12-3 もしかして嫉妬したのか(3) 魔獣の巣と光の結界
次なる問題は、王国の北部にある鉱山地帯から届けられた。
そこは良質な魔石の産地であり、王国にとって重要な収入源だった。
しかし、魔石の持つ魔力は常に周囲の魔物を引き寄せ、近隣の村は絶え間ない襲撃の危険にさらされていた。
「放ってはおけません」
セイラは一行を率い、村へと向かった。
村に入った途端、子供が泣きながらセイラにすがった。
「聖者さま、助けて……魔物が来るの……!」
セイラは柔らかく微笑み、子の頭をなでる。
「もう大丈夫。私が来たのですから」
彼女が両腕を広げると、光柱が天に立ち昇った。
何本もの聖なる柱が村を囲み、巨大な結界を形成する。
まばゆい光が闇を払い、空気すら浄化していく。
「わああああ!」
「すごい、これなら魔物は近づけない!」
村人たちは歓喜し、ひれ伏す者まで現れた。
ユリウスは目を潤ませ、感嘆の声を上げた。
「……これが真の聖者の力……! ああ、セイラ様……あなたの奇跡を、この目で見られるなんて!」
セイラはちらりとレオンハルトに目をやる。
「では――あなたなら、どうするかしら?」
「へっ、また試しかよ」
レオンハルトは面倒くさそうに笑うと、拳を鳴らして歩み出た。
「見てろよ」
彼は迷いなく、魔獣の巣穴へ突入した。
その拳が振るわれるたび、轟音と共に地面が揺れ、岩が砕け、魔獣の悲鳴が響く。
やがて次々と巣穴が崩壊していき――ついには、周囲の魔獣たちの根城はすべて粉々に破壊された。
「……これで魔物どもは二度と現れねぇだろ」
額の汗を拭いながら戻ってきたレオンハルトに、村人たちは絶句し、次いで歓声を上げる。
「す、すごい……! これで安心して暮らせる!」
ユリウスは呆然と見入っていた。
「……相変わらず、お前はめちゃくちゃだな……セイラ様のような優雅さのかけらもない。だが……まぁ、いいんじゃないか。お前らしくて……」
「あれ? お前、今褒めてんの? 俺のこと」
「はぁ? 何言ってんだよ。違う。お前はめちゃくちゃだって言ってんだよ」
「……へぇ、そうなんだ」
頬を赤くするユリウス。
楽しそうに微笑むレオンハルト。
セイラはそんな二人を、母のような微笑みで見守っていた。
帰り道。
レオンハルトは、セイラに尋ねた。
「で、俺のはどうなんだ?」
「根本から解決……これもまた、正しい方法ね。よく頑張りました」
「……当たり前だろ」
そう言いつつも、レオンハルトの胸には誇らしさがあふれていた。
こうして村は救われ、次なる目的地――山間の集落へと向かうことになった。




