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ファイル09 引き籠りくんが連れてこられた

自殺課って実は…

自分の意思で来る人ばかりではないらしいです。


ではどういう人が…

意思に反して連れてこられるのでしょうか??

「…ただいま戻りました…叩所長…」

「また随分とお疲れみたいだね。伊野さん。。」

「ええ…なにせ手探り状態ですから…」


「それより今日はやけに早く戻ってきたね。」

「いえ…課長を連れてきたんです…」



 ここは県庁の自殺課。私は所長の叩一人たたきかずと【詳細は第一話参照】

 しつこいようだがなにせ月一回の連載だ。


 前回手を抜いたら…さっそく指摘されてしまった。。



 そして気にかけている読者もおいでだろうが…


 ここしばらく伊野さんがまったく登場していなかった。

 たった三回の不在だけど、実は四か月ぶりの登場ってこと。


 だから月一連載は難しいって言われるんだろうな。。


 …とはいえ作者が忘れていたのではない。(ホントです)


 実は伊野さん。

 新設課の立ち上げ事業に出向してたんだ。。

 そこで研修がてら色々な業務を経験したらしい。


 私にとってもこれは願ってもないこと。。

 だって伊野さんも面倒を見てくれたここの新課長は…


 私とは旧知の仲なのだから。。(^o^)



「よう。久しぶりだな叩…いや、叩所長か??」

「どっちでもいいスよ、小森さん…いや小森課長ですか??」

「そっちこそどうでもいいよ。水臭い。。」



 …この人、小森さん。

 私が若い頃、一緒の部署でお世話になった先輩。


 自殺課ができたと同時にの西摂津出張所の所長になって…

 …その数年後…

 前の部署で色々あった私を副所長として受け入てくれた人。


 …さらにその数年後…

 県庁舎に栄転になった時に私を所長に指名してくれた、

 いわば私にとっては恩人なんだ。


 そして去年からは新設課の立ち上げに携わっていて、

 今年度からその課長になったというわけ。

 その部署名とは…


 ≪兵庫県庁総務部引き籠り課≫


 その名の通り、引き籠りへの対応を行う課だ。

 自殺課と同じく政府の肝入りで作られたのだが、

 今のところ県庁のみの課で出張所はない。


 だから伊野さんも小森さんも県庁勤務ってわけ。



「ところでどうですか、引き籠り課は??」

「今一つだな。自殺課と違って終わりが見えないから。。」


「…と言うと??」

「自殺課は客が死んだら終わりだ。。

 しかし引き籠り課は客を家から出すだけで大変なのに、

 それだけでは何の解決にもならないんだ…。」


「…出したら終わりじゃないんですか??」

「そりゃそうさ。まずは役割を与えなきゃ。

 仕事も学校もない人間が家から出て何をする??」


「…あっそうか。。」

「とはいえ社会経験が乏しいからできる仕事は少ない。

 すぐに逃げ出してまた引き籠る者も多いんだ。。」



 なるほど。…そりゃ難儀ですね。。

 そりゃ伊野さんが疲弊してるのもわかります。。


 だが最大の問題は…

 引き籠り課の目的が不明確ってことらしい。。

 たしかに終わりのない仕事ってのは

 体も心もまるで休まる暇がないのだから。。


 でもだからと言って私にできることなど

 何もないんですけど。。


 どうもそうはいかないみたいで…(´・ω・`)



「そこで叩に相談なんだがな。。」

「…いやですよ。その部署に手伝いに来いとかって…」


「課長代理のイスを用意してもか??」

「…うーん。それなら…」

「おいおい冗談だよ。そもそも人手は足りてるんだ。」


 …じゃぁ早いとこ伊野さんを返してよ…


 などと言ってる場合ではない。

 そもそも相談に来たんじゃないんですか??



「実はだ。…ウチに相談に来る引き籠りにはその…

 自殺志願者が少なくないんだよ。」

「…なるほど。そりゃあり得る話ですね。。」


「そういう人はウチでは何ともならないんだな。。」

「…まぁ…そうでしょうね。。」


「そこでお前のところに…回したいんだよな。。」

「…はぁ!?冗談じゃない!お断りです!!」



 …いくら昔馴染みでも恩人でも…

 そればかりはムリな相談ってもんだ。


 だってこれ…実は冗談じゃない大問題。。


 確かに引き籠りに自殺志願者は少なくない。

 けど大抵は意志薄弱ではっきりと意思表示できない。

 しかも未成年が多いのも大問題…【ファイル02参照】


 …だからどこの自殺課も…

 引き籠りは敬遠するってのが不文律なんだ。。



 きっと他の出張所でも敬遠されたんだろうな。


 それで私を頼ってやってきたんだろうけど…

 私だってそんな何の得もない仕事を回されたくない。。


 とりあえずは断ったけど小森さんも、

 簡単には引き下がらないわけで… 



「頼む!!この通りだ!!」

「…ちょっと…困りますよ。。

 先輩に頭を下げられたって無理なんだから。。」


「でも…引き籠りなんてどうやったって無理なんだ!!

 どう頑張っても社会復帰なんて…」

「でも…それが引き籠り課の仕事では??」


「…じゃあ考えてみろよ。。

 引き籠りが粛々とこの世から消えてくれたら

 どれほど社会にとっての利になるのか…」

「……(´・ω・`)」



 それは…まったく以てその通りだ。。


 引き籠りが粛々と逝ってくれればそれはもう… 

 社会全体で考えれば特大のプラスだろう。。


 …けど人の命はそういうモノではない。


 社会貢献できなければ生きるべきでないのか??

 社会にとってマイナスならば自死すべきか??


 自殺課の仕事は、常にこの問題に向き合わされる。

 そして…いまだにその結論は出ていない。



 …数日後…

 一人の自殺志願者が引き籠り課から送られて来た。

 付き添った伊野さんも複雑そうだ。。

 しかもこれ…全国で行われているらしい。。


 引き籠り課の方針は重々理解できるけれど…

 自殺課所長としては容認できない。。 



「小森さん!!どういうつもりですか!?

 ウチは引き籠りは引き受けないと言ったでしょ!!」

「だがな叩…その男の住所はお前の管轄内だぞ。」


「だけど…家族はなんと言ってるんですか!?」

「家族だって合意してるさ…

 彼一人のせいで自分の人生を犠牲にしている家族たちの

 負担をお前はどう考えるんだ??」


「…でも本人の意思は!?」

「だからはっきりと本人に現実を突きつけたんだ。」

「なんと??」


「死ぬ気で社会復帰して社会のプラスになるか…

 何の貢献できない家族のマイナスとして存在するか…

 せめてゼロとして消滅するか選べってな。」

「……('Д')」



 …反論の余地もない…


 でもこれが…引き籠り課の仕事なのか??

 社会の価値観で人の生き死にまで決めるのが…


 でもそれは…自殺課とて同じ。。

 命を長らえられる人を社会の都合で処理する仕事…



 …では自分はどうなのだろう??


 社会の役に立たなくなってなお生きたいか??

 それとも世間の負になるくらいなら逝きたいか??


 私は多分…後者だと思う。。


 世に憚る憎まれっ子には死んでもなれない。。

 だから…それぐらいなら…

 そういう人たちが訪れるべき場所があるのなら…

 

 そして今日もまた私と同じ。

 後者の人々がここを訪れることになる。。


 

 ならば私の仕事とは何なんだろうか??


 本当に彼らの救いになっているのだろうか??

 それとも…社会のご都合主義の代弁者なのだろうか??



社会のプラスにならない…

誰の役にも立たない…

それでも生きたいでしょうか??

それとも逝きたいでしょうか??



あとアイデアって出る時はまとめて出るんだよな。

急に何作文も出たと思ったら…

その後は何か月も何一つ浮かばないんだもん。

ちなみに今回の原案を書いたの…7月だったよな。


いくら仕上げに時間がかかったとはいえ…

読者から見りゃ伊野さん…消えたことになるかも…

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