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関係性の無い二人から聴いた同じ話

作者: 釣りカエル

二つのお話を一つにまとめて書いております。

お話を伺ったお二方は面識がありません。

個人的には導かれたと感じております。


専門学校の友人?Oから聴いた話



専門学校の教室で授業の開始を待っていた。

始まる寸前に入ってきたOが隣に座り、興奮して話しかけてきた。


O「〇〇病院って知ってる?」


当時、オカルト好きであれば確実知っている。

関東某所の廃病院、ビックネームだった。


あー、名前だけは知ってる。


Oはニヤニヤしながら話し続けた。


授業はすでに始まっており、担当教員が呆れた目でこちらを見ていた。


Oを含めてカップル四組が車二台に分かれて、真夜中の廃病院に到着した。車の中ではMDに入れた流行曲を大音量でかけ、笑い合っていたが、真っ暗闇の中、鉄板フェンスに囲まれた病院の貫禄には流石に気圧されたそうだ。


O「彼女も『ここヤバくない』って顔が引き攣っててさ、俺もここはヤバイってスゲー寒けしてた。」


片道一時間も掛けて着たのに、入らずに帰るのはさすがいやだったらしく、女性陣の抗議をいなして、宥めながら入っていった。


女性陣は常にキャーキャー騒ぎ、男性陣はスゲー、ヤベーと騒ぎ、想像以上にゴミが散らばり、病院設備がしっかり残っている中を、目的の場所に向かい進んでいった。


この病院には数々の逸話があるが、特に危険とされていたのが、地下にあると噂される霊安室だ。


噂に聞く廃病院は、大抵地下に霊安室がある。そこがヤバイ、鉄板中の鉄板ではあるが、この病院の特徴は、院内の至る所に落書きあるのに、地下に続く防火扉と階段は一切落書きが無いのだという。単純に落書きすると死ぬとされていた。


道半ばまで進んだ時、『バーーーン!!!』と重い扉が勢いよく閉まる音が響いた。当然女性陣は大絶叫し、男性陣も悲鳴を上げた。何が起こったのか判らず、その場から動けなかった。


数分間が経ち落ち着き取り戻しつつあった彼らだが、一人が『風?』と呟いた時、『バーーーン!!!』と追い討ちを掛けられた。再び絶叫と悲鳴が上がり、遂に女の子の一人が腰砕け状態になり、へたり込み泣き始めた。


泣き続ける子を彼氏とOの彼女が『大丈夫だよ』と励まし、Oともう一組のカップル(以降Aカップル)以外は完全に戦意喪失していた。帰ろうコールが始まった。OとAカップルは音の正体を確かめに行くと、別行動をすることを提案し、だいぶ揉めたが強行した。


数分間隔で音は鳴り、その方向へ彼らは進み続けた。二本の懐中電灯を頼りに、暗闇の中に三人の足音だけが響く、恐怖心は膨れ上がっていった。


『バーーーン!!!』


音はすぐ近くだ。


曲がり角の先に懐中電灯の灯りを向けた時、一直線に伸びる廊下の途中、ゆっくりと開いていく扉が見えた。その扉の表面には全く落書きが無かった。


O「血の気がひくって言うじゃん。風も無いし、誰も触って無いのにさ、勝手に開いてくんだよ。」


扉は全開になる少し前で止まった。三人はもう動けなかった。


完全に沈黙した男二人。Aの彼女は『ムリー!ムリー!もう帰ろう!!』と泣きながら騒いでいる。ただ、三人ともその扉から眼が離せ無かった。


騒いでいたAの彼女が息を呑む。


『バーーーン!!!』


扉は勢いよく閉まった。

Aの彼女が悲鳴を上げて走り出した。

男二人もパニック状態になり走り出した。


どこをどう走ったのか記憶にないらしいが、無事に三人は病院を出て、車までたどり着き仲間と合流した。

涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃに濡らし嗚咽をあげるAの彼女、その場でへたり込み、息を荒げる男二人。

何かを察して、仲間は訳を聴かず、三人が落ち着くように介抱に徹していた。


男二人は呼吸が整い、飲み物をがぶ飲みしている。

Aの彼女は塗れた顔をティッシュで拭きあげられて、片側の眉毛が半分程なくなるまでメイクが落ちていた。


『あのでぇなんだぁっだのぉ?!』


彼女はOと彼氏を睨みつけるようにして叫んだ。

涙声で内容が聴き取れず、彼氏は聴き返した。


『あの手ぇ、なんだったのぉ!!』


切れ気味に彼女は叫ぶ。

彼氏には心当たりが無く、Oに目で助けを求める。

Oも心当たりが無く、視線そらして沈黙を守った。


Aの彼女曰く、扉が開いた後に、部屋?の中から白い手が伸びてきて、扉を掴むと勢いよく閉めたそうだ。


男二人は全くそんな物を見ていない。

ただ、まだ嗚咽上げ続けている彼女が、嘘を言っているようにはどうしても思えなかった。


O「昨日の夜の話、ヤバいべ!」


話終わっても興奮が収まらない様子でニヤニヤしている。

目の下に隈があり、徹夜でナチュラルハイになっているようだ。




バイトの先輩Wさんから聴いた話



バイトの男性用休憩室でとある雑誌を黙々と読んでいた。


Oから話を聴き三日が経った。件の廃病院には行った事が無かった。扉の閉まる音がする・勝手に閉まる扉は見聞きした事があった。


ただ、白い手については、この病院の話として聴いた事が無かった。当時のインターネットでも、検索すればある程度情報は集められるが、オカルトのサイトは圧倒的に少なく、満足な結果が得られず。記憶を頼りにあの病院の特集が組まれた雑誌を古本屋て探し回って、なんとか手に入れた。


S「おつかれー」

Wさん「おつかれ」


バイト仲間の同学年Sと先輩Wさんが挨拶と共に入ってきた。


おつかれさまでーす


S「ちょっと、何読んでるの?」


ニヤニヤしている。

明らかに雑誌サイズなのに、ガバーを付けて読んでいる。

18禁の雑誌と間違われたようだ。


専門学校でちょっとあって、専門誌でお勉強。

(何も嘘はついていない)


S「さっすが!親分!!真っ面目ー!!」

感心したように笑っている。


Wさんは二人のやり取りをニコニコしながら見て、私の隣に腰を下ろす。Sは向かいに座った。


Sはズボンから、当時圧倒的に人気のあった二つ折携帯を出して、メールを始める。

Wさんはテレビを見ながら菓子パンを食べる。

私も雑誌に目を戻した。


Wさん「あ」


雑誌から目を上げるとWさんと目が合った。


どうかしました?


Wさん「〇〇病院しってる?」


流石に驚いて目を見開いてしまった。


雑誌は誰からも中身が見えない用に注意して観ていた。

Oから話を聴き、今日何とか手に入れた特集が載っている雑誌を読んでいる時に…。


間違い無く運命だ。


鼓動が高鳴るのを感じながら、お話を伺った。


Wさんは友人に誘われてカップル3組、六人で病院に向かった。細かい違いはあるがほぼ同じ内容であった。


件の病院内で突然する扉の音、パニック状態になった時、Wさんの友人Aさんが『動くな!!』と皆を一喝して落ち着かせた。


一度病院を出て、女性陣と警護の男一人を残し、WさんとAさんは再突入した。


二人は程なく件の扉を見つけた。やはり勝手に開いていたそうである。


二人で扉をくまなく調べる。

鉄製、男でも片手で動かすと重いと感じる扉である。

歪みなども無く、勝手に動く道理が無かった。


次に室内を確認する。

噂と違い階段は無かったが、他の部屋と比べようも無いほど綺麗だった。

ただ、この部屋だけ異臭がする。

汚水の臭いがどこかから漏れているようだった。

臭いの元を探しまわる。

用途の判らない機材が積み上げられた壁に、扉が在ることに気がついた。

明らかに人為的に隠そうとしている。

開けられないように機材が置いてある。


ここで二人は怖くなり、撤退をすることにした。


二人は扉を閉めて歩き始めた。

不意にあの汚水の臭いがした。

振り返ると扉が開いている。

開いた気配は感じ無かった。


二人が観ている目の前で扉は勢いよく閉った。


Wさんは小さく悲鳴を上げ、思わずAさんに顔を向ける。

Aさんは険しい表情で扉を見ていた。


『帰ろう』


Aさんが呟き、二人は足早に帰った。


S「やめてくださいよ!そーゆーの苦手なんすから!」


いつの間にか一緒に聴いていたSが、泣きそうな顔で叫んだ。


Wさんはいつも通りニコニコしながら容赦なく話を続けた。


Wさん「昨日さ、車で待ってた友達が、男だけで昼間にもう一度行かないか?って、話してきたんだ。」


Wさんも昼間であれば、もう一度行ってもいいと考えた。


すぐにAさんに電話した。


Wさん『…って、話しなんだけど、どうする?』


Aさん『行かない。あそこにはもう行かない方がいい。』


即答で断られた。


Wさんは心当たりがあった。


Aさんはたまに「観えてしまう」人なのだ。


Wさん「だから、聞いてみたんだよ。『扉が閉まったときに、何か観えたの?』って」


白い手ですか?


Wさんは私の言葉に少し驚いていた。


Wさん「観たことあるの?!」


いえ…なんとなく。


Wさん「さっすが!親分!!」


場を和ますように、戯けてSの真似をする。


Sも私もつられて笑ってしまう。


Wさん「あいつが言うには『白い服を着た何か』だって話。」


Aさん『『アレ』が見えるだけならいいんだけど、あの扉、相当重かっただろ?その扉があんなに勢いよく閉まるわけだよ。物理的に干渉してるって事だろ?』


あの時、Aさんが険しい顔をしていた理由がわかり、Wさんは鳥肌が立ち始めた。


Aさん『あの勢いで閉まる扉に頭でも挟まれたらさ、最悪死ぬよね。『アレ』は流石に怖いよね。』


私は、Aさんの言葉に感銘を受けた。目を瞑り、腕を組み、余韻に浸っていた。


目を開けると、心が死んだSが耳を塞ぎ机に突っ伏していた。


隣のWさんはいつも通りニコニコしていた。


件の廃病院は既に取り壊されている。


ひととなり。


O


専門学校時代の友達?

イケメンですが女癖が悪い。

以上



Wさん


バイトの先輩

いつもニコニコしているイケメン。

公私共にお世話になりました。

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