血色の瞳 2
昨夜は結局何事もなかった。警察も戦闘者でこそないが対犯罪のプロだ、きちんと仕事はしてくれたようだ。
「んにゃーっ、よく寝た」
マリーが猫のように伸びをする。こいつにはもう少し、いや、かなり緊張感を持って欲しい。
「・・・」
ゴシゴシと目を擦りながらイヴも動き出す。ちなみに二人とも寝起きが結構悪い。どれくらい悪いかと言うと、
「だからマリー、寝るときも服は着ろ。真っ裸で寝んな。イヴ、そっちは壁だ洗面台はもっと左」
マリーに衣服を投げつけ、イヴを壁から引き剥がす。しかし、マリーは叩きつけられた服をそのまま頭に被り、その体勢で停止する。イヴは洗面所まで誘導したのにさらにそこから左に進む。まぁこのくらいの寝起きの悪さだ。
「あら、皆様、おはようございますわ」
「ホントにお早いな、アンタ」
「夢魔ですので」
そりゃそうだ。リリンは寝起きの悪さとは無縁のようだ。おそらく家族もそうだろう、羨ましい限りだ。
「とりあえず、いい夢見れたか?」
「いいえ、私は夢を見せる方ですわ。しかし、」
と言ってリリンはマリーを見る。まだ停止していた。
「手強いですね、彼女」
「だろうなぁ」
マリーには恋愛感情とか性欲とか無さそうだもんな。
「皆無と言うわけでもないようですが、正直興味の対象がわかりませんわ。結局諦めました。私に諦めを選択させるなんて『彼』以来ですわ」
彼が誰なのかは知らないが、どっちにしてもどうやらプライドを少しばかり傷つけられたようだ。
ま、思考を除けばウチのギルドでも最強の部類だしな、マリーは。何せ入団当日に、ギルド随一のベテランであるシュカッツの旦那を病院送りにしていた。
オレのところに相棒というかたちで預けられたのもその辺りが理由だ。こいつは俺にしか止められない。昨日の暴走なんてかわいいもんだ。
「そんなに落ち込むことでもないと思うけどな」
「あなたも手強そうですわね、グロウさん?」
「買い被りだ」
あるいは過大評価だ。
「そうですか?その歳で正式にギルドから認められた二つ名持ちなんて、そうはいませんわよ?」
「だから買い被りなんだ。そんなもん、いくらでもいる」
それに、この二つ名は隠れ蓑みたいなもんだしな。
チェックアウトをする。そもそも旅行だったリリンと違い、泊まりのつもりがなかった俺たちは結局昨日の服を着ているが、まぁしょうがない。マリーの服だけは(血まみれだったから)新しいのを購入。あの暴走はなんとかならないだろうか。
「結局、車は借りませんでしたのね」
「ああ、また壊されそうな気がするんでな」
俺が俺である以上、トラブルの回避なんて無理な話だしな。
賑わう街を歩いていく。この辺りならまず問題がない、白昼の街中で襲ってくる犯罪屋はさすがにこの国にもそうはいない。そうはいないだけで、いることはいるから質が悪いが。
しかしリリンはくつろいでやがるな、命狙われてる自覚がないのか?あるいは、別に万が一襲われても大丈夫な自信がある・・・?いや、そもそもサキュバスには一般人レベルの戦闘能力しかないはずだし、第一襲われても大丈夫だってんなら俺達を雇う必要がない。
「あら?ふふ、グロウさん達が守ってくださるんでしょう?でしたら私には心配することはありませんわ。あなたは『彼』からのおすすめですしね」
「また『彼』か。ずいぶん『彼』とやらを信用してるみたいだな。サキュバスにとって、男は基本、ただの食料だと思ってたが」
「基本、ですわよ。サキュバスだって恋くらいしますわ。ウチの次女、雅も一人の殿方に夢中のようですし。ふふ、『夢魔』が『夢中』ですか、相当な魅力が相手にない限りはあり得ませんわね」
「恋、ねえ。あんたもその恋とやらで相手を信用してるのか?」
「ええ、お陰で三女の縁と末女の寿とはライバルという関係ですわね」
娘と男を取り合ってやがる。わりとドロドロしてんな。
「娘が四人いるんだっけ?」
「ええ、長女のレンとはもう戸籍上の繋がりはありませんけれど」
「は?絶縁ってやつか?」
「どちらかと言えば逆ですわね。私が籍を抜けたんですわ。レンが子供を産んでしまったものですから。この容姿で『おばあちゃん』にはなりたくありませんわ」
レン?ああ、そうか。どっかで聞いた名前だと思ったら、
「ドリム家のか。こないだ反陰秘団体のなんとかいうとこに誘拐された」
「そうですわ。今回の来国はそのお見舞いだったんですが、やっぱり残党がいたようですわね」
反陰秘団体、まあつまり陰秘(妖や魔術なんか)に批判的な思想を持つ団体だ。陰秘の技術が世界に認識されたのが大体五千年くらい前。で、世間に認められたのが、三回に渡る人妖大戦を経てだいたい百年くらい前。まだまだ妖や魔術というものは世間に浸透しきっていないのだ。宗教的に魔術や妖を悪とするものも、まだまだ残っている。
「半妖が少ないのもその辺りが原因だしな。なるほどね。確かあの事件は極秘裏に解決されたとか聞いたが」
陰秘差別は第三次人妖大戦後の締結で世界的な重罪とされている。下手をすれば殺人より罪が重い。それを黙認した場合、国家すらも同罪だ。と、言うか10年くらい前、とある国の市の条例で陰秘に批判的なモノを市長が可決させた際、次の週にその市が地図から消えていた事があったらしい。
「ええ、政府としても早急な解決が望まれたらしく、誘拐の報道があった時点ですでに解決策が講じられていたようですわ」
解決策ねえ、一体どんな解決策を立てれば今まで放っておくしかなかった犯罪団体予備軍(誘拐を行ったことで予備軍が取れたが)を壊滅させることになるんだかな。
「そういえばー、そのなんとかかんとかって言う団体さん、崩壊したんだよねー?何でだろ?」
空気化してたマリーの発言。マリーはあんまりオツムが詰まってないんで小難しい会話はパスする。
しかし、何でも何も、誰かがやったからに決まっている。この事件はなかったことになっているため、裏事情に精通している俺達みたいなやつにしか情報が流れてきていないが、それでもウチに入ってきている情報では、その組織、それなりの大きさだったようだ。
ここで問題なのがその壊滅に実は一日もかかっていないことだ。いや、実際んとこ、ウチもマークしてた組織なんで、ある程度のデータがあるんだが、構成人数が500人はいたはずだ。それが一日で壊滅。
さらに信じられないことが、その壊滅に際し、死人が全く出ていないことだ。500人の内、一人もだ。
俺達プロの退治屋ですら昨日の襲撃で10人以上殺しちまってるのに、壊滅戦で死者ゼロってのは奇跡とすら言えない。
「化け物だよな、その壊滅戦を指揮した奴」
いや、実際問題、ウチには誰がやったかまで情報が入ってる。指揮したどころの話じゃねえ。そいつは一人でそれをやらかしたらしい。
いや、まぁ、らしいっつーか、
「らしくねえ、って方だな」
「どうかなさいまして?」
「いや、独り言」
つーか世迷い言。残党が残ってた。詰めが甘いわけじゃないだろうが、なんか急いでたんだろうか?
「しかし、依頼した内容は人質の救出でしたのに、『彼』もまたずいぶんとサービスしたものですわね」
「ああ、そう言えば確かに」
組織の壊滅は要項じゃなかったんだっけ?
・・・ん?
「つかぬことをお伺いしますがリリンさん、今、『彼』っつった?」
「ええ、言いましたわ」
「それって代名詞?」
「一般的にはそうですわね。今のは指示代名詞として使いましたが」
俺は思わず唸る。
「悪い、そいつのフルネーム頼む」
「?いいですけれど」
せーの、
「「土野金」ですわ」
リリンが目をみひらき、手のひらを口許にあてる。
「あら」
マリーの目がキラリと光り、イヴの頭がピクンと上がる。
「あらあら」
俺は苦笑するしかない。
「わー、なになに、リリンってクガネの知り合い?すごいなーいいなー、ねえねえ、クガネ元気?」
マリーのテンションがワンギア上がる。
クイクイと袖が引かれる。イヴが興味ありげに見上げてきた。
・・・つーかこの二人、あいつの事好きすぎだろ。
「もしかしてグロウさん達も彼と知り合いですか?」
「ああ、まことに厄介なことにな」
ホント、過去三回しかあったことないってのに、親密度のバロメーターは下手をしたらギルドのメンバーより高い。
つか、何にでも絡んできやがるな、あの金色の闇、じゃなくて白い悪魔。
とかなんとかいってる内に街を抜け、今回の最大の難所に入る。1キロほど続くあまり整備されていない林道。
「さて、リリン、楽しいお喋りはここまでだ。こっからちょーっと気ィ張っていくぜ」
気配は・・・、チッ、当たり前だがするな。
イヴをちらりと見ると、イヴもコクリと頷いた。俺一人なら勘違いでも行けたが、イヴも感じたとなると本物か。マリーも(こいつの場合完全に戦闘狂としての勘だが)やや臨戦状態にある。
だが、妙だ。人数が少なく感じる。五人もいない。いや、むしろ一人や二人くらい・・・か?
用心しながらもできるだけ速いペースで林道の中程まで来たところで、そいつはいた。
ものすごいラフな格好の女性。普通にこの道を歩いている、何の関係もない一般人、でもおかしくない人物だった。
だからこそ、先手を相手に譲ることになった。
嫌な予感。背中に氷を入れられた様な、ゾクッとした予感があった。
俺達退治屋は、少なくとも俺は、そういった予感を無視しない。なにもなければ笑い話にすればいいだけだ。
マリーを突飛ばし、イヴとリリンをひっ掴んでマリーとは反対側に飛ぶ。
それはなんとも言えない音だった。例えるなら、そう、大根なんかを包丁で切るときのような音がした。
が、こんな森に大根はない。いや、まぁあるかもしれないが、少なくとも俺達の回りにはない。
切れたのは直前まで俺達の後ろにあった木。幹の直径は1メートルはある、普通に立派な木だった。それが地響きを立てて倒れる。
「あら?外しましたわね」
リリンと同じ「ですわ」語尾。いや、そんなことはどうでもいい。
「な、なんだぁ!?」
何をされた?何があった?木のあまりに滑らかな断面に唖然とする。木こりでもやってろよ。
「不可視のはずなのですが、厄介ですわね、貴方様は」
口調だけは丁寧に。いや、物腰なんかもきれいで丁寧だが、ともかくその口調は物腰に合わない台詞を吐く。
厄介じゃねえよ、今のは偶然だ二度もできねえっての。とかいいわけを考えたが、情けないので口には出さない。変わりに、
「誰だあんた」
そんな言葉が出た。明らかに今までの暗殺者とは違う。
「おや、これは失礼をいたしました。名乗りを忘れるとは失礼でしたわね」
果たして相手はそれに答え、これまた優雅に一礼をし、
「はじめまして皆さま方、私はノレル、ノレル・ハームと申しますわ」
「徳ある悪意、か?」
最悪だ。何だって「五席の空座」が出てきやがるんだ。
「さすがにご存じですのね。エジェンド・グロウ、隠された刃 さん?」
ちっ、こっちの事も調査済みってか。
「ノレル?もしかしてノレルエータちゃんですの?」
と、意外なところから声が上がった。
「知り合いか?リリン」
「ええ、恐らくですけれど。失礼ですけれど、ノレル・ハームさん?本名は何と申しますの?」
本名?ノレル・ハームってのは偽名かなんかか?
「貴女がリリン・ユメミズさんですの?貴女とは面識はないと思いますが、まぁいいでしょう。改めて自己紹介、私はノレルエータ・エアリアス・アーネス・アナシア・ソラリス・グライアート・ファン・シムタハームと申しますわ」
「のれるえーた・えありあす・あー、あー、なんだっけ?」
マリーが復唱しようとして、失敗する。大丈夫だ、俺も覚えられなかった。
「ノレルエータ・エアリアス・アーネス・アナシア・ソラリス・グライアート・ファン・シムタハームですわ、シナバーさん」
スラスラ言うリリン。何回聞いても覚えられる気がしねえな。
「・・・」
クイクイ、イヴが袖を引っ張る。見るとエッヘン、と得意気な顔をしていた。どうやら覚えたらしい。さすが。「やっぱりシムタハーム家の長女ですのね」
そうか、シムタハーム。世界でトップクラスの、いや、はっきり言っちまっていいのか。世界で5番目のグループ企業、ハームエンタープライズをまとめる財閥だったな。
以前の嫌な思い出のせいで、完全にシャットダウンしてたぜ。
確かドリム家もかなりの名家だったはずだ。面識があってもおかしくないわけか。
「って、その大企業のご令嬢がなんで数の頂点なんてやってんだよ」
しかもよりによって五席の空座、徳ある悪意。
「気にする方が無粋ですわ。女には秘密がたくさんありますのよ」
そうかい。しかし悪意、悪意ねえ。そういえば今代の四色の本物はみんな「悪」に関するアダ名があったな。確か、赤の本物、セキエ・"クリムゾン"・レッドは「悪辣」。
って、ちょいまて、
「なんで五席の空座が出てくる。この一件はセキエに来た依頼のはずだろう」
いくら俺が頭悪いからって、今回の大ボスを忘れるほどにバカじゃない。
「ああ、その事ですか、ご安心ください。別に物語の中核を忘れていたとか、設定が変わったとか言うわけではございませんわ。単純に、そのレッド様からさらに私が依頼をいただいただけの話ですわ」
二重依頼じゃねえか!自分に来た依頼を他人に投げんじゃねえよ、あの悪辣は!
「標的であるリリン・ユメミズの調査をしていたところ、黒の本物のレイヤ・"ネロ"・クロベの名前に行き着いたようですわ。彼は同じ四色と一つ上の三元に関する依頼は受けないことにしているようですからね。しかし、一度受けた依頼を放棄するわけにもいかず、私に丸投げした、ということですわ。疑問は晴れましたか?」
「嫌な具合にな」
「そうですか、それは重畳」
重畳ってどういう意味だよ。
難しい言葉はわからん。
「では、スッキリしていただいたところで始めましょうか」
殺し合いを。
すっとその白い手が前に付き出される。さっきと同じ悪寒。
「跳べ!」
言うと同時にイヴとリリンを引っ張って横っ飛び。転がるように着地する(運動神経ゼロのイヴは見事に転ぶ。リリンは前宙転して着地、本気で何モンだよ)。
後ろにあった木の幹が、さっきと同じくざっくり切れている。一体何なんだ?
ムクリと起き上がったイヴが袖を引っ張る。そして、
「しんくう」
と言った。
ちなみに今までの道中でわかってはいると思うが、イヴは寡黙だ。いや、寡黙っつーか、黙っている方がデフォだ。
ギルド内ではイヴが喋れることを知らない奴も多い。うちの上司とかな。
で、今回初の台詞がこれか。
しんくう、真空だろう。真に空。つまり空気すらそこに無い状態。空気と空気に断層を作ることもあり、強いつむじ風なんかでその状態になることもある。
また、空気の断層は物理衝撃を起こし、それは極端に薄いため、さながら刃のようになる。妖物の鎌鼬とは別に「かまいたち」なんぞと呼ばれる現象だ。
「つまり、あれはかまいたちだってことか。厄介だな」
目に見えないだけに。
危機回避能力にしたってそこまで自信がある訳じゃない。はっきり言って前の二つだって偶然みたいなものだ。
「あら、見抜く人がいましたのね。避けられるのすら久しぶりだったのですが、これは驚きですわ」
「なら驚いてる間は攻撃やめてくれないかなぁ!?」
いや、もう避けるとか避けないとかじゃねえ。ソニックブームが乱射されてくる。クリティカルしたら命がヤバイんでギリでかわしてはいるが、かすり傷がどんどんできる。
攻撃対象は完全に、戦闘要員の俺とマリーに絞ったらしく、少し離れたところにいるイヴとリリンは攻撃された様子はない。いや、たまにリリンの立ち位置が変わってるか?
「子供を攻撃なんてしませんわ。私、子供は大好きですのよ」
「リリンには攻撃するんだな」
「彼女は子供ではありませんでしょう?」
いや、まぁそうらしいが、見た目がな。
ちっくしょう、出血量がちとやばい。
ちらりとマリーを見るとかなりアクロバティックな動きで攻撃をかわしていた。つか、ほぼ無傷。あいつは野生の勘的な何かで攻撃を俺より正確に予測できているんだろう。
袖のギミックを発動させ、スローイングナイフを取りだし、即投擲する。
そのナイフはノレルに届く直前、弾かれたように跳ね返り地面に落ちた。
「風の鎧・・・」
風使い?超能力者か?
実際、五席の空座なんてほとんど内容は知られていない。名前だったりは知ってる人間なら知ってるが、どんな能力を使うかは謎だらけだ。
澄みし混沌、徳ある悪意、正しき矛盾、真なる虚偽、明るき漆黒、世界にあり得ざる五つの空席。そこに座る五人。ゆえに五席の空座だ。
つったところで俺たちだって、こいつらがどんなやつらなのか知らない。俺が会ったことあるのは、第二席、真なる虚偽 (トゥルー・フォレスト)、リベルス・ファールスだけだ。
数の頂点は基本的に裏の存在だから、表でもちゃんと名が通ってる四色の本物以外は、有名だが不明って奴らばかりだ。三元の要欠に至っては、俺は誰一人知らねえ。通り名は確か、悲の欠落、愛の喪失、死の消滅、だったかな?
こいつ、ノレルの能力はとりあえず超能力だろう。問題は、どんな超能力なのか、ってことだ。五席の空座だ、ただの風使いってわけは無いだろう。それは七術の極地の領分だ。
「風使い。惜しいですわね。私は四大元素使いですの」
そういってノレルは火を出す。それは一直線に俺とマリーに向かってくる。
「っとぉ。っておい!森が焼けるぞ!」
「あら、これは失礼」
今度はすさまじい勢いで水流。
火が消えたってか木が切れた。マジかよ。
「わかっていただけました?私の能力」
十分だろ。つーかわかっちゃいたがチートだ。超能力は一人に一つ、その大原則を綺麗に無視してやがる。
「しかし、五席にはあとひとり超能力者がいるんですわ。キャラがかぶってしまいますのよ」
そいつはどんなチートを使うんだよ、全く。
一般的な汎用能力しか持たない俺はこういうときには対処が難しい。
吸血鬼族と陰影族。両方とも妖族としてはかなり有名な部類だ。シャドーは三大妖族の一角だし、ヴァンパイアはワラキス・ヴァラド・ツェペスが最古の妖として現役だしな。ただ、ワラキスが最古のヴァンパイアってのは本人の誇張らしい。実際にはカーミラ・アルカードの方が年上だそうだ。本人は否定しているが。
しかし、さて、そんな雑事を考えてる場合でも無さそうだ。このピンチ、どうするかね。
「さ、それでは改めて、始めましょう。退治屋さん?」
ノレルは極上の笑みでそうつげる。くそ、だから面倒事は嫌いなんだ。