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12-2 もしかして嫉妬したのか(2) 大地に降る慈雨

数日の逗留を経て、王都に不安な知らせが届いた。

地方の農村で雨が降らず、作物が枯れ始めているという。

民は飢えに苦しみ、王国の食料不足が現実味を帯びていた。


「セイラ様なら……!」


そう期待する声が、あちこちから上がった。

セイラは微笑んで立ち上がる。


「さあ、行きましょう。困っている人々を、見過ごすわけにはいきません」


ユリウスは勢いよく手を叩き、子どものように顔を輝かせる。


「セイラ様がいれば百人力です! ぜひ、お願いします!」


やがて干上がった村に着くと、民は一斉に駆け寄った。


「聖者様! どうかお救いを!」


人々はひざまずき、涙を流しながら祈る。


セイラは静かに両手を広げる。

その姿は女神のようで、黄金の髪を陽光が照らし出す。

瞬間、天を裂くように光が走り、厚い雲が集まり始めた。


――ザァァァァァ……!


恵みの雨が大地を打つ。

枯れかけた畑に緑が蘇り、民衆は歓喜の声を上げた。


「奇跡だ! 神の御業だ!」

「セイラ様! セイラ様!」


ユリウスは雨に濡れるのも構わず、空を見上げ涙ぐんだ。


「セイラ様……本当にすごい……!」


雨に打たれながら、ユリウスの瞳は感動に揺れていた。

だが、その傍らでセイラはそっとレオンハルトを呼び寄せた。


「さて。もしあなたなら、どうするかしら?」


挑むような笑みを浮かべる師に、レオンハルトはにやりと口端を上げる。


「ふん……いいぜ、見てろよババア」


彼は迷わず、枯れ果てた川へと歩み寄った。

そして拳を高く振り上げ――


ドンッ!


轟音と共に川底を叩き割る。


するとどうだろう。

ひび割れた地面の隙間から、こんこんと清水が噴き出し、やがて流れとなって川を満たしていくではないか。


「う、嘘だろ……!」

「川が……蘇った!?」


人々は目を見張り、口々に叫ぶ。


「……へっ。どうだよ」


拳を振って水しぶきを払うレオンハルト。

その姿に、セイラは目を細め、満足げに微笑んだ。


「根本的な解決……そうきましたか。さすがね」

「へっ、こんなの大したことねぇよ」


だが唇はわずかに笑っていた。


「すごいじゃないか、レオン! 川を生き返らせるなんて……」


ユリウスは胸をときめかせ、恋人の腕に抱きついた。


「お、おい、ユリウス……人前だぞ」

「あっ……!」


頬を真っ赤にして甘えるユリウスに、レオンハルトは頭をかきながらも、まんざらでもない様子だった。


こうしてひとつの村が救われた。

だが、次なる試練はもう近づいていた――。


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