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14-1 男と男の約束(1) プロローグ・眠りの中で
夜。寝室のカーテン越しに月明かりが差し込んでいる。
大きなベッドに並んで横たわるのは、レオンハルトとユリウスだった。
ユリウスはすやすやと寝息を立てていたが、やがて小さくうわごとのように呟いた。
「……いかないで……レオン……」
眉を寄せ、どこか悲しそうな寝顔。
レオンハルトはその頬にそっと手を添え、親指で涙のあとを拭うように優しくなぞった。
「……オレはもう、どこにも行かない。安心しろ」
囁く声は温かく、優しさに満ちていた。
「……ぼく、ずっと待ってるから、レオン」
(ぼく? ずっと待ってる?)
レオンハルトは、はっとした。
そう、それは懐かしい記憶だった。
目を閉じると、胸の奥に懐かしい風景がよみがえる。
まだ幼いころ、出会ったばかりのあの日のこと。
――そうして、彼の意識は自然と過去へと沈んでいく。




