14-6 男と男の約束(6) 涙に刻む約束
手紙を握りしめるレオンハルトは、師匠からの指示にため息をついた。
『すぐに戻れ、修行を続けよ』
レオンハルトは、二人に別れを切り出した。
その瞬間、ユリウスの小さな手が腕に絡んだ。
「いやだ……いやだよ、レオン……行かないで……」
抱きしめ合ったまま、ユリウスは肩に顔をうずめて泣いた。
小さな体から伝わる震えに、レオンハルトの胸は締め付けられる。
(……オレも行きたくない……でも、ダメなんだ……)
心の奥で葛藤しながらも、レオンハルトはユリウスの髪をそっと撫で、耳元で囁く。
「絶対また会おう。約束する」
ユリウスは涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げて、うるうるとした瞳で見上げる。
「ほんとに……?」
「男に二言はねえ」
レオンハルトの声は低く、温かく、けれど決意を含んでいた。
抱きしめたまま互いの鼓動を感じ、離れられない瞬間が長く続く。
レオンハルトは心の奥で思う。
(オレは……おまえを絶対守る。どんな遠くにいても、この気持ちは変わらない……)
ユリウスの小さな手がレオンハルトの胸にしがみつき、声を詰まらせながらも囁く。
「……行かないで、って……言ったのに……」
レオンハルトはふっと笑みを浮かべ、額をユリウスの額に寄せた。
「泣くな……オレは戻ってくる。必ず……男と男の約束だ」
ユリウスはまだ泣きながらも、小さくうなずいた。
「……男と男の約束」
レオンハルトの胸の中に、寂しさと切なさ、そして守りたいという強い気持ちが交錯した。
手を離すことはできず、しばらく抱き合ったまま時間を刻む。
そして、背を押されるようにレオンハルトはゆっくりと立ち上がり、後ろ髪を引かれる思いで歩き出す。
振り返ると、ユリウスは涙目で手を振っている。
(……必ず、帰る。次はもっと強く、守れる自分で……)
そう心に誓い、少年たちのひとときは、深い絆とともに幕を閉じた。




