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十三・目覚め

「アカリ……」

「……?」


 ぼんやりとする意識の中、誰かがあたしの名前を呼んでいる。

 続けて、誰かがあたしの身体を揺するような感覚。


「アカリ……大丈夫?」

「……ん……」


 ゆっくりと目を開けると、そこには心配そうな顔をしたノエルさんとカルロスさんが立っていた。

 止まっていた思考がゆっくりと動き出し、状況を理解し始める。


「……!!」


 あたしは慌てて上半身を起こした。


「なっ……何で二人がここに!? ひ、ひょっとして、あたしの寝顔見た!?」

「あっ、ご、ごめん! 誤解のないように言っておくけど、僕達は何もしてないからね!? リンフォードさんに様子を見てこいって言われて……そしたら、君がうなされてたから……!」

「え……あたし、うなされてた?」


 あたしの問いに、カルロスさんが頷いた。


「おう、すごいうなされてたぞー。後、泣いてた」

「え……?」


 カルロスさんの言葉を聞いて、あたしは自分の顔に手を当てる。

 確かに、あたしの頬を涙が伝っていた。


「大丈夫? 嫌な夢でも見たの?」

「えっと……よく覚えてない……」

「そっか。まあ、覚えてないんだったらそれでいーじゃん。嫌な事なんてさっさと忘れちゃった方がいいよ」

「うん、まあ、カルロスの言う通りかもね」

「そっか……ごめんね、二人とも。心配してくれたのに、あんな事言っちゃって」

「大丈夫だよ。僕もカルロスも気にしてないから。それより、起きられそう? それとも、まだ休む?」

「ん……もう起きようかな」


 そう言って、あたしがベッドから降りようとすると――カランと音を立てて、何かが落ちた。

 よく見ると、それはあたしの魔瓶だった。洋服のポケットから落ちたのだろう。

 ノエルさんが、それを拾い上げてくれる。


「あ、ありがとう、ノエルさん」

「いや、いい、よ……、……?」


 何故だろう。突然ノエルさんが、あたしの魔瓶を凝視し始めた。


「ノエルさん、どうしたの?」

「アカリ……この魔瓶を、どこで……」

「え? えっと、あたしが幼い頃に、お守りとして持ってなさいって、お母さんがくれたの」

「……!」


 あたしの話を聞いた途端、ノエルさんは目を見開き、弾かれたように顔を上げた。


「アカリ……君、は……」

「ノエルさん……?」


 どうしたんだろう。ノエルさんの様子がおかしい。

 あたしと同じく、ノエルさんの様子がおかしいと感じたのか、カルロスさんもノエルさんに声をかける。


「おーい、ノエル。どうした?」


 するとノエルさんは、ハッと我に返ったような表情になり、あたしに魔瓶を返した。


「えっ? あ、いや……何でも、ない……えっと、ごめん」

「ううん、大丈夫だけど……どうかしたの?」

「……いや、何でもないよ」


 ノエルさんはそう言っているが、明らかに「何でもない」というような態度ではなかった。

 それが気にかかったが、これ以上聞いても何も教えてくれなさそうな気がしたので、気にしない事にした。


 その後、事務室に戻るも、特に仕事や依頼が舞い込んでくる事はなく、その日一日は終わりを迎えた。

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