俺は少年達を励ました
強敵ゴブリンジャイアントに向かって猛然と突っ込む二人の若者
さあ、どうなるのだろうか⁉︎……あっ、やっぱり。
二人の攻撃は全くゴブリンジャイアントにダメージを与えられなかったようだ
それどころか二人が必死で剣を叩きつけているがゴブリンジャイアントは終始涼しい顔をしてニヤついていた
そして右手に持っていた棍棒であっという間に二人を殴り倒した、簡単に吹き飛ぶ二人。
そして二人は持っていた剣を取り上げられてしまい、〔返せ‼〕と叫んでいる。
しかし俺はある事に気が付いた、ゴブリンジャイアントの持っている棍棒がやけに細いのである
ゲームやアニメで見る棍棒はもっと先がデカくて相手を殴り倒す為の仕様になっているはずだが……
そしてよく見ると隣に背の低いゴブリンを一匹連れていた
手下にしては少ないな、一体どうなっているのだろう?
「村長さん、こんな時にこんなこと聞くのはどうかと思いますが
あのゴブリンジャイアントが持っている棍棒、妙に細くないですか?
それと隣にいるあの背の低いゴブリンは?」
「ああ、アレですか?アレは棍棒ではないバットじゃ」
「バット⁉何でゴブリンがバット持っているの?」
「なぜかはワシも知らぬ。しかしゴブリンジャイアントはバットで相手を殴り倒すのじゃ
ムシャクシャしていると人里に降りてきて人をバットで殴る習性があるらしい
そして殴った相手の物を取り上げてしまうのじゃ」
何だろう、どこかで聞いたことのある設定だな……もしや⁉
視線を再びゴブリンジャイアントの方に移すと若者二人は正座させられ何かを聞かされていた
「村長さん、ここからだとよく聞こえないのですが、アレは何をされているのでしょう?
説教でもされているのですか?」
「いや、アレは歌を聞かされているのじゃ、ゴブリンジャイアントは相手を殴り倒した後
手持ちの物を取り上げて最後には歌を聞かせるという変わった習性があってな
これもゴブリンジャイアントの習性とやらで
〔ジャイアントリサイタル〕というらしい。
それともう一つの質問じゃが隣にいる小さいゴブリンは参謀じゃ
ずる賢くて頭が切れる、ゴブリンスネーオという」
何だそりゃ、それはゴブリンジャイアントというよりゴブリンジャイアンじゃねーか⁉
「じゃあ前回ゴブリンジャイアントに敗れたという勇者というのは⁉」
「うむ、眼鏡をかけた利発そうな若者であった、え~っと名前は何だったかな……
そうじゃ名前を〔ノビタ〕といっておったな。ゴブリンジャイアントにボコボコにされて
何やら宝物を奪われたとかで傷心のまま帰って行った、役に立たない勇者様だったのう
あんな赤い糸で作った輪っかを奪われたぐらいで何故にそこまでショックを受けたのか謎じゃ」
「そ、そうですか……その勇者〔ノビタ〕さんは一人で向かって行ったのですか?
横に青くて丸っこい相棒いませんでした?」
「いや、一人だったぞい、それにしても弱い勇者様だったのう」
そうか、たった一人で……もう何も言うまい。
俺たちがそんな事を話しているうちにゴブリンジャイアントは若者二人の剣を取り上げた後
散々歌を聞かせると上機嫌で森に帰って行った
俺はもう戦う気力も起きない為、追撃するなどという発想は皆無である。
ゴブリンジャイアントに軽く一蹴された二人は正座したまま動けないでいた
よほどショックだったのだろう、しかし今考えるとあの根拠のない自信は一体何だったのだろう?
「ゴブリンジャイアントにやられた者は皆、心を壊される。
あの強烈な歌で精神をやられ働く気力を奪われるのじゃ
こうして勤勉な農夫が一瞬にして引き籠りニートに変貌してしまうのじゃ……
引きこもりニートじゃぞ、引きこもりニート⁉︎
引き籠りニートなど人間の屑じゃ、社会に何の利益も生み出さぬ寄生虫といってよい
ワシはな、その様なゴミ虫は死んでしまえばいいとすら思ってお
るくらいじゃ‼」
なぜか引きこもりニートを目の敵にして熱く語るメンディ村長。
このジジイ、俺への当てつけか?最後はゴブリンジャイアントに対する怒りというより
引き籠りニートへの怒りじゃねーか⁉何かどうでもよくなってきたな
というよりも気持ち的にはゴブリンジャイアントの味方をしてやりたいぐらいだ。
そして俺とサーラはチョコボール助井君とカクウ鷹君の元へと近づいていった
相当ショックだったようで二人は正座しながら涙ぐんでいた。
「お二人とも大丈夫ですか?」
サーラが心配そうに声をかける、するとそれが呼び水になったかのようにボロボロと大量の涙を流す二人。
「ちくしょう、どうして勝てないんだ‼」
「こんな……こんなはずじゃなかったのに‼」
いやいや、どうして急に勝てると思ったの君達?
俺の言葉のせい?もしかして俺の責任なのか?
う~ん、ここは勇者らしく、それっぽい言葉をかけてやらないと……
「君たちはよく戦った……」
二人の肩にそっと手を乗せ静かに語る俺、いいじゃない何か勇者っぽいぞ⁉
「慰めの言葉なんて止めてください、負けたら何にもならないんですよ、何にも‼」
「そうです、俺たちは負けたのです、そんな言葉より何で負けたかを知りたいんですよ‼」
えーーー!⁉何で負けたかって……そんなの簡単で弱いからじゃん、それ以外理由ある?
何か熱く語っているけど君達相当弱かったよ、死ななかったのが不思議なくらい……
でもそんなこと言ったら空気読めない勇者になっちゃうじゃん
またサーラにゴミを見るような目で見られてしまう。まあそれはそれでいいところもあるが。
「勇者様、勇者様は言いましたよね〔努力・友情・勝利〕で強敵にも勝てると⁉
なのに俺達は何故負けたのですか⁉俺たちに嘘を付いたのですか?
勇者様は嘘つき引きニートなのですか⁉」
目を潤ませ真剣な表情で俺に語り掛けてくるチョコボール助井。
この野郎、三流芸人みたいな面白ネームの癖に妙に俺に突っかかってくるじゃねーか。
Aちゃんねるで鍛えた俺の悪口力をナメているのか?何なら今から本当の地獄みせてやろうか⁉
いかんいかん、俺は勇者だった、今はAちゃんねるの伝説のコテハン
【キンフェ】は一時封印しなくては、寛大な心で許してやるとするか、感謝しろよ。
「なあ君達は忘れていないかい?俺は確かに〔努力・友情・勝利〕と言った
だが君たちは強くなるための努力をしたかい?強くなるのは一朝一夕でできることじゃない
俺のいた世界の昔の偉い人がこう言った
〔努力はそんなに実らない、でもちょっぴりいいことありそう〕と」
すると今度はカクウ鷹が食ってかかる様に反論してきた。
「俺たちはちゃんと努力していますよ‼炭水化物を制限し寝る前にはエクササイズを欠かしません
週末にはホットヨガにも通っているんです‼」
何だそれは?今月中に3kg痩せたいOLか?
「それではダメだ、強くなろうと思ったら死ぬほど鍛える必要がある
そうだな……具体的には三年ぐらいか」
そんな俺の言葉に絶望的な表情を浮かべる二人。
「そんな……三年も?」
「三年……三年も鍛えていたら村がゴブリンジャイアントにめちゃくちゃにされてしまいます」
がっくりと肩を落とし落胆の色をみせる二人の若者だったが
ホットヨガでモンスターに勝とうと思っていた奴が、何まともな事を言っているのやら
ただ俺も努力して強くなった訳じゃないし説得力に欠けるのは否めない
さてどうしたものか……そうだ、コイツ等は思い込みが激しいようだし気持ちから入らせる手もあるな。
「じゃあ早く強くなる方法を教えよう、それはイメージだ、自分が強いと思っている者に成り切る
人間は気の持ちようで信じられないような力を発揮できる
同じ訓練でもダラダラとやるより余程効率よくできるんだよ」
二人は俺の話しを聞き、顔を見合わせた。
「自分が強いと思っている者と言われても……」
「前の勇者様は弱かったし、次の勇者様である貴方の力はまだ見ていませんからね
貴方はどうにも胡散臭さが拭えませんし……」
考えている事を全て言葉にすればいいってものじゃないぞ
少しはオブラートに包むという大人の気遣いも覚えるのだな
俺が胡散臭く感じるのであれば、君にはニュータイプの素質があると言っておこう。
その時チョコボール助井君が何かをひらめいたようだった。
「そうだアレなんかどうかな?」
「アレって何だよ?」
「俺達が子供のころ大好きだったアレだよ⁉」
「そうか、その手があったか⁉」
二人は何かを思いついたようで先程までの暗い表情から一変し、はしゃいでいるようにすら見えた。
「アレって何の事なんだい?」
おれはさりげなく二人に聞いてみる。
「俺達が子供のころ憧れていたヒーローがあるんです〔お面ライター〕って言うんですけどね
お面を付けた主人公が悪い奴を懲らしめるんですよ‼」
「俺達いつも夢中になって見ていました、毎回熱くて燃えるんですよ‼」
どうやら特撮ヒーローみたいだな。毎回見ていたというけど、どうやって見ていたのだろう?
まあこの世界にはスマホがあるみたいだし、細かい事はいいか
その時の俺はそう思ったのである。
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