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35歳、年下御曹司に本気で溺愛されていました  作者: 真夜中さん


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圭介の思考



取り戻した感覚

静かだ。


エンジンを切って、

あいつが部屋に入って、

ドアが閉まったあと。


ようやく、全部が静かになった。


……これだ。


この感じ。


胸の奥が、ゆっくり落ち着いていく。


逃げない。

叫ばない。


今は、まだ。


ちゃんと、ここにいる。


ソファに座った光莉を見て、

圭介は壁にもたれたまま、深く息を吐いた。


——戻った。


それだけで、

頭の中が妙に整理される。


奪った、じゃない。

攫った、でもない。


取り戻した。


本来あるべき場所に、ちゃんと戻しただけだ。

あいつは、分かってない。


蓮の家。


鍵。


「一人で大丈夫」。


全部、借り物だ。


あいつは昔からそうだった。


誰かの場所に置いてもらって、安心した顔をする。


でも。


それを許していいのは、


俺だけだろ。


「触らないで」


って言われたとき、

少しだけ可笑しくなった。


……まだ、そんなこと言うんだ。


触る必要なんてない。


逃げ場を消して、選択肢をなくして、


“考えさせる”。


それだけで十分だ。


暴力は嫌いだ。


本当に。


だって、壊れたら意味がない。


ちゃんと、自分から折れないと。


「帰してください」


ああ、言うよな。


でも、


“帰る”ってどこだ?


蓮の家?


圭介は、鼻で笑いそうになるのを堪えた。


借り物の人生。


借り物の安心。


借り物の男。


——そんなもので、


本当に生きてるつもりか?


泣かなかったのが、

今でも引っかかってる。


最後の日。


あいつは泣かなかった。


責めもしなかった。


縋りもしなかった。


「分かった」って言って、


全部終わらせた。


あれが、一番腹立った。


俺を必要としなくなった、


あの顔。


だから今は、いい。


怖がってる。


黙ってる。


ちゃんと、俺を見てる。


それでいい。


「壊れるまで、そばにいる」


本心だ。


壊したいわけじゃない。


ただ、

俺以外を選べなくなるところまで

戻したいだけだ。


スマホを預かるのも、自然な流れだった。


連絡手段は、希望になる。


今のあいつには、いらない。


光莉は、

黙ってスマホを差し出した。


その指が、少し震えていた。


——ちゃんと、効いてる。


圭介は、それを受け取ってポケットに入れる。


もう、外とは繋がってない。


この部屋の中にあるのは、


俺と、

俺の時間と、

俺が知ってる光莉だけ。


完璧だ。


あとは、ゆっくりだ。


逃げようとするなら、

そのとき考えればいい。


どうせ最後は、


同じところに戻る。


圭介は、部屋の明かりを少し落とした。


「……大丈夫だろ」


誰に言うでもなく、そう呟く。


——ちゃんと、取り戻したんだから。






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