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11-2 もうどこにもいくなよ(2) 罠と絶望の迷宮

王都の外れにある古い石造りの丘陵。

その地下深くに口を開けるダンジョンの入口は、今や黒い瘴気を吐き出し、周囲を覆っていた。


冒険者や兵士たちが必死に防衛線を張っていたが、押し寄せる魔物の群れに次第に押されつつある。


「来るぞ! 群れだ!」

「くそっ、数が減らねぇ!」


その混乱の只中、土煙を上げてレオンハルトが到着する。

「お待たせ!」


豪快に叫ぶと同時に拳を振るい、前線を蹴散らした。

衝撃波に巻き込まれた魔物が十数体、まとめて吹き飛ぶ。


「ひ、ひとりで戦況を変えやがった……!」


冒険者たちが呆然とする中、後方から冷静な声が響いた。


「全軍、陣形を立て直せ! 聖者殿が道を開く!」


副官ロイが的確に指示を飛ばし、兵たちは慌ただしく再配置を始める。

彼の存在が、混乱する戦場に秩序を取り戻していた。


レオンハルトは振り返りざま叫ぶ。


「ここは任せた! 俺とマーラがダンジョンに潜る!」


白衣を翻し、魔導書を抱えたマーラが頷いた。


「コアを破壊すれば、氾濫は止まります。案内は私に任せてください!」


ロイが一歩進み、短く答える。


「了解。外の防衛は我らで持ちこたえます。ご武運を」


それだけを告げ、再び戦場の指揮に戻っていった。


****


石段を駆け降り、レオンハルトとマーラはダンジョンの内部へ。

苔むした石壁、天井から淡い光を放つ魔石――しかし空気は淀み、魔物の咆哮が奥から響いていた。


「……気味が悪いな」


レオンハルトが拳を握る。


「通常の魔力の流れではありません。外部から干渉され、強制的に膨張している……!」


マーラの額には汗が滲む。


「このままでは崩壊する。早くコアを見つけなければ!」


二人はさらに奥へ進む。

やがて分岐路に差しかかると、マーラは立ち止まった。


「こっち。コアはこの先にある」

「根拠は?」


「魔力の流れが示している。私には視えるんです」


真剣な眼差しに、レオンハルトは迷わず頷いた。


****


しかし、その道の先に待ち構えていたのは――。


「しまった、罠だ!」


床が崩れ、マーラの足元から光が迸る。

瞬間、強烈な重力魔法が発動し、全身を地面に押し付けられた。


「ぐっ……動け……ない……!」


マーラが呻く。


「マーラ!」


レオンハルトが駆け寄ろうとするが、無数の石壁がせり上がり、二人を隔てた。


「くそっ……!」


拳で殴りつけ、壁を砕く。だが次々と再生する。


一方、閉じ込められたマーラの目の前には、黒い瘴気を纏った魔物が立ちはだかった。


「嘘……こんな個体、文献には……!」


魔物が咆哮し、マーラへと迫る。

必死に魔導書を開き、詠唱を唱える。


「封縛の鎖!」


鎖の魔法が伸び、魔物の足を絡め取るが、一瞬で引きちぎられる。


「……駄目か!」


額から血が流れる。それでも必死に立ち向かう。


(ここで死ぬわけにはいかない。ユリウス様も、この国も……!)


再び詠唱を紡ぎ、最後の魔力を込める。


「閃光の槍!」


光の槍が放たれ、魔物の肩を貫いた。

だが致命傷には至らず、逆に怒り狂った魔物が爪を振り上げる。


「……!」


その瞬間、轟音が響いた。

再生していた石壁が粉砕され、瓦礫の中からレオンハルトが飛び込んでくる。


「遅れて悪かったな!」


拳が唸り、魔物の巨体が宙を舞った。

壁に叩きつけられ、地響きが迷宮全体を揺るがす。


「……はぁ、はぁ……助かりました……」


膝をついたマーラを、レオンハルトが支えた。


「大丈夫か?」

「……ええ。ですが、このままでは……!」


ダンジョン全体が軋み、天井から瓦礫が落ち始める。

瘴気がさらに濃くなり、魔物の影が奥から次々と現れた。


「こりゃ、時間がねぇな」


レオンハルトの目が鋭く光る。


「だったら……俺が全部ぶっ壊す」


その豪快な言葉が、崩れかけた迷宮に響き渡った。


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