表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

北森高校不思議研究会の流行りものの日常

作者: くもいひも


 「あぁ~やる気ない。しんどい。疲れた。ジュース飲みたい。」

夏。お盆。


夏休みだいうのに我々は今日も今日とて部活動に勤しむ為部室に集まっていた。

が、運動部のように動くこともなく。かといって文芸部のように行動しているなんて事もなく。


両手をだらし無く広げ机に突っ伏している我らが同好会部長。北森高校2年、如月乙女。


「目障りです。汗まみれでこっちを見ないで下さい部長。読書の邪魔です。」

冷たく突き放す眼鏡王子、もとい同好会副部長。北森高校2年、遠宮照。


「昨日の映画、あんまり面白く無かったですね~。」

部長と同じく机でぐだっているのが私。北森高校1年、藤堂みくら。


同好会はこの3人のみ。なんの同好会かって?

聞いて驚け見てひざまずけ、我らなんと詰め将棋研究会!

…とは表向き。中身は将棋とは一切関係ない、不思議研究会でございます。


なにそれ、とお思いでしょう。お気持ち痛いほどわかります。

私自身なんでここにいるのかわかりません。姉のみくりが同好会の存続の為とか言って

投げ込まれて早3ヶ月。途中、古い物置の奥から大昔の棋士の想いを受け継ぎライバルと

戦う運命を背負った1年生だとか、将棋の世界に魅入られて仲間とともに全国のライバルや

最強の姉と戦う1年生なんかも入部しそうになってたけど、その度にことごとく部長が


「お前ら来るとこまちがってっから。」と追い返したせいで今年の新入部員は未だに私だけ。


ちなみに今までの部活動の内容はダラダラする以外ない。



「おい、みくら。」

乙女部長が横っ面を机に押し当てたまま怠そうに私を呼ぶ。

「なんです部長。」

「今流行ってる、ホラ。なんちゃらって、知ってる?」

どうしよう。流行ってる以外の情報が皆無すぎて全然わからない。

「みくら、ウザかったらウザいと言える大人にならないとダメだぞ。」

本のページをめくりながら淡々とした口調で言う副部長。


「せめてジャンルを言ってくださいよ。全くわかんないです。」

「スマホで、こうパシャーッてするやつだよ。流行ってるやつ。」

ああ、ピンときた。

「ああ、もしかして『バケモンGO』ですか?」

「それそれ。さすが、できる女だな、みくら~。」

今巷を賑わせているスマホ用のゲーム、『バケモンGO』。

子供も大人もやりまくりなまさに今流行ってる最新ゲームだ。

「それがどうしたんです?」

「いやー、あんまりテレビやらサイトやらで面白い面白いって言うからさー

やってみたいけど、あたしの対応機種じゃなくって。みくら持ってるかなーって。」

「ええ、ダウンロードしてますよ。やってみます?」

ガバッと机から飛び起きると、さっきまでだれていた人間と同一人物とは思えない

機敏な動きで私のところまで早歩きで来る。その顔はらんらんと輝いている。


「そういや最近知ったんだが、部室棟にレアなのが出るとか噂あったな。」

まじで!!2人して顔を見合わせる。

「いきましょう!部長!」「がってんだ!」


今いる部室棟は私達以外運動部な為いつも無人な事が多い。

誰もいない校舎をペタペタと2人。上履きのだらしない音が響き渡る。

と、ここで操作方法を伝授するべく部長にスマホを渡す。

「えっとですね、近くに化け物がいると震えて教えてくれるんですけど…あ」

「えっ、おおお?なんか出た!出た!」

画面には野球部の部室前に佇む、筆で描いたよう唐笠おばけ。う~む。いつ見てもシュール。

このすっとぼけたような鳥獣戯画風の化け物達がかわいいと人気の出た要素の一つだ。

「まず捕獲モードにしてですね…。

このスマホを金魚すくいのぽいに見立てて、化け物をすくうんです。」

「なんか難しそうだな…」

乙女部長は難しい顔をしていたかと思うとパッと元のゆるい顔つきに戻り

「お手本!お手本!」とスマホを差し出してきた。


「いいですか?化け物は警戒心が強いので、こう興味のない風を装ってですね」

つーっと野球部の前を通り過ぎる。

「と油断させておいて、えい!」

しゅぽーん。テッテレテ~♪

捕獲成功の音楽がスマホから軽快に鳴り響く。

「おおお~!」

「はい、部長。まだ私全然遊んでないんで、未発見の化け物多いですよ。」

「まかせろ!今日でコンプリートだー!」

はりきって校舎の奥に消えていく部長。楽しそうでなによりだ。


でもこれじゃ私は暇だなぁ…。部室で借りてきた漫画でも読むかぁ。と

歩き出した時、しょんぼりした様子の部長がトボトボと歩いてきた。

「あれっ?もう飽きたんですか?」

「いんや、さっきなんか凄そうな奴見つけてさ。教えてもらった通り

隙をついてすくおうとしたんだけど…。」

「あらら。逃げられちゃいましたか。」

なんとも泣きそうな顔をする部長。手に持つ私のスマホ…ん?

んんん????


「なんかわかんないけど…ガツッて当たった感じがしてこうなった。」

部長の手にある私のスマホ。なんか真っ赤なんですけど!?何これ血!?

「うわっなんですこれ!ちょっと大丈夫なんですか手!」

「うん、あたしはなんともない…。スマホ壊れたかも…ごめん。」

「いやいいですよ、部長に怪我がないんなら。うん、大丈夫ですよ。ちゃんと動いてます。」

レアかもしれない化け物を取り逃がした事と私のスマホを壊したんじゃないかと思ったのが

余程ショックだったようで泣きそうな部長をなだめながら、部室へ帰る私達。



それにしてもぶつけたってペンキ塗り立てとかの壁にでも当たったのかな?

まぁ部長に怪我無くてよかったけど…ベトベトするし、くっさいペンキだなこれ…。

なんて、今でも目に涙を溜めてる部長の前では絶対に言えん…。


そんなこんなで今日も日が暮れていくのであった…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ