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白い世界

 今日も、俺と同世代の沢山の人が目的を持ち、歩いている。

 仕事、友達、家族、恋人、学校。

 何か目的を持たないと、人間は外に出ない。

 なら、俺はどうして、今外にいるんだろうか。

 昼の公園で一人でベンチに座っている、男・25歳・無職である西条索人(さいじょうさくと)は己の人生に明け暮れていた。

 そこそこの大学に入学して、当たり障りなく大学生活を送り、就活をしたものの内定は貰えなかった。そのまま、大学を卒業してアルバイトをしながら就活浪人をして、念願の内定を貰ったものも、職場の環境に馴染めず退職。そして、また就活をしても、24歳・無経歴の索人を採用してくれる企業はどこにもなかった。

「俺の人生、どこから狂ったんだろうな。」

 今頃、自分の友人らは懸命に仕事をしながら、大学在学中にできた借金を返済したり、家庭を築いている者もいたり、親に恩返しをしている者もいる。

 そういう連絡を受けると、現在の自分の姿が惨めになっていく。現在は同窓会の誘いも、何らかの言い訳をして断っている状況だ。

「もう、疲れたよ。」

 最近になり、極端な選択を強いろうとする自分に出会う。

 索人は自分のズボンの右ポケットに手を入れて、全財産を確認する。

「1200円かぁ。」

 最後に人生を逆転しようと近所の駅前にできたパチンコ屋に入った。

 座ってタバコを吸いながらスロットをひたすら回す。

 最初は勝っていたものの、どんどん負けていき、気付けば全てのパチンコ玉と現金を失っていた。

 パチンコ屋を出ると、すっかり暗くなり、駅からは仕事帰りの人たちが早足でどこかに向かっている。

「あの人達には目的があるんだろうな・・・、なのに俺は・・・。」

 そう思いながら、索人は下を向いて帰路についた。

 そんな折、一瞬だった。

 自分の身体の右側から強い衝撃が走った。

 そして、意識を持ち直すと索人は道路に倒れていた。

 誰かが自分に向かって走ってきている。

「あ・・・、俺・・・、死ぬのか。つまらねぇ人生だったなぁ。」

 そうやって、徐々に索人の意識は遠のいていった。


「おーい」

 誰かが俺を呼んでいる。

「おーい。サイジョーサクトくーん。」

「はっ。」

 意識を持ち直すと、そこは真っ白な世界だった。

「やっと、目を覚ましたか。」

 どこからか中性的な声が聞こえたが、誰が話しているのかは分からなかった。まるで全ての方向から俺に話しかけているようだ。

「こ、、ここは?」

「それは質問かね?、そうだね、ここを何と表現したら良いのだろうか。死後の世界?、違う。天国?それも違うな、うーん。」

「だ、誰ですか?」

「僕は・・、なんだろうな。」

 索人は困惑していた。

 そして、自分の記憶を辿った。たしか、車に轢かれて意識を失った記憶があった。そして一つの質問を思いついた。

「俺は死んだのですか?」

「その質問には答えれそうだ。現在、サイジョーサクトくんは死ぬ直前だよ。」

「なら、あなたは神様?」

「それは違うね。僕はそんな存在では無いよ。」

「どうして、俺をここに呼んだんだ?もしかして異世界に転生でもするんですか?」

 それを聞くと何かは大きく笑った。

「ハッハッハ!そんなのある訳ないだろ!死んだら死ぬだけだよ。死んだ後にどうなるか僕が分かるわけないじゃん!」

「なら、俺はどうしてここにいるんですか?」

「タイミング良く、君が死にかけたからだね。」

「どういうことですか?」

「サイジョーサクトくん、人生はタイミングなのだよ。君はタイミング良く死にかけたから、ここに来た。そしてこれは世界の理だ。君には選択の余地はない。」

「ど・・・、どういうことですか!?」

「そろそろ、元の世界に戻ってもらうよ。じゃあね。」

 そう言うと、白い世界は突然黒くなり、俺は気を失った。


 目を覚ますと、白い天井が見えた。

「あ、病院か」

 意識もはっきりしている。自分がベッドで倒れているのが分かった。ピーっと音がなり、しばらくすると看護師と父と母がやってきた。

「索人!」

 目を丸くして驚いた顔で俺を見ていた。久し振りに会った両親の目は充血していた。きっと、泣いていたのだろう。不甲斐ない俺の為に泣いていた親を想像すると、自分まで泣けてきた。そして、俺は

「父さん、母さん・・、ごめん。」

 そう一言、話して母さんの手を握った。

 そして同時に、俺は自分の身体が何かおかしいことに気付いた。

頑張ります。

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