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五・契約

 あたし、リンフォードさん、シンシアさん、ヴィンスの四人は、シンシアさんの家から少し歩いたところの路地裏にある小屋へとやって来た。

 小屋の前でリンフォードさんが足を止め、あたし達の方を振り返る。


「ヴィンスとシンシアはここで待っておれ」

「「はい」」

「アカリは我と一緒に来るのじゃ」

「……うん」


 リンフォードさんは、小屋の扉を開け、中へと入っていく。あたしも、リンフォードさんの後に続いた。

 小屋の中は狭く、物は何も置いていない。

 床の中央には、魔法陣が描かれていた。


「アカリ、この魔法陣の上に乗るのじゃ」

「う、うん」


 あたしとリンフォードさんは、魔法陣の上に立つ。

 そして、リンフォードさんが何やら呪文のような言葉を口にすると、魔法陣からまばゆい光が放たれ、思わずあたしは目をつむった。

 しばらくして目を開けるとーーそこは、知らない場所だった。


「あ、れ? ここは……?」

「首都アリソンの中心に位置する、守護者が集う城じゃ」

「城……って、ええっ!?」

「そう大声を出すでない。不審者だと思われるぞ」

「だ、だって……」


 城と言えば、王族やお金持ちなどの偉い人がいる場所で、あたしみたいなただの小娘がそう簡単に入れるような場所ではないというイメージがあるんだけど。


「ほれ、行くぞ」


 リンフォードさんは、あたしを置いて部屋を出て行こうとする。


「あ、待って!」


 あたしは、慌ててリンフォードさんの後を追った。

 魔法陣のあった部屋を出て、リンフォードさんについて歩くと、やがて巨大な扉の前までやって来た。


「ここじゃ」


 リンフォードさんは、その重そうな扉をゆっくりと開ける。

 そして、扉の向こうにはーー。


「わあ……!」


 部屋の中央に像があり、それを取り囲むように、複数の祭壇のようなものがあった。

 リンフォードさんが、一番手前にある祭壇に近付く。

 そして、祭壇の上にある箱を開け、中から何かを取り出した。

 ーーそれは、赤い宝石のような石が輝く、金色の美しいブレスレットだった。

 と、その時、どこからか男性の声が聞こえてきた。


「火の守護者候補が見つかったのですか?」


 あたしとリンフォードさんは、声がした方へと同時に視線を向ける。

 そこには、二十代後半と思しき一人の男性が立っていた。


「久しいのう、アーネスト」

「ええ。お久しぶりです、リンフォードさん」


 アーネストと呼ばれた男性は、あたし達の方へと歩み寄ってくる。

 そして、あたしに目を向けると、こう口にした。


「彼女が、新しい火の守護者ですか?」

「うむ、その通りじゃ」

「……なるほど、確かに適性があるようですね」


 彼はあたしの方へと向き直ると、上品な仕草で頭を下げた。


「私は、風の守護者のアーネスト・ニコールと申します。どうぞよろしくお願いします」

「あ……あたしは、柏明里って言います。こちらこそ、よろしくお願いします」


 あたしも自己紹介をして、頭を下げる。

 この人、守護者なんだ。仲良くできると良いな。

 そんな事を考えていると、アーネストさんが不思議そうに首を傾げた。


「カシワ、アカリさん……? ひょっとして、異世界から来たのですか?」

「……はい、そうです。リンフォードさんが無理矢理……」

「そうでしたか。全く、リンフォードさんは……」

「ようやく見つけた逸材だったのでな。それに、早くあの事件を解決せねばならぬ」

「それは、まあ、そうなのですが」


 アーネストさんが、少し困ったような顔をした。


「そういう事じゃ。では早速、契約の儀式をするぞ。アカリ、こちらに」

「う、うん」


 リンフォードさんが、部屋の奥へと移動する。彼について行くと、また床に魔法陣が描かれていた。

 リンフォードさんが魔法陣の上で止まったので、あたしも魔法陣の上に立つ。

 リンフォードさんがこちらを振り向き、あたしに先程のブレスレットを差し出した。


「これを腕に付けるのじゃ」

「わかった」


 言われた通り、あたしはブレスレットを左手首に付けた。


「では、始めるぞ。アカリ、左手を前に」

「うん」


 あたしが左手を前に出すと、リンフォードさんはあたしの手を掴んだ。


「ーーこれより、契約の儀式を始める」


 足元の魔法陣が、淡い光を放った。


「炎の力を秘めし守護石よ。柏明里を火の守護者として認めるか?」


 リンフォードさんがそう口にした、次の瞬間。

 左手首のブレスレットの石がまばゆい光を放ち、あたしは思わず目を閉じた。

 しばらくして、目を開けるとーー。


「これで、契約の儀式は完了じゃ。おぬしは火の守護者となった」


 魔法陣とブレスレットの光は収まっており、リンフォードさんがあたしを見ながらそう言った。

 何て言うか、もっとすごいのを想像してたんだけど、意外とあっさり終わったな……。

 あたしは、左手首のブレスレットの石に目をやる。

 すると、そこには、床に描かれているのと同じ魔法陣が刻まれていた。


「……守護者になると、何がどうなるの?」


 あたしの問いに、リンフォードさんはこう答えた。


「火の魔法や武器を自由自在に操れるようになる。その力を使って、この世界を守るのじゃ」

「そうなんだ……わかった」


 こうして、あたしは火の守護者に選ばれたのだった。

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