置物は元通りになる事となった。
「良かった、本当に良かった」
一気に力が抜けたのか、その場にしゃがみ込み口を手で押さえながら涙を流すサーラ
普段気が強くしっかり者の彼女もさすがに堪えたのだろう、そんな彼女に俺はそっと優しく声を掛ける。
「良かったなサーラ」
すると先程までの表情が一変し、俺をジト目で見つめてきた。
「どの口が言っているのですか?そもそもシンジさんが自分の罪を隠して
私に押し付けようとしたからじゃないですか⁉」
「それは誤解だ、俺は隠していた訳じゃない。何となく言い出し辛くなって言わなかっただけだ」
「それを隠していたというのですが……まあいいでしょう
私に罪を擦り付けようとしたのも同じ了見ですか?」
「だから擦り付けようとしていた訳じゃない、俺が言いそびれていたら
サーラが自分で罪を背負って受け止めていたから、バレないなら何となくそれでいいかな……って」
「最低ですね。私はそれでギロチンにかけられるところだったのですよ、私を殺す気だったんですか?」
「だから誤解だと言っているだろ、殺意を持った殺人未遂罪ではなく
俺のは業務上過失致死罪にあたるはずだ、そこを十分に考慮して情状酌量の余地を何卒‼」
俺はその場で謝罪し大袈裟に頭を下げた。そんな俺の姿を見て呆れ顔で大きくため息をつくサーラ。
「もういいですよ、結果的にシンジさんの機転で助かったのですから今回は不問とします」
「有難う、心より感謝するよ、さすがはサーラ‼」
俺は再び頭を下げた、心よりの謝罪をし首を垂れる事に何の抵抗もない
いざとなれば土下座する事すら厭わない、まるで息をする様に自然にできるだろう、そう俺はやる時はやる男なのだ。
「王女様、今回は色々な勘違いと認識違いからこの様な騒動にまで発展してしまいました
この勇者シンジ、心よりお詫び申し上げます。ですが何とか無事に一件落着となったようですし
これでお咎めなしという事でよろしかったでしょうか?」
そんな俺の問いかけに優しく微笑む王女様。
「ええ、もちろんよろしいですわ。私とて無暗に誰かを傷つけることは本意ではありません
今後勇者様とサーラさんには〔魔王討伐〕というお二人にしかできない大仕事が待っているのですから
もし私にできる事でしたら、どのようなサポートもいたします」
どのようなサポートも⁉つまり心理的サポートである癒しを与えて欲しいと言えば
それ相応の対応をしてくれると約束してくれたと取っていいのですね⁉
俺は大いなる希望と明るい未来に心を弾ませた。
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