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「それで、レクト君はここに留まってどうしたいの?さっきの化け物みたいなのにまた襲われてもいい訳?」
ルカさんが問い掛けてくる。
化け物のことを思い出すと、恐ろしさで体が震えた。
「こいつも言ってたけど俺も君がここに留まるのは反対かなー」
「えっ?!」
「だってレクト君、ひょろひょろでこんなとこに居たらすぐ死にそうだし…ここは生者が居て良いような場所じゃないのは俺達を見たら分かるだろ?」
ひょろひょろと言われて思いっきりショックを受けた。いや…まぁ、運動もしてないし見た目が弱そうだというのは自覚しているんだけれど…
「……でも…」
「どちらにしろ、少年に選択肢は無い。夜が明けたら出口まで連れて行く」
軍人さんが焚き火のそばにどかりと腰を下ろした。
帰りたくない。でも、ここに居ても化け物が……
外側にも内側にも、僕の居場所は無いんだろうか。
俯いたレクト君も、相棒と同様に焚き火を囲むように座り込んだ。
これで一通りの話し合いは終わったと見て良いだろう、と俺も相棒の近くに座る。
レクト君はなにかを考え込んで俯いたまま、相棒はその様子をじっと見て動かない。
帰りたくないというのは思春期に良くある傾向だし、自分にも覚えがあるので理解できなくは無いが子供のわがままで留まらせて良いような場所じゃないのも事実だ。
そんな彼等をずっと見ている気分でも無く、何となしに空を見上げた。
空は黒く、焚き火以外の光が無い世界では星が良く見える―――――
ぐうぅ…
「……なんだ今の音」
「狼でも出たか?」
謎の音が響き、俺達は辺りを見回す。
相棒のお陰で焚き火周りは特に危険は無いが、今は生者が傍に居る。保護した身としても守らなければならない………
「す、すみません…僕の、お腹の音です……」
ああ、なるほどお腹の音かぁ…死んでからもうずっと聞いてなかったので思い当たらなかったなぁと思いながら声のした方を見る。
レクト君が恥ずかしげに手を挙げていた。
いやいや、そんな顔しなくても…ごめんって…