俺は迷探偵と対峙した。
宝物庫で何やらヘンテコな置物を壊してしまい泣き崩れるサーラ
俺たちはこっそりとあてがわれた部屋に戻った。泣いている彼女をなんとかなだめ
一時間ほどしてサーラもようやく落ち着きを取り戻してきたところである。
もう今更〈本当は俺が壊した〉とは言えず良心の呵責に押し潰されそうになっていた時
慌てた様子の一人の兵士が俺たちのいる部屋に入ってきた。
「ああ、ここに居ましたか勇者様⁉すぐに来てください、大変な事が起きたのです‼」
何だ?また敵襲か⁉いいぜ、少し心がモヤモヤしていたところだ、暴れたい気分だぜ
俺達は息つく暇もなく、兵士に案内され再び王宮の謁見の間へと足を運んだ
そこには王女様を始めとして重鎮達が皆集まっていた
しかも先程までのお祭り気分はどこへやらといった感じの深刻な表情を浮かべ何やら重い空気が漂っていた。
「一体どうしたのですか?何があったというのです、また魔王軍が攻めてきたのですか⁉」
すると王女が悲しそうにゆっくりと首を振った。
「いえ、魔王軍ではありません、ある意味それより深刻な事態かもしれないのです」
魔王軍が攻めて来た事より深刻な問題?そんなことあるのか⁉
俺が首をかしげて不可解な表情を浮かべると、王女は再び口を開いた。
「これをご覧ください、勇者様……」
王女は布にくるまれたある物を俺達に見せてくれた。
「こ、これは⁉」
王女が深刻な表情で見せてくれた物、そう例の置物である。
不気味な顔をしている首とこけしの様な胴体が不慮の事故により破損し
完全に分離してしまった地下宝物庫にあったアレである。
もう見つかったの、いくらなんでも早くね?いやそんな事より
こんな出来損ないのこけしもどきが壊れたくらいでそんな重大な問題?
「勇者様はご存じないかもしれませんが、この置物は隣国のゲセラ共和国との
国交正常化と友好の証として向こうから贈呈された貴重な品なのです
いうなればこれが壊れるという事はゲセラ共和国との仲が壊れる事に等しく
もし破損させたなんてことが露呈すれば、再び戦争となる可能性が高いのです」
そんな大事な物だったの、こんな出来損ないが⁉
すると周りの重鎮達が騒ぎ出した。
「もしかすると、隣国との国交正常化を良く思わない者達が
テロ攻撃の的としてこれを狙ったのかもしれませんな」
「馬鹿な、我々が隣国との戦争を止める為にどれほどの外交努力をしたと思っているのだ‼︎」
「魔王軍との戦いもあるのに、再び戦争なんてことになったらこの国は破滅しますぞ‼」
「くそっ、卑劣なテロリスト共め、何という事をしてくれたのだ‼」
戦争になっちゃうの?そんな出来損ないのこけしもどきで?
俺はハッと我に返り横を見ると、サーラが顔面蒼白でガタガタと震えていた。
「どうしましたサーラさん、気分でも悪いのですか?」
サーラの異変に気が付いた王女が声を掛けてくれる
しかし当のサーラは王女の呼びかけも全く耳に入っておらず、答える余裕もなかった。
無理もない、王宮の宝物庫に侵入し貴重なお宝を破損させたというだけでも重罪なのに
国際問題を引き起こしたテロリスト扱いだからな……
俺はそんなサーラを見ていられなくなり、堪らず割り込むように話を切り出した。
「ちょっといいですか?この置物が大変重要なものだという事はわかりました
しかし言い方は悪いですが、隣国にバレなければいいのですよね?
いくら貴重な物とはいえ貰った物なのですから、ワザワザ見せなくてもいいと思うのですが?」
俺の提案に皆渋い顔を見せる、アレ?俺、今そんな変なこと言ったかな?
いくら仲良くなったとはいえ国家間というのはお互い隠し事があっても普通だと思うのだが……
「実はこの置物に関してはそうもいかないのですよ」
王女が悲しそうに話し始めた、なぜだろうか?何か複雑な事情がある様だな
「実はこの置物は隣国ゲセラ共和国の王、キムキム書記長の秘蔵の品
いわいる宝物だったのです。両国の和平条約締結の話し合いの際に我が国の交渉担当タメリオの提案で
〈お互いに大切な物を送り合うからこそ強固な同盟が成り立つ〉という理由で
嫌がるキムキム書記長から半ば無理やりいただいたのですよ……」
な~にやってんだよ~タ~メ~‼
「その際、キムキム書記長は
〈この品は私が本当に肌身離さず大切にしている物だから月に一回必ず見に行く〉
という条約を交わし、断腸の思いで泣く泣く手放したという経緯があるのです」
こんなガラクタが⁉どんな趣味しているんだキムキム、でも名前からして怒らせたらかなり怖そうだ
マズいぞ、どんどん言いづらくなって来ている、どうする?
重苦しい空気の中、一人の人物が俺たちと王女の前に出てきた
見覚えのある人物だけれど……
そう新しく宮廷占術師となったバローだった
「王女様、今回の難事件の解決は宮廷占術師であるこのバローにお任せください‼」
何だかまたややこしいのが出てきたぞ⁉どうするつもりなんだ、この爺さんは?
「王女様、今回のテロ事件の犯人を見つけ出し公開処刑のギロチンにかけるのです
そしてその首をキムキム殿にお渡しして怒りを治めてもらうのです」
何言っているんだこのジジイ?そもそもお前の教え方が悪いから今、こうなっているのじゃねーか
冗談じゃねーぞ⁉勇者として異世界に来て、いきなりギロチンにかけられる主人公って……
深刻な事態に王女も判断を決めかねている様子だ
「バロー。ギロチンにかけるかどうかは別として、犯人を探し出し犯行動機を聞き出すというのは賛成です
まずはそれから始めましょう。しかし犯人が判るのですか?」
王女も緊急事態の為、とりあえずバローの犯人探しの提案に乗るようである
それにしても犯行動機って……〈笛を借りたいだけでした〉と言ったら信じてくれますか?
「お任せください王女、何せこのバローは宮廷占術師ですからな、たちどころに解決してみせます‼」
バローは自信満々に言い放った。どこから取り出したのかパイプをくわえ探偵帽子をかぶりながら不敵な笑みを浮かべる
何だ、この自信は?だがこんなお調子者に捕まる俺ではない、まずはお手並み拝見といこうか。
「まず宝物庫の鍵ですが、アレは特注製の物でそんじょそこらのコソ泥に開錠できる様な代物ではありません
プロの犯行です。具体的に言いますと、アレはサムターン回しでしか開錠不可能なのです」
何だこのジジイ、少し鋭いぞ⁉でもサムターン回しなら開錠できるとわかっていたならさっさと対策しておけよ。
「聞いたところによるとサムターン回しの使い手はそうはいないそうです
何年も厳しい修行の末に、ようやく習得できる技術と聞いています
その厳しい修行過程で命を落とすこともあるそうですから、一説には一子相伝の秘技だそうです」
それどこの北斗○拳?何年も厳しい修行って……何をどう修行するの?
サムターン回しの修行って何するの?そもそも修行過程で命を落とすって何?
窃盗犯が使うピッキングみたいなものだよね、確か?
「今の事実から犯人像をプロファイリングしてみます」
プロフィリングするの?異世界の爺さんが⁉
こんな的外れな事ばかり言っているジジイの戯言なんか誰が信じるかよ。
「今あるデータから割り出される人物は……
犯人は非常に知能が低く私生活もだらしのない人物です
しかし悪知恵だけは働く姑息で卑劣な人間。具体的に言えば美少女フィギュアやギャルゲーが好きな男性で
美少女を引き連れて旅をするのが男のロマンとか思っている痛い人間
例えば引き籠りニートの様な人物ですな」
ほぼ俺じゃねーか。何だコイツ、わかっていて言っているのじゃないだろうな?
するとバローはニヤリと不敵な笑みを浮かべ右手の人差し指で自分の頭をトントンと叩き
王女に向かって得意気に言い放ったのだ、イチイチ仕草が癇に障る奴だ。
「この私の山吹色の脳細胞からは逃れられませんよ」
お前はベルギーの名探偵なのかジョースター家の人間なのかどっちだ?
しばらく周りの人達の顔色を伺うように無言でジッと観察しているバロー
そして大きく目を見開いて叫んだ。
「犯人が判りましたぞ、王女‼︎」
おいおい今の推理でどうやって?でもこのジジイ、変に鋭いところがあるし、まさか⁉
「ズバリ犯人は……」
俺は思わず息を飲む。ヤバい、この流れはどう見ても〈俺が犯人だ〉という流れだ
言うならサッサと言えよ、何でためるんだよ、このジジイ妙にノリノリじゃねーか⁉
そしてバローは自信満々に言い放ったのである
「犯人はズバリ、ロネオラ殿です‼」
え~~⁉着地点そこ?回り回ってとんでもない所にたどり着きました
「まず犯行動機ですが、宮廷占術師の座を私に奪われたことへの恨みですな」
それアンタへの犯行動機じゃねーか⁉国家間の問題どうした?
「元々ロネオラ殿は口うるさかったし、嫌味っぽかったし、足臭かったし……まあ、そんな感じです」
もはや犯行動機でも何でもない、ただの悪口じゃねーか⁉
ロネオラさんはただでさえ酷い濡れ衣着せられて
とんでもない目に合っているというのに、もう勘弁してやれよ
王女達に向かって得意げに推理を展開していたバロー。そこに一人の若い兵士が口を挟んだ。
「あの~言いにくいのですがロネオラ様は昨日の朝、魔王討伐に出発しております
その後、その置物の無事は確認されておりますので
ロネオラ様が犯人だという説には、いささか無理があるかと……」
貴方の無罪は証明されましたよ、よかったですねロネオラさん
でももう魔王討伐の旅に出発しちゃったんだ……ご冥福をお祈りいたします。
「そうであったか⁉︎惜しい推理だったが、僅かに外れていたか⁉」
こらジジイ、犯人探しに僅かに外れるとかあるのか?
そもそもボールとバットが天と地ほど離れていたわ‼
この世界にはロクでもないジジイしかいないのか?
「そうですか、では犯人はわからず終いですね」
物憂げな表情でうつむく王女、う~んやっぱりどんな表情していても、美人は絵になる。
「面目ない、この宮廷占術師バロー・ジョースターの渾身の占術をもってしても
犯人を特定することができませんでした」
おいジジイ、お前いつ占術していた?単にロネオラさんの悪口言っていただけだろ
それとアンタ、本当にジョースター家の人間だったんだな
単なる偶然だとは思うけれど、あなたスタンドとか使わないよね?
こうして俺は何とか犯人として特定されることを免れたのである。
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