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僕は妹をMAZyOにした  作者: 赤雪 妖
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第25話 凄い話し

「ミッキ。遅くなって済まなかったが、お誕生日お目出度う。これからは世界に目を向け、国の行く末も考えることができる人になってほしい。何時も言っている事だが、お前が家族で存在してくれている事が、パパは何より嬉しい。美月がどんな美月でも、美月がいるからパパは頑張れる。だからこれからも健やかでいることが君の努めだ」

 和子に蝋燭を渡す。

「みっちゃん。十八歳お目出度う。でもね、無理にけじめなんかつけないで、急がなくて良いから今を大事に楽しく生きてちょうだい。あなたが幾つになってもママに甘えていいのよ」

美月がいつのまにか大人になっている事に気付き、嬉しいのと同時に淋しさも感じると言って、座った。

 啓子が立った。

啓子は、こんな美人の妹が二人もできたことを感謝しなさいと陽介に絡みつつ、美月には幾つになっても姉を敬えと強調した。

「陽介さん。私達が妹だったのがお気の毒だわ。他人だったら彼女にでもなってあげられたのに。結構好みなんだけどな」

 最後はまた陽介をからかうように笑って陽介に蝋燭を渡し着席した。


 陽介は、可愛い妹が出来て嬉しいと、二人の美しさを無難な形で褒めておき、自分が存在していることだけを覚えていてくれたらそれでいいと、暗に高木家の家族とは今後の接触が無いことを匂わせて燭台を持ったまま着席した。

 美月が立ち上がり、父と姉に感謝の贈り物をした。

「パパには銀のキーホルダー。啓子ねえには約束してた化粧ポーチです」

 最後に陽介から蝋燭を受け取り一礼する。

「ママと陽介お兄様にはもう言ったので、パパと啓子ねえに。美月はおかげさまで十八になりました。これまで育てて頂いて本当に有り難う御座いました。美月はパパとママの子供で居られた事が、本当に幸せでした。まだ何の力も無くてご恩返しも出来ませんが、今はただそのことに感謝して、いつか必ずご恩に報いたいと思います」

 頭を下げた動きに、シルクの薄いスカーフが襟から滑って、ろうそくの火を揺らした。

 陽介は落ちるスカーフを掴みながら、揺れる美月のシルエットを見て、ドレスの下に拘束具を着けていることを知った。

 高木は美月の言葉に驚いた顔で和子を見る。

 和子は自分と同じ反応をする高木を見て、可笑しそうに笑いながら首を横に振り、高木の反応を否定した。

「特にパパ。今回は陽介お兄様をご招待して下さった事をとても感謝しています。嬉しかったわ。例え一緒に住まなくても大事な人の存在を知ることができました」

「ミッキ。そう言ってくれるとパパは本当に嬉しい。啓子も聴いてほしいのだがね。陽介さんについて、今日は今からお前達に大事な話がある」と言って皆の顔を見回した。


高木は照明のスイッチを入れ、ろうそくを消す。

「その前に乾杯しようか。今日はミッキも飲みなさい」 

「はい。頂きます」

 高木は、全員のグラスにワインが充たされたことを確認し、

「では、ミッキの誕生日と陽介さんを迎えた記念すべき今日を祝して」

 高木は乾杯の音頭をとり、拍手した。


「ママの料理を楽しみながら聞いてくれ」

高木は料理に手間を掛けた和子への配慮も忘れなかった。

「さて……。知っているとおり陽介さんはママの子供でお前達のお兄さんになる。お父上の大介君と私は、大学時代からの大親友だった。だがそれよりも大事なことは、日本のエネルギー問題に一石を投じるための、今後の私の重要な戦略パートナーになって頂きたいと思ってご招待した人だということだ」


 居候が一人増えた。その程度に思っていた啓子にとっては驚きの高木の発言だった。

「パパの戦略パートナー!……陽介さんが?」 

 驚きは美月も同じだ。「ママ、そんなこと全然言ってなかったじゃない」

 和子は美月に頷き返す。

「ママもさっき知ったの。なんだかすごいお話になっているのよ」

「いや、僕自身では無く、僕がもっている父の特許が。ということなので。第一、僕は父の特許の詳しい事が何も解ってないから」

「そのことを説明したくてこの席を借りることにした。食事をしながらお前達にも聞いて貰いたい。美月には済まないが……」

「いいえ。大丈夫。パーティなら昨日もしたわ」

 美月が顔を横に振る。

 高木がワインを陽介のグラスに注ぎ、自らのグラスにも充たすと一口飲んだ。

「パパはこれから日本経済に関わるエネルギーの大事業を始めようと思う。これは陽介さんの父上と私が学生時代から描いていた夢だ。私が今まで働いてきたのはこのためだと言っても過言では無い」

「待ってパパ」

 啓子が遮った。

「どんなやりかたをするにしても、資源が無い日本ではエネルギー資源は輸入するしかないわ。今の事業に比べたら、利益が下がるに決まってる。反対だわ」

 啓子は将来的には高木の経営するどの部門かに就職するつもりなので、リスクを抱えたくは無い。

「まあ、聞きなさい。輸入はしない。ガスハイドレート、又はメタンハイドレートという言葉を聞いた事があるかな?。日本近海にはかなりの量が存在しているが、それは水分子の枠にメタンなどの天然ガスが詰まった物で海底に氷の状態で存在している」

「ガスが氷の状態で?」啓子が聞き返す。

 美月は「大量にあるなら火力発電に使えるのかしら」と陽介を見る。

「まあ……ね。氷の状態なのは水圧のためだ。大体は千メートルほどの海底にある。だから採取する事が極めて難しいし、熱量もそれ程ではないと聞いているけどね」

 その程度の知識は陽介にもあった。


 特許はガスハイドレートの採取に関するものだ。


「そこでだ。陽介さんの父上が考えた採掘方法だ。簡単に言うと、お釜を逆さまにして、底にパイプをつけたようなものを上から下ろしてガスハイドレートの氷柱の上に被せる。そうして空気穴を通して水圧を減圧する。圧力が下がれば氷は気化するから、ガスはパイプを通り地表に上昇する。これが基本原理だ」

 高木は「細部を理解する必要はない」と言いつつ、一気に説明を続ける。


「圧力をコントロールすることで、採取速度の調整が可能だ。シャーベットか液体にするか。メタンを抽出する量と速度で選ぶ事も可能だ。それを筏に乗せたガスタンクに次々と保存していく。実はその接続部に使うエバポレーターと言われる部位の構造とコントロールする弁こそが最重要な部分で大介君の神髄といえる部分だ。その他にもハイドレートから真水を抽出するなどの海水を処理する技術も含む大プラントが必要になるが、陽介さんの持つ特許にはその設備が関連して稼働するように特殊なリンケージが考案されている」


「それで、実際に採算が取れるとお考えですか」

 陽介が訊ねた。全てはそれが決め手になる。


「最大の問題は石油燃料と違い、採掘場所を移動しなければならないという事に尽きます。大介君も実にその事で腐心しておられて、一度に採取できる本数、氷柱間の距離など、効率化のための地図データーを作ったり、弁の材質を開発した」


 美月が二杯目のグラスを空けた。

 高木が声を掛ける。

「ミッキ、随分と飲み慣れているようだが、大丈夫かな」

「飲み慣れてはいません。練習はしたけど。でも保護者の許可付きよ」

 和子と顔を見合わせて「ふふっ」と笑い、

「それで、何故石油は移動せずに、ガスハイドレードは移動するの?それに陽にいが言った熱量は大丈夫なのかしら」

 陽介と高木を交互に見て質問した。


 陽介が「僕が」と高木に食事を勧め、代わって説明する。

「石油は液体だから、一度掘り当てて井戸を作れば、地下に走っている油脈を伝ってそこに流れて集まってくる。だから移動しなくても良いんだ。でもガスハイドレートは広範囲に分散して存在していて、拾い集めるイメージだから採取すればそこには無くなる。だから次の場所に移動しなければいけないだろ。コストを下げるために大型のプラントを作れば、今度は移動するための手間暇が費用を押し上げる事になる」


「そのとおりなんだよ。だから正直、採算が取れるかという質問にはイエスとは言い難い部分がある。熱量は消費率と密接な関係があるから、此処では答えないでおくが」

 高木は眉間を揉みながら、

「大介君の特許を使っても3年は赤字を覚悟しなければいけないだろうな。会議でも猛烈な反対意見が出るだろう。だがやらなければいけない。啓子も言ったが日本にはエネルギー資源が無いのだから」

 ……全ての事業はこのために展開してきたのだから……。

 高木の呟きは誰にも覆すことができない強い決意を持っていた。

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