俺は戦い方を教えた。
年の頃は十五、六歳だろうか?思い詰めた顔の若者が切羽詰まった雰囲気で俺に話しかけてきた
「勇者様、俺はこの村で生まれ育ちました、だからどうしてもこの村を救いたいんです
今回は勇者様がいてくれるという事ですが、ずっといてもらう訳にはいかないでしょう?
だから今後この村は俺たち自身の手で守っていかなければいけません
だから俺に戦い方を教えてください、お願いします‼」
そう言って深々と頭を下げる少年。他の村人も熱い視線で俺を見つめている。
しかし困ったな……戦い方を教えろと言われても自慢じゃないが俺は格闘技はもとより
生まれてこのかた殴り合いの喧嘩なんかしたことがない
パッと思いつくものといえば格闘ゲームの入力コマンドぐらいである
兄とも口喧嘩はあってもマジ喧嘩は一度もない。その理由はスポーツで鍛えている兄貴と
ゲームの必殺技しか思いつかない俺とでは喧嘩をしても勝敗は明らかだからだ。勝てない戦いはしない
そう、何度も言うがこれは戦略的撤退である。
そして少年漫画などで〔拳で語る〕などという言葉がたまに出て来るが、断言しよう、あれは嘘である
なぜなら拳には発声器官などは無く、会話などできないからだ
仮に比喩的表現だったとしても殴り合いで一体何を語るというのだ?
〔テメームカつくんだよ、ボコボコにしてやるからな‼〕とか
〔弱い奴を殴るの超気持ちいい~~こんなに一方的に殴っている俺TUEEEE~~‼〕
などといったDQN丸出しの言葉しか出てこない。これを語るとは言わないだろうし
これが何かと問われれた場合、返答に困る質問である。あえていうならば単なる罵倒であろう。
そして何より俺は一度も真剣に物事に取り組んだこともない
強いて言うなら受験戦争という過酷な戦いに参戦し、そして二度敗戦した……
そんな俺に何を語れと?個人としての戦闘術、集団としての戦略どれも人に語れるほど詳しくはない。
クソっ、こんな事ならグ〇ップラー〇牙とか横山版三○志をもっと読み込んでおけばよかった
しかしここで〔わかりません〕では村人を失望させるだけだ、とりあえずでも何か言わなくては……
しかし底の浅さを露呈しないために具体的に言うのではなく、あくまで抽象的に……
「ゴホン、君の気持ちはわかった。だが敵の戦闘力や君たちの能力もわからないのに
軽々に戦略を語るわけにはいかない。それに戦闘術というのは一朝一夕で身に付くモノでではないのだ
何もせずにすぐさま強くなれるような都合のいい事はない、それは不可能なんだ」
何もせずにすぐさま強くなった俺がそれっぽく語った
それを聞いた少年は悔しそうに唇を噛みしめうつむいた
どうしよう空気重い、もっと何かいい事言わないと収まらない空気かな?
そして懐疑的な目でこちらをジッと見つめるメンディ村長の視線がやたらムカつく
え~いこうなったら仕方がない。
「今言ったように、すぐに強くなることは不可能だ
しかしどんな強敵が来てもそれを打ち破る勇気と希望が湧き出てくる魔法の言葉を君に授けよう」
俺の言葉を聞きハッとした表情で俺を見つめる少年
「そんな言葉があるんですか?是非教えてください、お願いします‼」
その少年は希望に満ちた目で俺を見つめてくる。
俺はあえて仰々しくもったいつけた感じで大きく頷いた後、静かに告げた。
「わかった〈俺が考えた〉魔法の言葉を授けよう。それはな〔努力・友情・勝利〕だ」
それを聞いていた村人からおおお~~~‼という歓声が上がる
「努力・友情・勝利……何だろう、確かに何か勝てそうな気がしてきました‼」
目を輝かせながら何度も頷く少年。いいぞ、どうやらうまくいった様だ。
「そうだろう⁉この言葉さえあればどんな強敵だって倒すことができる、それを俺は知っている」
少年は再び嬉しそうに頷いた
「はい、何かわからないけど力が湧いてきました‼」
それを聞いていた他の少年たちも勇気づけられた様子で
希望に満ちた目で両こぶしを握り締め気合が入っている様だった。
「何だかわからないけど、オラ、ワクワクすっぞ‼」
「どんな敵が来たってブッ倒してやるってばよ‼」
「山賊王に俺はなる‼」
まあやや後ろめたさはあるが何にしても丸く収まってよかった。
ホッとした様子で引き上げてくるとサーラが俺を懐疑的な目で見ている。
「シンジさん、今の言葉、どこからのパクリですか?」
何だこの少女?やたら勘が鋭いし妙に頭がいい。
「な、何の事だいサーラさん?」
「とぼけても無駄ですよ、シンジさんが瞬時にあんな言葉を思いつく訳ないじゃないですか⁉
どこからの引用ですか?」
この美しい少女は出会って数刻で俺の全てを見抜いてしまったようだ。
「ま、まあその、ある雑誌から少々……」
サーラは目を閉じ大きくため息をつく。
「ハア、丸パクリなんですか……ダメですよ、そんな事しちゃ」
「丸パクリとか言うな、オマージュと言ってくれ‼」
俺は激しく反論したが、サーラには〈はいはい〉といった感じで軽くあしらわれた
このいずれ絶世の美女になると思われるダイヤの原石の様な美少女を
将来理想の彼女に仕上げようと思っていたのだが、思惑とは外れてなぜか母親の様になってきた。
おかしいな、こんなはずでは……俺はどこで分岐ルートを間違えた?
「では勇者様、わが家へお越しくだされ。ちょうど今晩あたりにゴブリンジャイアントが現れそうですし
何のおもてなしもできませんが、お嬢さんも一緒に」
俺たちを自宅へと誘ってくれる村長。この人にはあまりいい印象がないが
考えてみれば村が絶体絶命のピンチを迎えているのだから
なりふり構っていられないというのも理解できなくもない
俺は更に気になる事を聞いてみた。
「ゴブリンジャイアント以外のモンスターはどうなのですか?」
「うむ、他のモンスターからもそれなりの被害は受けておる
まずは普通のゴブリンなのじゃが、あいつらはゴブリンジャイアントとは違い群れで行動する
そして奴らはあいつらの間で流行っている競技で勝利すると、村に降りてきて大通りの交差点で騒ぎ出すのじゃ」
何だよそりゃあ?サッカーワールドカップで日本代表が勝った時に
渋谷のスクランブル交差点で騒ぐ若者と変わらんな
まあ被害としては無視していいだろう。
「あとスライムじゃが、時々村に降りてきては成人男性を襲い
その男性の着用しているブリーフだけを溶かしていくという被害報告がいくつか出ておるな」
何だそれは、意味不明何ですけど?
普通スライムといえば女性の衣服を溶かすというエロゲ―の定番設定はどうした?
この世界のスライムってゲイなの?ブリーフだけを溶かすならトランクスかボクサーパンツでも履けよ。
マニアックすぎて誰得なのかもよくわからんな。
「あとはスケルトンじゃが深夜のコンビニ前で群れていると所を何度か目撃されておる」
もう被害でもなんでもない。街でよくある光景だよそれ、てゆうかここにコンビニあるの?
もういい、ゴブリンジャイアントだけに絞ろう。俺は村人全員を集めてもらうと皆に重要な事を伝えた。
「いいかい、ゴブリンジャイアントが現れたらすぐに次の家へと走って伝える事
そして伝言の内容は簡潔かつ明瞭に伝える事、以上だ‼」
「はい‼」
村人が俺の言葉に一斉に返事をした、悪くない、将来この世界で先生になるというのもアリかもな
そんな事を思いながら明るい未来に希望を馳せた。
もちろん俺の想像している未来が女子高の先生なのは言うまでもない。
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