審判の時
まるで公開処刑のようだ。
蓮斗に向けられるのは殺気に近い威圧といまかいまかと、判決を待ち侘びる数百人もの傍聴者達の目線だ。
中でもワン○ースの白○げのようなガタイと髭を持つ、しんおう?とか呼ばれていたあの爺さん。あの凶暴そうな目つきで睨まれたら気絶しそうだ。
覇気の使い手だったりしてな。
どっちにしろあの爺さんが裁判長的な存在な事は間違いない。
「ではアメテルネスよ、この者の罪状を読み上げよ。」
「はい!」
神王がそう言うと、隣にいた蓮斗と同じくらいの年の少女が勤勉な態度で立ち上がった。
「被告、ブレンダ・オルデロッオ。神の制約第6条、人間界での神力の使用の疑い及び、暴走行為。そして、神霊条約の中でも最大の禁句である人間を殺害。普通なら審判なんてしません。しかし……」
「彼はまだ"神見習い,,だ。どの法律も当てはまらないな。」
すると、突然、蓮斗の真後ろにいる20代前半の紳士のような格好をした男性が話し始めた。
言葉をつもらせていかにも言いにくそうな顔をする少女とは裏腹に淡々と述べる。その姿は検察官に意義を立てる弁護士のようだ。
若干言葉使いが悪いな……
「うむ、という事は観察処分か資格を剥奪するかしかないか……」
しかし、神王のこの発言に意義をなすものが一人いた。
「軽すぎます!」
立ち上がったって意義を申し立てのは、これまた蓮斗と同年代の少女だった。
彼女だけ、なぜか巫女服を着ており、長く伸びた黒髪を1つにまとめている。誰から見ても美少女だった。
「ほお、天照大神よ。汝は何を望む?」
「はい、私は亡者の監獄に投獄するべきかと。」
亡者の監獄という言葉に当たりが一緒で静まり返る。傍聴席からもざわざわと野次馬が飛び交うがアマテラスと名乗ったその少女はその考えを改めようともせず頑固な姿勢をとる。
「天照大神よ、被告は汝と同じ学園に通うクラスメイトのはずじゃたな。生徒会長なら例え落ちこぼれ出会ってもかばうとか弁解しようとは思わないのか?」
天照大神の発言に流石の神王も戸惑ったがすぐに落ち着きを取り戻して再度質問する。
しかし、帰ってくる答えはすべて同じだった。
「僕は天照大神ちゃんに賛成かな」
すると今度は隣に座っていた幼稚園児くらいの少年が立ち上がった。
「破壊神か、まった厄介なヤツが味方したもんだ……」
思わずの味方の登場で審判が長引くことにため息をつく神王。
シヴァと呼ばれるその少年はいかにも背が低くて童顔だが、年齢は2500歳と神王の次に年齢が高い。
「んーと、みんな誤解しているようだけど亡者の監獄に投獄=死刑じゃないよ。確かにあそこは生きる者が行くべきところじゃないけどね。」
楽しそうに話すシヴァに全員が「こいつ、大丈夫か?」と思ったのは言うまでもない。
「まぁ、今は警察が必死に証拠集めしてるからまだ判決を出すのは早いんじゃないかな?」
その言葉に全員がため息をついた。実を言うと、ここにいる全員が世論に動かされないようになるべく今のうちに公平な審判を下す予定だったのだ。
しかし、証人であるエリクサー学園長が入院中のため不席。立ち会った新人警官もリハビリ中。
今日のうちに審判を下すのは到底無理だ。
「確かにシヴァの言う通り、判決を出すのはまだ早い。今日は解散ということにして、それぞれの公務を全うするがいい。」
神王がそう言うと、全員が挨拶をし席を離れようとすると……
「神王様、遅れて申し訳ありません。」
突然扉が開いたかと思うと、そこに立っていたのは派手な民族衣装の様なものをきた銀髪で髪が長い女性だった。
「おお、時空神か。いや、忙しいところを呼んだわしが悪い。それに、審判はお主の言った通りの展開じゃった。」
クロノスと呼ばれた女性だけは、ここにいる誰よりも神王が特別扱いしているのが一目りょう然だった。
他の人々もクロノス様と様付けでお辞儀をしていた。
「あー!クロちゃんだ!!久しぶり!!」
そんな中、シヴァだけは相変わらずの対応であった。
そんなシヴァを無視して神王の元に近寄ると何かを確認するかのように神王に話しかけた。
話が終わったかと思うと、蓮斗と目があう。
じーっと、全てを見抜くかのように淡く光るエメラルドグリーンの瞳からはなぜか、好奇心旺盛というか、敵対心が感じられなかった。
それどころか、こちらをみて驚いている。
「神王様……」
「おう、なんじゃ?」
先ほどよりも真剣な表情になり、空気が一瞬で変わったことに全員が違和感を覚えて再び集まってきた。
「なんで、ここに人間がいるのですか?」
彼女がそう言うと、その場が嘘のように凍りついた。