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特にプロットなどはありません。

 昔々のその昔。

 寂しがり屋な魔王と独りの優しい勇者がおりました。


 寂しがり屋な魔王は、沢山の魔族達の女王として暮らしていましたが、彼女は世界を知りません。

 独りの優しい勇者は、人々を助けながら世界を旅していましたが、友達というモノを知りません。


 そんなある日の事です。勇者と魔王は出会いました。


「私は人間というモノを初めて見た。どうだ、私と友達にならないか?」


「僕は友達という言葉を初めて向けられた。どうだろう、僕の旅の話を聞いてくれないかい?」


 二人が出会ったのは偶然で、二人が仲良くなるのに時間は掛かりませんでした。


 世界を知らない魔王は、自分の知らない事ばかり話す勇者の話が楽しくて仕方がありません。

 友達を知らない勇者は、他人に自分の事を話すという初めての体験に、少しだけ恥ずかしさを覚えます。


 沢山の事を知る魔王と沢山の事を話す勇者。二人が二人だけの時間を楽しむ機会は増えていきました。

 その事は、自然と噂話として広まっていきました。二人もそれを隠そうとは思っていなかったので、二人には問題のない事です。


 魔王と勇者が仲良くしている噂が流れ流れたある日の事。


「あぁ!魔王様は人間に誑かされ、魔族を捨てようとしている!」


「これはいけない!勇者様を魔族が罠に嵌めようとしている!」


 いつしかそんな噂が広まり始めたのです。


 二人はそれぞれの誤解を解こうと言いました。


「彼は私の友達だ。沢山の事を教えてくれる とても大切な友達だ」


「彼女は僕の友達だ。僕の話を聞いてくれる とても大切な友達だ」


 しかしその声は、誰にも届きませんでした。

 勇者と魔王以外には届きませんでした。


 とてもとても悲しい事に、勇者は魔族に、魔王は人間に追われる身となってしまったのです。

 姿を隠し、名前を変えて、誤解を解く為に二人は世界を巡りました。


 それでも不思議と魔王は寂しくありません。沢山の事を知っている勇者は、いつでも自分の手を引いて沢山の事を教えてくれました。

 勇者も不思議と旅が楽しくて仕方ありません。握る手が隣にある旅が、こんなにも楽しい事を知ったからです。


「勇者は本当に物知りだ。いつも私の知らない事を教えてくれる」


「魔王は僕に教えてくれた。こんなにも楽しい旅がある事を」


 二人は知りました。二人とも知らなかった『愛』を知りました。ところが、世界は二人の『愛』を許しませんでした。

 魔族は勇者を、人間は魔王を。それはいつしか、魔族は人間の、人間は魔族の敵となってしまっていたのです。


 そして――勇者が討たれました。


 勇者の死に魔王は悲しみ、嘆き、憂いに沈み、初めて『憎しみ』を知ってしまいました。

 そんな魔王に側近は言います。


「魔王様、今こそ人間共を倒すべきです!」


 側近の言葉に魔王は首を横に振り、答えました。


「それはいけない事だ」


 勇者が語る世界は美しく、勇者と共に見た世界は輝いていた。どれだけ憎しみを抱えても、魔王は決して人間に危害を加えようとはしません。それは魔王の願いだったのですが、長くは続きませんでした。


 次は魔王が居なくなってしまいました。


「魔王様は人間に殺された」


 その噂は、またたく間に魔族に広がり、魔王を慕い愛していた魔族は武器を手に取ります。取ってしまいます。

 ここから長きに渡る魔族と人間の戦いが始まりました。


 かつて魔王を慕った側近は魔王と名乗り魔族を率いて、かつて勇者に助けられた者達が軍となり彼の心を掲げて。


 長く長く続く争いの中、世界に光が生まれました。劣勢だった人間達に差す光。

 その光は、強く、明るく、とても優しい光。いつしか彼は『勇者』と呼ばれる存在になりました。


 多くの人々の前で、人間の王様は勇者に言います。


「魔王を、魔族を倒して欲しい」


 勇者は小さく頷きました。


 光差すその姿は、まるで神様の様に神々しく人々を勇気づけました。人々は皆、勇者を応援し、協力し、沢山の願いを込めて勇者を導きます。

 勇者も人々の願いを背に、人間を導きます。


 戦いが続いたある日、勇者の前に一人の小さな子供が現れ問いました。


「勇者様は、どうして戦うの?」


 その言葉に勇者は優しく力強く答えました。


「もう一度、魔族と手を取り合う為に戦うんだ」


 昔々のその昔。これは勇者の旅立ちのお話。


------


「っと、今日はここまでだ。もう遅いから寝なさい」


「えー!もうちょっと、もうちょっとだけいいでしょお父さん!」


「また明日な。ほら、お母さんも眠そうだ」


 父と母の間で話を聞いていた男の子は、父の言葉に頬を膨らませながらも目を閉じる。

 それを見た父親は読んでいた本を置いてテーブルランプを消し、うつらうつらしている嫁と、ふてくされている息子にしっかりと布団を被せて横になった。


「お父さん、僕は勇者になりたいな!そして、皆を助けたい!」


「ハハハ!その時は、父さんも手伝ってあげないとな!」


「お父さんも僕が助けてあげるんだ! もちろん、お母さんも!」


「あらあら、もうお父さんよりも頼もしいわね」


「何をっ!父さんも負けないぞー」


 三人は笑いながら目を閉じると、すぐに小さな寝息が聞こえてきた。


「あなた、明日は?」


「あぁ、最近は魔物も魔族も活発だからな。明日も村長に村周辺の警戒を頼まれているよ」


「あまり無理をしないでね?」


「大丈夫さ。この辺は、出てもイノシシぐらいだからな」


 隣で眠る小さな寝顔を見ながら答えた瞬間――淡くも力強い光が男の子を包む。

 その事に、父親は驚愕に表情を染め、母親も突然の事に唖然とする他できなかった。



 この日、世界に新たな光が生まれた。



---

--


 場所は変わり、小さな村の外れ。森の中にポツンと建つ一軒家では、室内にも関わらずローブを纏い、深々とフードを被った人物が読書をしていた。

 先日村に出向いた時、たまたま来ていた行商人から購入した本。良くも悪くも普通の本だが、フードの人物はゆっくりと目を走らせて読んでいる。すると、窓際に座っていたためか、視界の端に光が見えた。


「おや……もう、そんな時期ですか」


 遠くに映る光の柱は、夜を照らし、世界を照らす。ひとしきり輝いた光の柱は徐々に収まり、また夜の帳が下りてきた。


「さてさて、新しい勇者様はどんな物語を紡ぐのか」


 一人呟きながら立ち上がり、ローブのシワを伸ばして隣の部屋の扉を開けた。

一ページ辺りの文字数などは決めていません。長い時は長く、短い時は極端に短くなったりすると思います。


読みづらく、未熟な部分も多いですが、これからよろしくおねがいします。

不定期更新です。

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