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異変
家に帰ったら、全部おかしかった。
玄関を開けた瞬間、
違和感があった。
静かすぎる。
電気は、ついている。
「……光莉?」
返事がない。
胸の奥が、嫌な音を立てる。
リビング。
キッチン。
寝室。
どこにも、いない。
(……出かけた?)
でも。
バッグが、ない。
上着も、ない。
なのに、
メモも、連絡もない。
スマホを取り出す。
着信なし。
メッセージも、既読がつかない。
——おかしい。
光莉は、必ず連絡する。
「一人で大丈夫」って、言った日ほど。
蓮は、一度だけ深呼吸してから、
履き慣れた靴を履いた。
頭が、嫌な想像を始める。
——元彼。
——あの男。
「……くそ」
声が、低く漏れる。
エレベーターの中で、
スマホを耳に当てる。
呼び出し音。
出ない。
もう一度。
出ない。
外に出た瞬間、
蓮は気づいた。
マンションの少し離れた前で
光莉を見たという管理人。
胸が、冷たくなる。
「……光莉」
名前を呼ぶ。
答えはない。
でも。
——間に合わなかったかもしれない。
その考えが、
頭を離れなくなる。
蓮は、スマホを強く握りしめた。
守るって、言ったのに。
一人にさせた。
「……探す」
誰に言うでもなく、
そう呟いた。
目が、完全に据わる。
——これは、喧嘩じゃない。
——取り返す話だ。




