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35歳、年下御曹司に本気で溺愛されていました  作者: 真夜中さん


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7/20

守る側の距離




朝、カーテン越しの光で目が覚めた。



――久しぶりに、ぐっすり眠れた。



一瞬、ここがどこか分からなくて、 慌てて体を起こす。


知らない人のベッド。 知らない部屋。 借りた大きすぎるTシャツ。



……昨日のこと、全部本当だった。





キッチンから、 小さな音が聞こえる。


恐る恐る覗くと、 蓮さんがフライパンの前に立っていた。


シャツの袖をまくり、 エプロンなんてないのに、 妙に様になっている。


「……おはようございます」



声をかけると、 蓮さんは振り返って、少し目を細めた。


「おはよう。よく眠れました?」


「はい……」


それだけで、 胸がじんわりする。


「朝、食べられそうですか」


「……少しなら」


「無理はしないで」


そう言って、 テーブルに並べられたのは、 トーストと、スープと、ヨーグルト。


派手じゃない。 でも、ちゃんと「人の朝」。


「……私の分まで、すみません」


「ここにいる間は、 あなたの分も含まれてます」


当たり前みたいに言われて、 言葉に詰まる。


ここにいる間、って。


期限は決めてない。 でも、拒絶もされていない。


「仕事、行かれるんですか?」


「ええ」


「……私、どうしたら」


そう聞くと、 蓮さんは一度、コーヒーを飲んでから言った。


「今日は、何もしなくていい」


「え?」 


「外も寒いし、雨も残ってます」


視線が、私の足元に落ちる。


昨日、ふらついたことを覚えているんだ。


「体調が戻るまで、ここにいてください」


命令でもなく、 お願いでもない。


決定事項みたいな言い方。


「……ご迷惑じゃ」


「迷惑なら、言います」


即答だった。


その一言で、 胸の奥の不安が、少し溶ける。


「鍵、置いていきます」


テーブルに置かれた、 重みのある鍵。


「え、でも……」


「閉じこもらなくていい。 出たくなったら、散歩くらいは」


それって、 ――帰ってきてもいい、って意味だよね?


「……ありがとうございます」


何度言っても足りない。


玄関で靴を履きながら、 蓮さんは一度、こちらを振り返った。



「光莉さん」





初めて、名前を呼ばれた。


心臓が跳ねる。


「何かあったら、連絡してください」


ポケットからスマホを取り出し、 私の前に差し出す。


「遠慮はいりません」


その目は、 昨日より、少しだけ強い。


――守ると決めた人の目。


ドアが閉まったあとも、 その視線の温度が残っていた。


私は、鍵を握りしめて、 小さく息を吐く。


「……なんで、この人」


こんなに、 私を大事にするの。


理由はまだ分からない。





でも――



もう、 独りじゃない気がしてしまった。


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