俺は王女と再び向き合った
俺達が王女に会いに城を訪れると城の人間は何やら忙しそうに動き回っていた。何だ、また敵が来たのか?
しかし皆、忙しそうにはしているが悲壮感というか切迫している様子はない
どちらかといえば浮かれ気味というか、皆楽しそうなのである。
「何だ、この学園祭前日の様な騒ぎは?一体何が」
俺とサーラは忙しそうにしている兵隊の一人に話しかけ〈王女に会いたい〉という用件を伝えた
ちなみに俺にとって学園祭というモノにはあまりいい思い出がない
アレはあくまでリア充共の祭典であって
学園生活が充実している奴等が美しい思い出として青春の一ページを刻むのである。
俺の青春を振り返っても一ページ目からほぼ白紙状態であり、ページの文字数も一行半あれば事足りる
〈高校に三年通いました。学園祭しました。
林間学校で女子とオクラホマミキサー踊りました。おしまい……〉
何というシンプルイズベストだろうか。これは物語というより俳句に近い、いやポエムというべきだろうか?
小説の帯にあるキャッチコピーでももっと文字数はあるだろう
この短い文章の中で最も文字数を稼いだのは、何と〈オクラホマミキサー〉という単語なのだ
なんという皮肉な運命、もはや呪いである。
いかんいかん、話がそれてしまった。何の話だったかな?
そうだ王女のスリーサイズはどのくらいなのだろう?という話だったな
外見から判断するに恐らくバストサイズはDカップはありそうだがサイズ的には……
アレ?何か違う様な……その時、俺は何か冷たい視線を感じ、我に返って横を見ると
サーラがまるでゴミを見るような軽蔑の眼差しで俺を見つめていた。
「何だよその目は、俺が何をしたというんだ?そんな目で見るなよ⁉」
「シンジさんが何かロクでもない事を考えていたことだけはわかりますよ」
何だコイツ、妙に勘が鋭いというか洞察力があるというか、こんな年端がいかなくても女の勘ってヤツなのか⁉
いやしかしここは認めてはダメだ、どんな厳しい取り調べにも俺は屈服などしない
絶対に自白などするものか、証拠は何もないんだ。必ず不起訴に持ち込んでみせるぜ。
「おいおいサーラ、君は何を言っているんだ?俺がロクでもない事を考えていたって?
そんな訳ないだろう、何か証拠でもあるのかい?ないだろう?
全く、君は探偵にでもなった方がいいんじゃないのかい?
ただ俺も君の探偵ゴッコに付き合っていられるほど暇じゃないんでね」
俺は大げさな身振り手振りを加えてそう言い放った。完璧だ、正に完全犯罪成立の瞬間である
今の俺を裁ける者はいない、例え迷宮無しの名探偵だろうが、じっちゃんの名にかけらえようが
俺は自らの手で無罪を勝ち取ったのだ。
そうだ、この勢いをかってこの世界の弁護士になるというのも悪くない選択かもしれないな
俺がそんな事を考えているとサーラは大きくため息をついて衝撃の発言をしたのだ。
「証拠も何も、今さっき自分で言っていたじゃないですか。王女のバストがDカップがどうとか……
親御さんが見たら涙を流すほどのだらしのない顔をしながら聞くに絶えないことを口にしていましたよ
自分で気が付いていなかったんですか?」
俺の有罪が確定した瞬間だった。正にダンガンロンパされた俺、事件は意外な展開を迎え光の速さで解決した。
何という事だ、まさか自分自身で自白していたとは……どんな推理小説でも、こんなトリック見た事がない
まぁそりゃあそうだ、ドラマなら三分で終わってしまう内容だ
ここは潔く罪を認め少しでも罪を軽くすると共に今後の対策としよう。
「なあサーラ、今の話は王女様には内緒な。王女様は俺にかなり好印象を持っているはずだから
それを壊したくないし、俺がそんな事を考えているなんて知ったらショックだろうしな」
俺の切実な願いを聞いて半ば呆れ顔のジト目で俺を見つめるサーラ。
「しょうがないですね。わかりました、王女様には内緒にしてあげます
ここでシンジさんのイメージを崩しても、何も得はないですからね
ただ、シンジさんが王女様の事を変な目で見ているという事は気が付かれているかもしれませんよ?
女性というのは意外とそういう所に敏感ですから……
そもそも論として女性をそういう目で見ること自体、止めた方がいいと私は思いますが」
「だってしょうがないじゃないか、あんなに魅力的な胸を見せつけられたら
男は自然と目がそこにいってしまうし、見たい、知りたい、触りたいと思うのは当然であり
いわば人間の三大欲求なんだ。自然の摂理なんだよ。
だから魅力的なバストを見てもしガン見してしまったり触ってしまったとしても
それは俺のせいじゃない、あんな胸を見せつける相手が悪いんだ」
サーラは再び呆れ顔でため息をつく。
「発言が完全に性犯罪者のそれですね、今はまだ予備軍で止まっている様子ですが
いつ一軍昇格があっても不思議じゃない恥ずべき思想ですね。
お願いですから勇者が性犯罪や王女へのセクハラで懲戒解雇とか止めてくださいね
シンジさんの失業は私の失業にもつながるので」
俺とサーラがそんな哲学的な事を論じていると、王女が小走りで俺達に近づきてきた
やや乾いた笑顔で駆け寄ってくる彼女は本当に美しい
小走り程度の動きでもその自己顕示欲の塊の様な王女のバストは
マグニチュード8・7クラスの揺れを観測した〈当社調べ〉
この事態を受け俺の脳はすかさず緊急事態宣言を発令し己の下半身に自粛要請をうながす。
勿論今回は口に出してしまう様なヘマはしていない
そう、俺はやる時はやる男なのだ。
「お待たせいたしました勇者様。色々と立て込んでいまして申し訳ありません
どうぞこちらへお越しください、サーラさんもどうぞ」
王女が自分の名前を呼んでくれたことに驚きを隠せないサーラ。
「私の名前を覚えてくれていたのですか⁉ありがとうございます」
サーラは自分の名前をを覚えてもらえたことが余程嬉しかったのだろう
やや興奮気味に見えた、まあ無理もないか。
「もちろんですよ。貴方の様な可愛らしいお嬢さんは忘れませんよ」
「そんな、王女様の様な美しいお方に可愛らしいなんて言ってもらえて、とても光栄です」
いいね、美女同士の会話。ハイソな感じが何とも言えない華やかさを醸し出す。
女同士は意外と面倒臭いと聞いたことがあるが、この二人にはそんなのは当てはまらないのだろう
これも俺の人徳のなせる業なのかもしれないな、多分間違いないだろう。
王女様は俺の方をチラリと見た後、サーラに優しく問いかけた。
「サーラさん、貴方は、その……大丈夫ですか?」
何だろう、このふわっとした質問は?王女様はサーラの何を心配しているのだろうか?
すると全てを悟ったのか、サーラも俺を一瞥した後ニコリと微笑み大きく頷く。
「はい、大丈夫です‼」
何か通じているな、男の俺にはわからない会話なのだろうか?
その後俺達は王宮の謁見の間に案内される。そこには見覚えのある重鎮達も揃っていた
ここまで来る途中の廊下でも、皆がバタバタと忙しそうにしているのが嫌でも目に入ってくる。
「それにしても王女様、この騒ぎは一体何なのですか?」
俺は周りを見渡しながらそう尋ねた。
「これは明日行われる〈龍の節句〉といわれる祭りの準備なのですよ
ですから皆バタついてしまっていまして」
「へえ~お祭りですか?いいですね、その〈龍の節句〉というのはどのような祭りなのですか?」
「この〈龍の節句〉というのは子供たちの成長を願う為に行われるお祭りでして
布で作った龍の形を模したのぼりを風にたなびかせて
〈子供たちが龍の様にどこまでも天高く成長するように〉という願いを込めて祝うものなのですよ」
「へえ~偶然ですね、俺の国にも似たような行事がありますよ」
「まあ、勇者様の国にも⁉それは奇遇ですね」
「ええ、ただ私の国では国をあげてこれ程の大規模なお祭りではないですけどね
どちらかというと、各家庭でそれぞれ祝うみたいな」
すると王女はやや寂しそうな顔を見せ、目を伏せた。
「そうですか……わが国でもこのお祭りは元々は庶民の家庭で祝うものだったのですけど
私の父である先代の王が国の行事として大々的に行うことにしたのですよ」
「じゃあ、これ程大規模にやるようになったのは結構最近なのですね?
でもどうして御父上様は国をあげての行事にしたのでしょうか?」
すると王女は更に物憂げな表情で語り始めた。
「実は私の為なのです。私は子供のころ体が弱くて病気がちだったのです
昔の私は背も小さくてガリガリの痩せっぽちだったのです
そんな私の事を心配してくれた父が庶民の行事だった〈龍の節句〉を国をあげての祭りにして祝ってくれたのです
その甲斐もあってなのか私もすっかり健康になりまして、今では病気一つしない体に成長しました」
うん、随分と立派に成長したものですね、いい事です〈龍の節句〉万歳‼
「そうなのですか、王女様がそんなに体が弱かったとは、今では信じられませんね」
「そうですね、昔の私はすごく背も小さくて……本当にこのくらいしかなかったのですよ」
王女はそう言って手で自分の腰のあたりを示し、どことなく悲しそうに呟いた
しかし俺の視線は何故か王女の腰のくびれからヒップラインへと移行してしまう。
いかんいかん、そんな事を考えている場合ではない。沈まれ俺の妄想力よ
王女のこの語り口と寂しそうな表情は何か人に言えないような悲しい過去があったのかもしれないな
ならばここで俺が頼れる男を示しことができればより一層アピールへとつながるはずだ
よし、王女の悲しみの原因が何か、それとなく聞き出して俺の好感度を上げてやんぜ‼︎
そういえば先代の父と言っていたな?という事は最近亡くなった可能性もある
ここは話題を変えなくては……
俺はその時、ある事に気が付いた。それは王女が手で示した真横に柱があり
ちょうどそこにいくつかの傷跡が残っているのだ、これはひょっとして……
話を聞いてみるとこの国の【竜の節句】は日本の【こどもの日】に似ている
ならば柱に子供の成長の記録を残し、我が子の成長を喜ぶという
日本と同じ発想かもしれないな、【五月五日の背比べ〜♪】と歌にもなっているし
そうに違いない、この柱の傷は王女の成長の記録なのかも⁉
これだ、この空気を変えるにはこれしかない‼
「王女様、その柱の傷はもしかして?」
「ええ、これは二年前にここで起こったクーデターの跡です
先代の王の弟、つまり私の叔父にあたるパルフェ―ノ卿がこの場所で父に対してクーデターを画策し
父に襲い掛かったのです。この柱の傷はその時の戦闘の跡なのですよ
クーデター自体はラブニルド将軍の活躍もありすぐに鎮圧され、パルフェ―ノ卿も取り押さえられました
しかしその時に受けた傷が元で父は帰らぬ人に……」
いかーん、話を変えるつもりがとんでもない地雷踏み抜いたぞ‼
しかもあの傷は成長の記録ではなく、戦闘の跡だったとは⁉︎
〈柱の傷は一昨年の……〉ですか⁉
「何かすみません、デリカシーの無い事を聞いてしまったようで……」
俺は素直に謝る事にした。そしてもう同じ失敗は繰り返さないと心に誓う
そう俺は日々成長を続ける男なのである。
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