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35歳、年下御曹司に本気で溺愛されていました  作者: 真夜中さん


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16/17

外に出た光莉



それから、数日が経った。


蓮は相変わらず、

基本は在宅で仕事をしていた。


リビングの一角で、

淡々とオンライン会議をこなし、

必要な時だけ、短時間外に出る。


その日も、昼前に言った。


「今日は午後、少し外します」


「はい」


光莉は一人になる時間にも、少しずつ慣れ始めていた。


(……ずっと部屋にいるのも、よくないよね)


鍵を持ち、軽く羽織って外に出る。


目的はない。


ただ、歩きたかった。


駅前。

人の流れ。

いつもの街。


ショーウィンドウに映った自分を見て、足が止まる。


前と同じ顔。


でも、どこか違う。


(……私、まだ生きてる)


そのとき。


「……光莉?」


聞き覚えのある声。


振り向いた瞬間、胸が跳ねた。


圭介だった。


「こんなところで、何してるんだよ」


「……散歩」


「へえ」


視線が、服、バッグ、立ち姿をゆっくりなぞる。


「なんか、雰囲気変わったな」


「そう?」


「一人じゃないだろ」


核心を突く声。


「誰か、いるよな?」


「……関係ない」


一瞬の沈黙。


圭介が、乾いた笑いを漏らす。


「やっぱり」


苛立ちと、焦りと、プライドが滲んだ顔。


「俺さ、てっきり戻ってくると思ってた」


「……」


「なのに、急に消えてさ」


——消えたんじゃない。

切り捨てられたのは、私。


「もう終わったでしょ」


光莉は、はっきり言った。


圭介の表情が、わずかに歪む。


「……相手、どんな男だよ」


答えない。


ポケットの中で、スマホが震えた。


蓮からだ。


『今どこですか?』


短い一文。


それだけで、胸があたたかくなる。


(……帰る場所、ある)


光莉は一歩、距離を取った。


「もう、行くから」


背中を向けると、圭介の声が飛んでくる。


「後悔するぞ」


でも、足は止まらなかった。


——圭介は知らない。


彼女がもう、“戻る場所”を見つけてしまったことを。




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