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俺に保護観察がついた

部下たちに抱えられるように連れ去られて行ったロネオラ老人。


そんなドタバタ劇を見て王女はため息混じりにつぶやいた


「全くロネオラにも困ったモノです……」

 

何がおきているのか理解できないまま、目の前で起こる光景を呆然と眺めていると


サーラがまた小声で語り掛けてきた。


「シンジさんのせいで何の罪もない老人が死地へと送り込まれることになってしまいました


罪悪感は無いのですか?」

 

えっ⁉︎これって俺が悪いの?この状況で一体、俺にどうしろと……


この国の重鎮中の重鎮であるロネオラが魔王討伐の為に駆り出されるという緊急事態に対し


誰もが言葉を失い重苦しい空気と沈黙が漂い始めた、そんな静寂の部屋に再びオーム君の声が響き渡る。


「シンジ イヤラシイーー シンジ イヤラシイーーー‼」

 

俺はその時の王女の顔を生涯忘れないだろう。


「早く連れて行きなさい、早く‼」


「はい‼」

 

王女の命令で動物たちを急いで引き上げさせる兵達


俺はもう考えることを止め全てを受け止めることにしたのだ。


「全く困った爺さんなのだな、あのロネオラとかいうジジイは」


「いや、シンジさん、オーム君は〈シンジ イヤラシイーー〉って叫んでいましたけど」


「そんな訳ないじゃん…だって……王女様がそう言ったのだから……」


「まあシンジさんがそれでいいというのであれば私はかまいませんが……」

 

半ば呆れた様な口調のままジト目で俺を見つめるサーラ。


止めてくれ、せめてお前だけは俺に優しくしてくれ

 

そして王女が精いっぱいの作り笑顔で俺に話しかけてきた。


「私はこれから明日の祭りの準備で忙しくなりますから、これで失礼しますね」

 

まるで逃げる様な早足で、そそくさとその場を立ち去る王女様、俺はその後姿を呆然と見送った。


「シンジさん、カリーノ村の村長さんに頼まれていた笛の件は?」


「今の俺にそんな事を考える余裕なんて無いよ……そもそも今更、どんな顔して王女に聞くのだよ」


「まあ気持ちはわかりますが、今までご自分のやった事を冷静になって考えてみてください


魔犬の時には相手司令官が勝手に捕まってくれただけですし


ゴブリンジャイアントの時などは全く何もしていません


このままですと勇者として無能というレッテルを張られてしまうかもしれないのですよ⁉︎」


「何もしていないは言い過ぎだろう。魔犬の時はそれなりに戦ったし


ゴブリンジャイアントの時もアドバイスをしたり現場に駆け付けたりもしたし……」


「でも、それをあの村の人たちがどう判断したのか?を考えてみてください


特にあの村長さんがシンジさんを高く評価してくれていると思いますか?」

 

言われてみればサーラの言うとおりである。あの食わせ者のメンディジジイは確実に俺を無能扱いするだろう


下手すればもう既にそんな悪評を流している可能性もあるぐらいだ。


「確かにその通りかもしれないな。でも今更どの面下げて王女に会いに行けばいいのだ?

 

向こうだってしばらく俺とは顔を合わせ辛いだろうし」


「それはそうですが何もしない訳には……そうだシンジさん


村の為に笛を借りるだけなのですから、別に頼む相手は王女様じゃなくともよくないですか?」


確かにその通りだ。笛を借りるだけなのだからこの際誰でも構わない


例え王女様には事後報告になったとしても笛を借りるだけで目くじら立てられることもあるまい。


本当ならば王女様が使った笛があればベストであったがこの際それは二の次とした


そうと決まれば即行動なのだが俺達は誰に聞こうか迷っていた


周りを見渡しても明日の祭りの準備で皆忙しそうなのである


誰にも声を掛け辛く途方に暮れていると、後ろから俺の肩を叩く者がいた


振り向くと、さっきいた重鎮の一人が声を掛けてきてくれたのだ。


「どうかなされましたかな勇者殿?」

 

ありがたい、皆忙しそうで声を掛けるのを躊躇していたところで……


アレ?この人、さっきまでロネオラさんが来ていたローブを身に着けているぞ⁉

 

不思議に思いジッとそのローブを見つめる。すると俺のリアクションでそれに気が付いた様だ。


「この格好ですかな?実はロネオラ殿がおかしな濡れ衣を着せられ失脚……


いや名誉ある魔王討伐の任を授けられたおかげで、このワシが宮廷占術師の後釜に座る事となったのですよ


どうですか?似合いますか⁉前から一度着てみたかったんですよこのローブ


この私が宮廷占術師とは、いやはや人生何があるかわからないのもですな~


これも全て勇者様のおかげです。これも何かのご縁です


何かお困りのようでしたら何なりと私に言ってください。


私は宮廷占術師のバローと申します、今後も御贔屓にお見知りおきを」

 

何だ、この人?スゲー嫌なこと言うな。それだとまるで俺がロネオラさんを陥れたみたいに聞こえるじゃん


止めてくれ、ただでさえ感じなくていい罪悪感を背負っているんだから、勘弁して欲しいぜ全く……


でも困っている時にタイムリーな助け舟を出す人物とか、ゲームでは定番とも言える演出だし


ここはこの波に乗るしかない、渡りに船とはこの事か⁉


「では遠慮なしにお願いしたいのですが、実はカリーノ村を救済する為に


笛をいくつかお借りしたいのです、融通してもらえますでしょうか?」


「何だ、そのような事お安い御用です。何せ私は宮廷占術師ですからな


そのような些細な事、造作もありませぬ。確か笛はB1倉庫にあったはず


必要な分だけ持って行ってくれてかまいませんぞ⁉


おっと私は忙しいのでこれで失礼します、何せ私は宮廷占術師ですからな⁉


早急に【宮廷占術師 バロー】という名刺を作らなければなりませぬ


完成したら勇者殿にも渡しますのでお楽しみにしていてくだされ、では ハッハッハ」


新しく宮廷占術師となったバローは高笑いをしながら去っていった


なんだかよくわからないが自慢を聞かされる為に話したようなものである


あんな人物が宮廷占術師で今後この国は大丈夫なのだろうか?


別に俺が人選したわけじゃないが結果的にあの人が就任する片棒を担いだ様な形なので少し心配してみた。

 

とはいえ俺達は笛を借りる為バローさんの言われた通りB1倉庫という所に向かうことにした


まさかそれがとんでもない事態を引き起こすきっかけになるとは想像もしていなかったのだが……


「シンジさん、B1倉庫ってどこにあるのでしょうか?」


「B1っていうくらいだから地下一階じゃないのかな?」


「なるほど。さすがシンジさん、博学ですね」


「いや~それほどでも……遠慮せずもっと褒めていいんだぜ⁉」


「どうしてシンジさんは最後はキッチリとガッカリさせてくれるのですか……


今までもそういう言動で失敗して来たのではないのですか?」

 

そうだったのだろうか?俺自身全く身に覚えのないことなのだが


この少女のいう事には妙に説得力がある。


しかしいつまでも言い負かされっぱなしでは俺の沽券にかかわる


この世界を救う勇者として、将来複数の美女達に囲まれ憧れられる男として


このままやられっぱなしではないところを見せつけなければ‼


「俺だって色々考えているんだよ、それがたまたま上手くいかなかっただけの話だ


俺は悪くないんだ、言ってしまえば運が悪いというか世間が悪いというか


世の中が俺に優しくないというか……まあそんな感じだ」

 

そんな俺の言葉にゆっくりとを振るサーラ。子供に哲学的な話は難しすぎる話だったかな?


「果てしなく残念なセリフですね……もう救いがたいというか、遺憾の塊というか……

 

シンジさんは頭が悪いのじゃなくて、考え方が間違っているだけだと思いますよ


私が思うにシンジさんは本当は頭のいい人だと思っていますから」


なんという嬉しい事を言ってくれる子なのだろうか⁉︎そうなのだ、俺はやればできる子なのだ。


「ねえサーラ、もう一度言ってくれる?ほら、俺って褒められて伸びるタイプだし」


そんなささやかなおかわりの要求に対し、目の前の美少女は大きくため息をついた。


「馬鹿丸出しのセリフですね……私自身、自分の見る目が無かった事を


認めざるを得ない程の残念な言葉でした。


とんだふつつか者ですねシンジさん」


ふつつか者という言葉の使い方が俺の知っているのと違うが


この場面でこれ以上罵倒されるのは俺の本意ではない


だからこれ以上の発言は控えることとした、いわゆる戦略的撤退というやつである。


だが目の前の美少女は目を細め、まるでゴミを見るような目で俺を見つめている


この冷ややかな視線は俺が学生時代に幾人もの女生徒から向けられてきたモノと同質であることを肌で感じた


ダメだ、こんな少女相手にマウントを取られっぱなしじゃないか⁉このままでは……

 

いや待てよ。冷静に考えてみればサーラにマウントを取られっぱなしという事は


図にしてみると、この美少女が俺に馬乗りになりながら冷たい目で罵声を浴びせ続けているという事じゃないか


それは決して悪くないと言える状況ではないのか?


悪くないどころか、これはもう極上のプレーと言っても差し支えないだろう⁉


具体的に言えば一万二千円までなら出してもいいと思えるほどの……


そんな俺の考えを察したのか、サーラは疑心の目を俺に向けてきた


「何ですか?急にニヤニヤしだして……」


「別に、何でもないぜ。さあ続けろよ、俺を罵ってみな、さあ早く‼」


俺はごく自然におかわりを要求した。話の流れ的に全く違和感がないままプレイの延長要求をしたのだ


「何で私が言い負かされている感じになっているのですか⁉またロクでもない事を考えているのでしょうが……


本当にシンジさんはその頭の回転を悪い方にしか使っていませんね!?


だから王女様とも上手くいかないのですよ。


上手くいきかけても自分からワザワザ梯子を外しにいくみたいなモノですから」

 

確かにそこを突かれると痛い、自分でもそれは感じていたのだ。


「まあ確かに王女様との事は俺も間違っていたと思う所はあるよ


キッチリ反省するところは反省し、自分に罰を与えてでも直していこうとは思ってはいるぜ」

 

俺の言葉によほどびっくりしたのか、サーラは心底驚いた表情を見せた


「意外ですね、シンジさんは反省とか自分に厳しく罰を与えるとか


そういうことを考える人だとは思いませんでした⁉」

 

この少女は俺の事を何だと思っているのだろうか?


「お前なあ……俺をチンパンジーか何かだと思っているのか?」


「いえ、そんな失礼な事は思っていませんよ。


そんな事を聞いたらチンパンジーが気を悪くするじゃないですか⁉」

 

そっちでしたか……この美少女と知り合ってまだ数日しか経っていないが


日に日にサーラに説教されることが増えてきたような気がする。


「わかったよ。キッチリ反省して、間違えたなら自分に罰を与えるようにする。それでいいだろ?」


「ええ、いいと思いますよ。でも自分に罰を与えるって、具体的に何をするのですか?【ハラキリ】ですか?」


「しねーよ‼何で王女様とのやり取りに少しミスっただけで切腹しなくちゃいけないんだ」


「じゃあ【ユビツメ】ですか?」


「お前は俺を切り刻まないと気が済まないのか⁉この世界で自分に罰といってもやる事は知れているだろ


夕食のおかずを一品減らすとか、外出を控えるとか、スマホの使用時間を一日八時間以内に抑えるとか……」


それを聞いたサーラは再び軽くため息をついた


「まあそんなところでしょうか……やや緩い気もしますが


シンジさんにしてはよく頑張っている方でしょうかね?


実際それを実行するかどうかは私が監視させてもらいます」


とうとう俺はこの少女の監視対象になってしまった


〔まるで母親の様だ〕と思っていたがついにここまで来たか……


サーラが俺の保護者から保護観察官になった瞬間だった。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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