14-5 男と男の約束(5) 幸せな時間
月明かりの下、レオンハルトはルカと二人きりで話をしていた。
「……レオン、あの子にとって、あなたは特別です。ユリウス坊ちゃまはずっと孤独でしたから」
「……わかってる。あいつが寂しがり屋だってことぐらい」
「しかしそれだけではありません。あなたは……」
「……知っているのか? オレのことを」
「はい……その紋章で」
レオンハルトはため息をつき、右手の紋章を見つめた。
「確かにオレは聖者見習いだ。だが、魔力を封印されている。オレには何か強すぎる力が眠っているそうだ。それにオレは、聖者のくせに男でもある」
「この際、男であることは問題ないのでは」
「確かに……しかし、封印が解けなければ魔力は一切使えない。それでは聖者とは言えないだろう」
ルカは食い下がる。
「封印を解くことは出来ないのですか?」
「……封印を解く方法。それは知らされていないが……たぶん、愛を知ること、だと思う。魔力の源は愛と教わった。だから、そんな簡単なもんじゃない」
ルカは静かにうなずく。
「だからこそ、ユリウス様との時間は、あなたにとっても……」
「……ああ。大切な時間だ。オレも、ユリウスと一緒にいられて楽しい」
その言葉が自分の本音だと気づき、胸が苦しくなった。
翌日も、その次の日も、二人は笑い合い、遊び続けた。
ユリウスの屈託ない笑顔を見るたび、レオンハルトの心は少しずつ解けていった。
(もし……ずっとここにいられたら)
そんなあり得ない夢を、初めて思い描いてしまうほどに。




