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渡さない


──────烈士団本部。



人間達が支配するこちらの世界と魔物達が支配するあちらの世界。

その間に帯のように横たわる境目には絶え間ない嵐が続いており、凶暴な魔獣・ドラゴンの住処となっている。


境目には一部分だけ、嵐が途切れている小さなスポットがある。

そこにぽつんと存在する地図にも示されていない断崖絶壁の孤島……


そこに烈士団の本部が置かれていた。





優秀な魔導師しか入れない烈士団の中でも、さらに凄腕の魔導師達が本部の団員として集結されている。


烈士団の主な仕事は魔物退治……


魔物の存在は一般の人々には公表されてはいない。よって、烈士団は秘密組織だ。




ここ最近、人間界で悪さをする魔物が増えてきた。

理由は明確だ。

人間達の魔力が50年ほど前から急速に弱まってきているからだ。


そんな中、本部を揺るがすような情報が流れ込んできた。




死んだとされていた魔女が生きていたと─────











「まほろばさん!」



私の名を呼び、興奮しながら駆け寄ってくる若い男が視界の端に見えた。

以前一緒に魔物退治に出かけた奴だったか……

名前は覚えていない。覚える必要がない。



「まほろばさんは聞きましたか?メタリカーナ国のコビーナ村で魔女が現れたって。」

「どうやらそうらしいね。私も先ほど噂で聞いたよ。」



人間共の情報の遅さには心底呆れる。

大体10年前に魔女が死んだと結論付けられていたこと自体がおかしいのだ。


「コビーナ村で火山が噴火したとなってますが忘却魔法による記憶のすり替えだったらしいですよ。たまたま居合わせた新聞記者が漏らしていた情報によると、なんとドラゴンが現れたようでそれを退治したのが……」


ペラペラと無駄によく喋る男だ。

話しかけてくるなら要点を整理してからにしろ。




あの日助けた白雪姫に襲われていた女─────

私があの場に居合わせたのは偶然では無い。

長い間休業状態だったメタリカーナの支部が再建したと聞き、様子を伺いに行ったのだ。

やはりテンチムの動向を見張っていたのは正解だった。


私は鼻が利く。


あの女の匂い……

一度嗅いだことのあるあの匂いだ。



意外だったのはツクモが魔女のそばにいたことだ。

ツクモのあの鼻につく匂いだけは四百年経とうが間違えようがない。

恐らくテンチムの下に就いた団員はあの二人……


……ツクモ……

どこまでも目障りな存在だ。




「近々、魔女狩りが行われるらしいですよ。」

「……魔女狩り?潜伏場所まではまだ分かっていないのだろ?」


「ええ、でも魔女が生きてたんですよ?すぐに見つけて退治しないと危険です!」



相変わらず自分達の都合の良いように歴史をねじ曲げているのだな。

魔女が極悪非道で超危険な魔物だなんて教えは下っ端の団員に対する表向きの大義名分だ。

本当は魔女を生け捕りにして骨の髄まで利用したいだけのくせに……



ノロマな幹部の連中はまだ目撃証言のみで正確な居場所までは把握出来ていない。

相手はあのテンチムだ。そう簡単には尻尾を掴ませないだろう……



仕方がない。

私がエサでも撒いてやるか……




やっと見つけたんだ。

烈士団には決して渡さない。

ツクモを利用し、あの魔女を手に入れる。






魔女は私のものだ───────────
















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