俺のパーティーメンバー
仕方がなく電話に出るとバルドがやや怒り気味に話し掛けてきた
〈何で切るんじゃ、お主の恥ずかしい発言に言及するつもりはないから安心せい
それで聖剣の使い方じゃがまずは正式な名前で呼びかける事。
ただし呼ぶ名前を五回間違えるとパスワードが変更されて使用できなくなるから気を付けろ
もしパスワードを忘れた場合、【レムりんマジ天使】と入力すればそれでオーケーじゃ〉
著しく世界観に合わない設定である。そもそも500年前に封印された聖剣のパスワードが【レムりんマジ天使】なんだよ……
もうこの爺さんにツッコむのも疲れたし時間もないので早速始めることにした。
「やり方はわかったけど、この聖剣の正式な名前を言わなきゃいけないのだろ?この聖剣の正式名ってなんだよ?」
〈聖剣エロガッパじゃ〉
「エロガッパ?何だそれは、ふざけているのか?普通聖剣ならもっとあるだろ⁉︎
エクスカリバーとかデュランダルとかそう言った感じのカッコいいのが
そんな糞ダサい名前の聖剣があってたまるか‼」
俺がそう言い放った瞬間、聖剣にちりばめられている数々の宝石が光り始めたのである
「おいバルドの爺さん、なんか今聖剣が光ったけどこれって発動の前兆か?」
〈いや、お主が名前を馬鹿にしたから怒ったのじゃ、聖剣エロガッパは中々に気難しいところがあるからの
一度へそを曲げると機嫌を直すのに苦労するぞ
前回も労働環境の改善と巨乳派か貧乳派か?で勇者と揉めてその山に引き籠ってしまったぐらいじゃ〉
何コイツ、封印とかじゃなくて自分でこの山に引き籠ったの⁉しかもその理由が果てしなくくだらない、どんな聖剣だよ
だが聖剣の力を使わない限りここからの脱出は難しい、今は何より聖剣の機嫌を直すところから始めるしかないのか……
「おいバルドさん、どうすれば機嫌が直るんだ?」
〈ひたすら謝るしかないのう。心からの謝罪、それ以外無いだろう
不倫問題で記者会見する俳優の謝罪動画でも見て参考にするがよい〉
ぐっ、何だよそれ。異世界まで来て最初のクエストが聖剣に謝罪とか聞いたことねーぞ?
しかしこのままでは……ええい仕方がない背に腹は代えられん
ここは耐えがたきを絶え、忍び難きを忍んで頭を下げるか。
俺は聖剣を元あった地面に突き刺し、それに向かって深々と頭を下げた。
「あの、聖剣エロガッパさん、先程は大変失礼いたしました。
心よりお詫びいたしますのでどうかご勘弁ください、スミマセンでした」
俺は素直に頭を下げた、そう俺は御免なさいが言える子なのである。
すると聖剣が再び光始めたのだ、おお〜事の経緯はともかく何となくそれっぽい
これは恐らく俺の謝罪を快く受け入れこれから共に戦っていこうというメッセージなのだろう
「バルドさん、聖剣がまた光始めたけど、これって和解したって事でいいんだよな?」
〈いや、それは直接交渉したいという意思の表れじゃ、聖剣を手にすれば直接会話ができるはず
それで聖剣の声を聞いてみるがよい〉
何だろう嫌な予感しかしないぞ?いかし四の五の言っている時間はない
俺はバルドに言われたように聖剣を手に取る、すると頭の中に直接語り掛けてくる声が聞こえたのだ
しかしその声は俺の想像の遥か斜め下をいく内容だったのである
〈誠意が足りないよ、誠意が‼︎これだから異世界に来るクズ人間はダメなんだよ
どうせアンタも引きこもりニートとか言われる類の社会の敗北者だろううが
それでもアンタは日本人なのだろ?だったら謝罪の仕方はわかっているな
そう土下座だよ、額を地面にこすりつけ心から謝罪しろ、それ以外は認めないからな‼〉
何だコイツ、殴ってやりたい。エロガッパとかいう糞ダサい名前の癖にやたら上から目線のDQNじゃねーか⁉
しかしこのままでは焼け死ぬのを待つだけである、俺はプライドをかなぐり捨て聖剣エロガッパに土下座した
時には目的の為に手段を択ばない非情な男、それが俺なのだ
「シンジ様は何をやっているのでしょうか?」
俺が聖剣を前にひたすら土下座し謝罪している光景を上空から見ていたサーラは首をかしげている
お願いだ、こんな俺の姿を見ないでくれ。
「シンジ様~早くしないと焼け死んでしまいますよ~、一体何をやっているのですか?」
その声に反応するかのように再び聖剣が光り始める、もう要領を理解した俺は聖剣を手に取ると
また頭に直接声が流れ込んで来た
〈今日のところはそれぐらいで勘弁してやる、今度から態度と言葉遣いには気を付けろよ
それと空にいる女の子、お前の知り合いか?中々可愛いな、今度俺を握ってくれないかと頼んでくれ〉
何だコイツ、本当のエロガッパじゃねーか⁉︎しかしそんなことを口にしたらまたスネるだけだしな
ヤレヤレここは俺が大人になろう。
「もちろんですよ、私にできる事であればどのような事でもいたしますので、はい」
俺はそう言ってやった、そして機嫌を直した聖剣を手にすると空に向かって聖剣をかかげた
一呼吸おいた後、上段から一気に剣を振り下ろす。
すると〈ゴオオーー〉という轟音と共に剣圧による突風が巻き起こり
ヴォルケレスト山の全体を覆っていた炎が一瞬で全て消し飛んだのだ。
凄え、やはり聖剣の力はハンパね~~ただのエロ馬鹿ではない
これからも信頼と友情をもって友好関係を築いていこうと心に誓った瞬間であった。
辺り一面に燃えていた炎が消し飛んだことで上空にいたワイバーンが下りてきた
心配そうな表情を浮かべているサーラがワイバーンを降りてこちらに駆け寄ってきたのだ
「大丈夫でしたか?心配しましたシンジ様」
いいね、実にいい。これぞ異世界ライフの醍醐味であろう
そんなささやかな幸福感を味わっている俺の頭にまた声が流れ込んできた
〈おい約束を忘れたのか?早くその子に俺の話をしろよ、このボケ‼〉
忘れていた。今となっては〈エロガッパ〉という名前がやたらしっくりくるこの聖剣の事を
「なあサーラ、これが伝説の聖剣だ凄いだろ、一度持ってみないか?」
俺はさりげなく聖剣エロガッパをサーラに差し出す、実に自然な流れだ、俺のプレゼン能力も中々のものである
しかしサーラは驚いた様子で慌てて首を振った
「そんな、私なんかがそんな凄い剣に触れるなど恐れ多いですよ‼」
困ったぞ、サーラが握ってくれないとまたエロガッパがスネるし……仕方がないここは作戦変更だ。
「なあサーラ、頼むからこの聖剣に触ってくれないか?この通りだ」
俺は再び頭を下げた、もう頭を下げることに何の抵抗もなくなったからである
ひたすら頭を下げ続ける勇者なんて聞いたことないけど、俺がその新しい道筋を作っていくと思えば何の躊躇も無かった
そう俺は時代の開拓者、パイオニアブレーヴとでも名乗ろうか。
「シンジ様がそこまでおっしゃるのでしたら……」
サーラは恐る恐る聖剣に触れ剣の柄の部分を握った
すると剣に埋め込まれている赤い宝石だけが激しく光り輝き点滅し始めたのだ
どうやらエロガッパ様には大変ご満足いただけたらしい。
「有難うサーラ、じゃあ城へ急ぐとするか」
「いえ、お礼を言われるような事では……しかし私の様な者が王宮に入るなど恐れ多いです‼」
恐縮しているサーラに優しく微笑みかける俺
「大丈夫だよ、サーラはもう俺の仲間なんだから。王女様は心優しき女性だしきっと君の事も認めてくれるさ
それにここだけの話だが俺の見立てでは王女様はかなり俺に好意を持っているようだしな」
俺は得意げに言い放った。少しだけ話を盛ったが概ね的外れではないと思う
そんな俺の言葉に驚きの表情を浮かべたサーラ、俺の事をマジマジと見つめる
「さすがですね、あの王女様の心を射止めるとは⁉シンジ様も隅に置けませんね」
「まあな、王女様は俺の事を意識しているせいか必要以上の事を話さないし
恥ずかしさからだろうけど俺とはあまり目を合わせようともしないのだよ
握手をしようと手を差し出しても照れて握手に応じてくれないしね
奥ゆかしいというか、とにかく照れ屋さんみたいだよ王女様は」
俺は爽やかにそう語った。何故かサーラは苦笑いを浮かべていたように見えたが気のせいだろう
こうして俺たちは王女の待つ城へと向かう。
「なあサーラ、俺たちはもうパーティーメンバーで仲間だ。だからいい加減そのシンジ様っての止めないか?」
「えっ、でも私は元々奴隷であり本来ご主人様と呼ばなくてはいけないところをシンジ様とお呼びしています
本来でしたらこれも失礼に当たるのに、これ以上は……」
「そんな事を気にする必要はないよ。君はもう奴隷じゃないんだから
俺の事はシンジと呼んでくれ、これは俺からの最初で最後の命令だ」
そんな俺の提案に少し困った顔を見せるサーラ
俺はあくまで仲間としてコミニケーションを取るために提案しているだけである
決して邪な気持ちがあっての事ではない事をここに宣言する。
〈この子はもう少し成長したらとてつもなく美人になるはずだから
今の内になるべく早く距離を縮めておきたいと思っているのだろう?〉
などという何の根拠もない邪推は止めていただこう。
俺は嘘偽りのない純粋な下心でそう発言したのだから。
「わかりました、シンジ……さん」
いきなりシンジと呼び捨てするのは抵抗がある様だ、まあいいだろう
今の時点であればこれも大きな前進であり美少女攻略ルートの第一歩と考えれば上々だ。
しかし俺はこのサーラという美少女の事を何も知らない
仲間となった以上彼女の事を理解しておかなければならないという使命感が俺を突き動かす。
「なあサーラ、君は何か特別な技とか術とか使えたりするのか?」
俺は紳士的な態度で問いかけた。まだ少女とはいえレディに対して
いきなり身長、体重、スリーサイズを聞くような野蛮人ではない。それは徐々に聞いていけばいいからだ。
「私ですか?私は盗賊のスキルを少々使えますが……」
「盗賊のスキルだって、それは凄いじゃないか⁉
ダンジョン攻略とか隠密行動とか罠の発見とかに役に立つはずだ
盗賊ってジョブ的に選択する人が少ないから貴重なんだよ‼」
そんな俺の言葉に、やや申し訳なさそうな表情を見せるサーラ。
「いえ、私が使えるのはそういうスキルではないのです……」
「どういう事?じゃあ君が使える技ってどういうモノなの?」
「ピッキングとか使えます、サムターン回しとか得意です‼」
明る咲顔でそう言い放ったサーラ。でもピッキングって……
それは盗賊というより単なる泥棒だよね?そもそもこの世界でサムターン回しって役に立つのか?
明らかに落胆した俺の表情を見て落ち込むサーラ
「すみませんシンジ……さん、やはり私ではお役に立てそうにないですね」
しまった、顔に出てしまっていたか⁉何という失態、俺は馬鹿か‼
いや、ここで訂正しよう俺は馬鹿ではない、まだ本気を出していないだけなのだ
しかしそんなことは今はどうでもいい、サーラを傷つけてしまった事の対処こそ緊急課題なのである。
「気にするなよ、サーラの技は必ずいつか役に立つ、俺はそう信じているよ」
俺は落ち込んでいるサーラの頭に手を乗せ優しく微笑みかけた。
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