そして俺は青春のタイミングを間違える
「いいか? 今すぐ咲ちゃんに告白しろ。でなけりゃ成人式の日、咲ちゃんと敬一の子供を抱くことになる」
未来から来た俺はそう言って去っていった。
ちなみに敬一とは俺の親友の名だ。つまりこのままビビってたら、未来で俺は親友に寝取られるらしい。その最悪の未来を変えるため、未来の俺はタイムマシンを発明し、過去の俺にその願いを託したんだとか。
「あの……話って、なに?」
だから俺は今、その指示に従い、咲ちゃんを校舎裏へと呼び出した。存在自体が華やいで見える美少女。
咲ちゃんは、少しだけ視線を泳がせながら俺を見る。緊張で肩がかすかに揺れていた。
でも大丈夫。この気持ちはきっと、彼女にとっても嬉しいはずだ。
毎日教室で一緒にいて、いろんな話をして。そんな彼女と俺ならきっと――。
自分で自分を鼓舞しながら、俺は空を見上げる。空は雲一つ無い快晴。
それは嘘偽りない思いを伝える俺の心を象徴しているようでこれから始まる心躍る日々を祝福しているようだった。
だから言える。
世界に祝福されている今なら。
未来から託された今なら。
「好きです!! 付き合ってください!!」
自分でも驚くほどはっきり、力強く言えた。
咲ちゃんはその言葉に顔を赤らめる。
勝った!!
勝ちを確信し、上がりそうになる口角をじっと押さえつける。
すると少し時間を置いてから咲ちゃんが真面目な表情を俺に向けてきた。
「まずはありがとう」
……あれ? あれあれ?
そのセリフって、断る前にしか言わないセリフな気がするんだけど。
「そしてごめんなさい!!」
それは……なにに対する謝罪ですか?
現実を受け入れきれない俺は、彼女の言葉を咀嚼することを拒む。
咲ちゃんは何か言いにくいことを言いたげで、喉元に言葉を詰まらせていた。
そして意を決したかのように俺の方をみると、その最悪の事実を告げてきた。
「昨日敬一君に告白されて付き合うことになったの。だから、あなたとは付き合えない」
そういうと気まずくなったのかどこかへ走り去っていった。
その可愛らしい背中が遠ざかっていくのを見ながら、俺はただ茫然としていた。
おかしいなあ。俺が帰り道流す曲は青春ソングとかラブソングとか。
それを咲ちゃんとイヤフォン共有して流して、今日は最高の日だねって笑い合って。
そして一か月ごとか一年ごとか、もっともっと時間を重ねて、今日という日を祝福して。
帰り道……back number聞く未来だけは望んでないんだけどな。
……ああ。
俺は口を半開きにしながら、呑気に晴れ渡る空を仰いだ。
祝福しているような空が、とてつもなく憎たらしく見えた。
――拝啓、未来の俺へ。一日、遅かったみたいです。
「タイムマシン、、作ろ」




