俺、決まってる!?
「ハァァァァァア!!」
先に動いたのは、ブレンダ。地面を思いっきり蹴り上げて、斎賀との距離を一瞬で縮める。
拳を振り上げ、斎賀の顔に直撃……
ドォン!
するどころか、ブレンダの方がすっ飛ばされてしまった。
「ぐぅ!?」
なにが起きたかわからない。気がつくと鼻血が下に垂れていた。
拳が当たる瞬間、奴は何かをした。しかし、何をしたのかわからない。
奴は腕を組んで動いてすらいなかった。
出血を止めようと、鼻を抑えていると斎賀が話しかけた。
「ほう、俺のパンチを5発も食らって、鼻血だけどはな。一筋縄にはな行かないか……」
「パンチ5発だと!?」
流石に驚いているようだな。よし、調子がいいぞ、映画っぽくなってる。手加減したつもりだけど、5発も打ちすぎたかな。相手もかなり痛そうだ。
でも、根を上げないとなると、流石は俳優。根性があるな。
さて、少し挑発してみるか。
「今度は、お前にもわかるようにゆーっくりやってやる。」
人差し指を、曲げて、かかってこいの合図を送る。
「ぬかせ!!」
体制を立て直して、再び勢いよく、飛んできた。なんか、本当に怒ってるみたいだ。演技うまいな〜。
ブレンダが腕を振り上げたと同時に……
ドォン! ドォン!
「てりゃ!」
ガン!
顔面へ2発のパンチ。そして、蹴り上げる。
「ぐは!?」
腹部にクリーンヒットし、腹部を抑えたまま、膝を崩した。
あ、結構深く入っちゃったかな。嗚咽を漏らしてるし、謝るべきかな。
「き、貴様は……何者だ!」
謝まろうと思ったら、立ち上がって名を聞いてきた。やっぱすごい根性だな、この人。
さて、何者かと聞かれてどう答えるべきか。素直に言うべきか……いや、それだと面白くない。
「おれか、おれは……貴様を倒すものだ!」
ピシッと人差し指を相手に向けた。とあるアニメのセリフを真似した……というか、おれが話しているのは殆どそのアニメのセリフだけど、結構かっこいいと思う。
撮影が終わったら見せてもらおうかな。
ひょっとしたら、髪が金色になってたりして。
「これでもくらえ!!」
そんな事を考えていると、黒い球体をおれ目掛けて投げてきた。
パン!
それを腕で弾き飛ばす。
黒い球体は、空のの彼方へ消えていってしまった。
刹那……
「ウォォォォォオ!!」
耳を劈くような雄叫びをあげると、信じられないくらいの黒い球体が出現してきた。
(めんどくさいからクラッシュボールと名付けよう。)
それが、一斉に斎賀が襲う。
ドガーン!!
「まだまだだぁ!!」
ブレンダはクラッシュボールをさらに生産し、それを連続して投げつける。
煙が経ち斎賀の姿は見えない。山をも撃ち抜くこの球体をあれだけ食らえば死んだも同然だろう。
「ふははは!!」
やはり、敵ではなかった。所詮人間など下等生物に過ぎない。神に戦いを挑むなどバカな話である。
“あいつ,,から“アレ,,た時はあまり信じてはいなかったが、この力は素晴らしい。
これなら、人間どもが俺の存在を認める。そして、俺を馬鹿にしやがった奴らを俺は全て殺す!
その第一歩は、既に成功した。哀れな人間よ。いや、俺の糧になれたんだからむしろ名誉だろう。
そして、今度は……
「エリクサーさんよ。俺は、あんたを殺す。そして、認めさせる!この手でな!!」
「く! それはどうでしょうか!!」
倒れていたはずのエリクサーがその場から消えていた。
エリクサーは上空で何者かに、抱えられていた。
「ち、警察か。」
先程、応援を頼んだと言っていた。しかし、エリクサーはブレンダの事を舐めているのか、応援を一人しか呼んでいないようだ。
「大丈夫ですか?エリクサー殿。」
「ええ、ありがとうございます。そろそろ下ろしてくれて構いません。邪魔でしょうし。」
「それもそうですね。」
警察官と思わしき人物は、エリクサーを地面にそっと降ろして、回復結界と防御結界をかけた。
「あなたが、ブレンダですね。資料とだいぶ違いますが……これをやったのは貴方でまちがいないですね?」
「ああ、ならどうする?」
余裕の笑みを浮かべる、ブレンダ。
「貴方を逮捕します!」
懐から、十字架らしきものを取り出すと、それが大きくなり、一つの槍となった。
「ふははは!! そんな、おもちゃで俺に勝てるとでも?」
「そうですね……時間稼ぎ程度にはなるかと。」
悔しいが、今のブレンダは警察官が何人束になっても無理だろう。
しかし、それは生きて捉えることであって、殺すとなると話は変わる。
「ふははははは!面白い。」
ブレンダもズボンのポケットから、十字架を取り出し、大剣へと姿を変えた。
両者、構えを取り、間合いを詰めようとしたその時
「くぅ、流石に今のは効いたな……」
煙の中から、斎賀現れた。