俺は再び決意した
「なるほどね。ヒーローものか、いいじゃないか。
俺の世界でも同じようなモノがあって俺も大好きだったんだぜ」
そんな俺の言葉を聞いて二人は嬉しそうに微笑んだ。
「勇者様の世界にもあったのですか⁉」
「そうですよね、最高ですよね〔お面ライター〕。やっぱりわかる人にはわかるんだな~
勇者様の事を見直しました‼」
特撮ヒーローものが好きってだけで見直される俺って……
どれだけ俺の評価低かったの?まあいいや、ここは話を合わせることが先決だ。
「多分俺の知っているヒーローと同じような感じなのだろうけど、君たちが好きなその
〔お面ライター〕っていうのはどんなヒーローなんだい?」
「お面を付けた主人公が敵のアジトにライターで火をつけるんですよ‼」
「毎回敵のアジトが凄い炎を巻き上げて燃えるんですよ‼」
二人は興奮気味に話しているがその話を聞いた俺は当然ドン引きした。
「御免、俺の知っているのとは全然違った……」
主人公がお面を付けて敵のアジトにライターで火をつけるだと⁉
そんなの単なる放火魔にしか聞こえないのは俺の学の無いせいなのか?
燃える展開って物理的な意味でのことだったのか⁉︎確かにそれは熱いな。
そもそもそれ子供が見て面白いモノなのか?この世界のTPOや教育委員会はどうなっている
将来この世界の女子高教師になるかもしれない俺にとっては他人事ではない。
まあこの世界の教育問題について考えていても仕方がない
目の前の問題から片付けていくとするか。
この二人は〔お面ライター〕なる犯罪まがいの特撮ものに感銘を受けているようなので
ここは上手く話を合わせて乗せる方向でいくとしよう。
「じゃあ、その〔お面ライター〕になり切ったつもりでやってみればいいんじゃないかな?」
「そうします、ただ〔お面ライター〕にはシリーズがあって、俺たちが一番好きだったのは
〔お面ライター セクロス〕というシリーズだったので
俺達は二人で〔セクロス〕と名乗る事にしますよ‼」
う~ん再び教育上、及び倫理上の問題が浮上してきたな
狙ってやっているんじゃないよな?この目をキラキラ輝かせているところを見るとワザととは思えない。
「なあ、君たちの熱い思いはわかったが、その名前はどうかな?
他の名前にした方がいいのじゃないかなと思うのだけれど……」
俺はさりげなく名前を変える方向へと誘う。俺が関わっているのにこんな名前を付けられたら
俺が付けたと思われると困るからである。
「やっぱり俺達みたいな弱っちい男に、この名前は似合いませんか?」
「俺達にその名前はふさわしくないと?」
いや、似合っているよ、君たちの名前にこれ以上ないくらいふさわしい名前だけどさ
「いや、そういう訳じゃないのだけど、何というか君達の為なんだ
その名前のせいで君達が変な色眼鏡で見られたりしたら嫌だろ?」
二人は少し考え込んでいたが、顔を見合わせ同時に頷いた。
「お気遣いは嬉しいですが、俺達はこれで行きます。男を貫きます‼」
「どうして勇者様がこの名前を嫌がるのかはわかりませんが、俺達は〔セクロス〕が好きなんです
だからこれで行きます、〔セクロス〕で絶頂に上りつめてみせます‼」
もう何も言うまい、二人の気持ちは固いようだ。せめて他の部分を固くしない様に祈るばかりである
この名前のせいで今後彼らの出番は減るだろう
しかしそれは仕方のない事だ、それが彼らの選んだ道なのだから……
それはいいとして、これからの課題がある
この次ゴブリンジャイアントが来襲してきたらどうするか?という問題だ
今回の伝言作戦は正直あまりいい結果を出せたとは言えない
となると新たな作戦が必用だ、それをどうすべきか?
かつて〔花曲中学の孔明〕の異名をとった俺でも難解な問題である
ちなみにこの異名は俺自身が付けたモノであり、他人からそう呼ばれたことは無いのだが……
まあこの際それは大きな問題ではないだろう。
「あの~シンジさん、ちょっといいですか?」
「何だサーラ、トイレにでも行きたいのか?」
「そんな訳ないでしょう、大体トイレに行くのになんでシンジさんに報告するんですか?」
「おかしいな、俺の国の法律では十八歳以下の女子はトイレに行くとき
成人男性に報告する義務を生じるという法律がある、あれ都の条例だったかな?」
サーラは俺の顔をジト目で見つめる、先程の二人とは真逆の冷たい目だ。
「シンジさんはどこまで果てしないのですか、ある意味感心しますよ」
「そこまで褒められるような事じゃないと思うけど、何だか照れるな」
俺の顔が思わずほころぶ、そう俺は褒められて伸びるタイプなのである。
「今の言葉を額面通り受け取る人も珍しいですが、まあいいでしょう
今回の問題は森からモンスターが来襲してきた時、早急に連絡するにはどうするか?
という事ですよね。だったら各家に笛を持たせて
モンスターが来たら笛を鳴らして知らせるというのではダメなのでしょうか?」
「あっ⁉」
「その手があったか⁉」
俺と村長は思わず顔を見合わせてしまう。
「盲点じゃったの、笛とは妙案じゃ」
「正に目から黒子だな、いわゆるコロンビアの卵的な発想という訳か
さすが俺の相棒にして最初のチームメンバー。でかしたぞ、サーラ‼」
俺は素直にサーラを褒める。ギブアンドテイクを忘れない、その精神こそが思いやりの原点
さあ俺へのお返しの誉め言葉を期待しているよ、サーラ‼
だがサーラから帰ってきた言葉は想像したものとは違っていたのである。
「あの~ちょっといいですかシンジさん。上機嫌のところに水を差すようで申し訳ないですが
〔目から黒子〕ではなく〔目からうろこ〕ですよ⁉ あるきっかけで目からうろこが剥がれ落ちる様に
物事が良く見えるようになったという例えです。
〔目から黒子〕ですと単に黒子が視界を邪魔していたに過ぎないという意味になってしまいますから」
せっかく俺は褒めたのに、なんで説教されているみたいな感じになっているんだ?
「俺でもたまには間違えるさ。そうたまたまだよ、ケアレスミスという奴かな?
おかしいな、こんな間違いは初めてなんだけどな、ハッハッハ」
何とか笑って誤魔化せたようだ、ふぅ~危ない危ない、もう少しで俺の威厳が地に落ちるところだったぜ。
「まだ終わりではないですよ、シンジさんは先程〔コロンビアの卵〕と言いましたが
それは〔コロンブスの卵〕の間違いではないでしょうか?
意味はどんな素晴らしいアイデアや発見でもひとたび衆目に触れた後には
非常に単純で簡単に見えることを言います。シンジさんが言った言葉ですと単に
〔コロンビア産の鶏卵〕という事になってしまいます。
それと今言ったケアレスミスというのもこの場合、意味合いとしては微妙ですね
シンジさんはたまたまのケアレスミスと言いましたが、どう見てもこれは完全な覚え違いであって
たまたまのケアレスミスではない様に思えます。シンジさんはもっと日本語をしっかりと学んでください
そもそもですね、シンジさんは……」
何だろう、急に俺の視界がかすんできて前が良く見えなくなってきた、もう勘弁してください、
異世界の少女に日本語の間違いを指摘される俺って……
俺のライフはもうゼロです……俺は褒めたのに、何だこの仕打ちは?
まあサーラが何度も〔タマタマ〕という言葉を連呼してくれた事で
今回は良しとし、差し引きゼロという事にしよう。
その時、ふと横に視線を移すとメンディ村長が口に手を当て、笑いをこらえていた。
「ちょ、おまっwwこんな若い子に説教されてやんの、ダッセ~~~‼プゲラww」
このジジイ、もう二度と助けんぞ覚えていろよ。
俺は恨みは絶対に忘れない、それが俺のアイデンシティーだからだ
例え日本語は忘れてもこの日の屈辱は絶対に忘れない。
そうか⁉やはり俺に日本は狭すぎたのだ、元々俺は女性にちやほやされたくてこの世界に来たのだ
こんなジジイが野垂れ死のうが、バットで殴られようがどうでもいい。
そう考えれば、こんなジジイのいう事にイチイチ腹を立ててマジレスしている場合じゃない
俺は世界を救う勇者なのだ。
「じゃあシンジさん、村の為に王女様に頼んで笛をいくつか貰ってきましょう」
「そうだな、俺達の伝説はここから始まるんだ、その目によく焼き付けておけよサーラ
俺がこの世界を救うまで‼」
俺は決め顔でそう言った。
「あの~シンジさん。早速タイトル回収を済ませてドヤ顔するのはいいですが
私たちはまだほとんど何もしていませんからね」
サーラの鋭い指摘に対し、俺はあえて聞こえなかったフリをした
もう心が壊れそうだったからである。
俺達二人はこうして村を後にした。特に何かをした訳じゃないが気分は実に晴れやかだ
ふと後ろを振り向くとチョコボール助井とカクウ鷹が俺達に手を振っている
この物語の中でもう君たちに会うことは無いだろう、その訳は自分の胸に聞いていくれ。
君たちの事は……まあ三日ぐらいは忘れないだろう。理由は言わずもがな
おやっ⁉村長がまだ俺の事を笑ってやがる。
畜生あのジジイ、アンタの家はもう覚えたからな
近いうちにアンタの家に謎の特上寿司と二十人前のピザが届くはずだ覚悟しろよ
その時後悔してももう遅いぜ。こうして俺とサーラは希望に胸を膨らませ新たなる冒険へと旅立つのである。
頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。




