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俺はなろう系勇者?

「はい、約150年前にこの世界に現れたという伝説の勇者です


名前をナ・ロウといいまして、数ある勇者伝説の中でも最強の呼び声高き勇者なのです」


落ち着け俺、この話の流れだとそれ程悪くなさそうだぞ


「そのナ・ロウという勇者はどのような人物だったのですか?」


「伝説の勇者、ナ・ロウはシンジ様と同じく異世界から来たと伝えられています


その力は凄まじく、特に鍛えてもいないのに最初から無敵の戦闘力を持ち


特別顔がいい訳でもないのに何故か女性にモテモテで


ナ・ロウの行くところ不思議と美女のピンチに遭遇しそれを救い仲間にしていたとの事です


ですから常に周りには美女を従えていてそれらの美女全員に好意を寄せられているにもかかわらず


全く気が付かないという奥ゆかしいところがあったとか


そして特出すべきはナ・ロウの持っていた特殊能力です

 

それはナ・ロウが扉を開けるとなぜかいつも美女が着替えており


驚いた女性が悲鳴を上げるという珍しいモノでした。ですがそれ程の圧倒的な力を持ちながらナ・ロウは


〈また私、何かやってしまいましたか?〉という実に謙虚な姿勢を崩さず……」

 

王女の話を黙って聞いていた俺だったがさすがにもう限界であった


「止めろーー‼これ以上無意味に敵を作るのは止しましょうか、誰も得しないので‼」


王女は不思議そうな表情を浮かべていたが、俺の言う通り話を止めた


「まあ何にしろ私は凄い勇者の力を授かったという事ですね?


ただその英霊の力はどうやって使うのでしょうか?自然と使えるモノなのですか?」

 

とにかくこれ以上話がそれてもロクな事が無いと判断した俺は一番重要であり最大の疑問をぶつけてみた


しかしそれに対する王女の反応は鈍かったのである。


「それがわからないのです。何しろナ・ロウの力を授かった人間は過去誰もおらず


シンジ様が初めてなのです。ですからナ・ロウの力に関しては〈何もわからない〉というのが現状です、スミマセン」

 

申し訳なさげに頭を下げる王女。王女がかがんだ際に俺の視線が自然と胸元に行ってしまうのは完全な不可抗力である


そんなささやかな幸せを満喫しつつも大変困ったことになった


いくら凄い力でもその使い方がわからないのであれば無用の長物という事になってしまうからだ。

 

俺はどうしたものか?と途方に暮れていた時。宮廷占術師のロネオラが割って入るように口を開いた。


「それに関しては勇者ナ・ロウ様が最後に残したと言われるお言葉が残っております、それは


〈我未だ真摯の才幹を振るう事敵わず、されど不俱に窮境に陥りし時


我は満身の全霊を賭してこれにあたらん事を誓い


常住坐臥の決意をもって敵を撃滅せしめん事を願うもの也〉と」


ロネオラさんは伝説の勇者ナ・ロウが残したと言われる言葉を教えてくれたのだが


何やら小難しくて俺には何を言っているのかさっぱりわからなかった


困惑する俺を尻目に横にいたサーラが呆れ顔でその言葉を聞いていたので


俺はサーラにこっそりと聞いてみることにした。


「なあサーラ、今のナ・ロウとかいう勇者が何を言っているのか分かったのか?」

 

大きくため息をついたサーラは、しょうがないと言わんばかりの態度で語り始めた。


「今の言葉を要約すると〈俺はまだ本気を出していない


だけどいざとなったら全力で敵をやっつけてやるから覚悟しな‼〉


って感じの内容ですね……」

 

俺は開いた口が塞がらなかった。ダメだこの勇者……完全にこちら側の人間だ。

 

そんな時、王女が心配そうにこちらをチラリと見たので俺は優しく微笑む


「心配いりません。要は本気で戦い全力で敵を倒す、それ以外にはないという事でしょう、お任せください‼」

 

王女の不安げな表情は完全には消えなかったがそれはナ・ロウとかいういい加減な勇者に対するモノであろう


引き続き俺への信頼感は絶大の様だ。そして俺はいざ戦いへと向かう決意を固めた。


「王女様、私に考えがあります。今までの様に敵の魔犬達を橋で迎え撃つのでは無く


できれば広い場所で戦いたいのです、どうでしょうか?」

 

俺には俺の考えがあった、聖剣の威力を考えれば狭い橋の上よりも


広い場所の方が聖剣の力を思う存分発揮できると考えたからだ。


「わかりました、橋を渡ったところに(カリーノ村)という所があります


そこには広い平原があり、広い場所で戦うというのであればそこが良いでしょう


村の長には私から手紙を書いておきますので」

 

そういうとすぐに手紙をしたためる王女。俺はその手紙を手に早速〈カリーノ村〉へと急いだ


村へと向かう道中でサーラが心配そうに俺を見つめながら問いかけてきた。


「大丈夫ですかシンジさん?相手は何十匹もの魔犬です、気を付けてくださいね」


「ああ任せておけ、俺が必ず魔犬共を蹴散らしてこの国の英雄としての道を進むのだ


それにな、やっぱり王女は俺に気があるみたいだしな」

 

俺の言葉に驚きを隠せないサーラ。


「本当ですか⁉前もそんな事を言っていましたが、あの王女様が……まだこの国に来たばかりだというのに、シンジさんも隅に置けませんね⁉」


「まあな、王女は俺に気がある事は間違いない、目は笑っていないがいつも微笑みかけてくれるし


俺への思いが強すぎるのか俺が話しかけてもあまり返事が返ってこない、多分照れているのだろうな


あまり目線を合わせようともしないし、近づいても来ない。

 

会話も必要最低限の要件しか喋らないんだ、シャイだろう⁉乙女心は複雑だよな」

 

ニヤつきながら雄弁に語る俺の横顔を、何故か憐れむような目で見つめるサーラ


「あの……言いにくいのですがシンジさん、それは完全に嫌われていますよ」


「そんな訳ないだろう、王女は〈俺の様な勇者を待っていた〉と言ってくれたんだぞ⁉」


「先程の〈隅に置けない〉という言葉は撤回します、できれば部屋の隅の方にいることをお勧めしますよ


あのシンジさん、社交辞令って言葉知っていますか?」

 

俺も薄々感じていたことだがあえて目を背けていた。いやそんなはずはない、そんなはずはないんだ‼


「社交辞令?何だいその言葉は、知らないな。ギャルの間ではやっている流行語か?」


するとサーラは大きくため息をついて首を振った。


「まあいいです、頑張ってください。応援はしませんが」


何だ、焼いているのか?可愛い奴め。仕方がない今度サーラにも優しくしてやろう。


そんな事を話しているうちに目的地である〈カリーノ村〉に到着した


恐らく俺たちが付く前に村には通達が言っていたのであろう


村の人々は村の入り口で集まっており、皆不安げな表情を浮かべ俺たちを見つめている


その内の一人が俺に話しかけてきた。


「アンタが今度の勇者さんかい?」

 

今度の?この語り口だと今までも別の勇者が来たことがある様だな。


「ああそうだ。俺が勇者シンジ、気軽にシンジって呼んでくれよ」

 

俺は警戒心を解くためなるべくフレンドリーに話しかけた


しかし村の連中は警戒心を解くことは無くいぶかし気な表情で俺たちをジッと見つめている。


「シンジさん、どうやら私たちあまり歓迎されていませんね」

 

俺の耳元でそうささやいたサーラ。美少女が耳元でささやくとか今までの人生で無かったことである


何とも言えない幸せな気分を味わいつつこれは攻略ルートの選択を間違えていないことの証明だと確信した


いやそんな事より本題に戻そう。


「これが王女からの手紙だ。俺が勇者である事と


ここで戦うことに王女の許可が下りている証明だ、村長さんに会いたいのだが」


すると村人の群れが割れて真ん中から一人の老人が出てきた


背は低く右手に杖を持ちながら歩いてくる七十歳くらいの男性


腰は曲がり痩せていて髪も完全に白髪になっているのだが


ただ者ではない事を感じさせる鋭い眼光で俺をジロリと上目遣いで見てきたのだ。

 

俺は先程の様にフレンドリーに接しようとしていたのだが、その眼光と迫力に押されて思わず息を飲む


そしてその近寄りがたい雰囲気を感じたまま右手を差し出した


「初めまして、私は勇者シンジと申します。こちらは連れのサーラ


王女様に頼まれて魔犬退治に来ました


この村の平原で魔犬達を迎え撃つつもりですのでご協力お願いします」

 

村の長と思えるその老人は俺の差し出した右手に反応することなく


ジッと俺を見つめたまましばらく無言で微動だにしなかった


とても空気が重く息苦しい。差し出した右手が空中で行き場を失いながら痺れてきた、もう引っ込めてもいいよね?

 

助けに来たはずの俺がどうしてこんなプレッシャーを感じなければならない?何でもいいから何か言えよジジイ‼


その時である、後ろから一人のおばあさんが慌てて走ってきた。


「コラお爺さん、またアンタは勝手に出歩いて、もうボケが始まってしまって……


すみませんね勇者様、さっさと帰りますよお爺さん‼」

 

俺が村長だと思っていた眼光の鋭い白髪の老人は今来たおばあさんに手を引かれて帰って行った


どうやら単なるボケ老人だったらしい。吹き付ける風がやたら冷たく感じる


俺の差し出した右手が行き場を失いどうしていいのやらわからなくなっていた


すると息を切らせた別の老人が俺の前にたどり着きニコリと微笑んだ。


「ハアハアハア、遅くなりまして、私がこの村の村長じゃ。よろしく勇者様」

 

遅せーよ、おかげで大恥かいたじゃねーか‼︎ていうかさっきの老人は何?


早くも波乱を予感させる展開、この後俺は運命という歯車に巻き込まれていくのである。


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