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10-1 思い出を下さい (1) プロローグ・隣国の野望

灰色の夜。

シュタイン王国の宮殿で、燭台の火が重臣たちの顔を照らしていた。


玉座には人がいなかった。

国王はすでに暗殺され、表立った後継者はいない。


その空いた玉座の前で、一人の痩せた男が腰を下ろしていた。

ディートハルトである。


実権は彼の手の中にあった。

外側だけの儀礼は残っているが、決めるのはすでに彼だった。


重臣たちが次々に意見を述べる。

外征の必要性、資源の確保、王位の正当化の方法――。


ディートハルトは静かに耳を傾け、時々薄く笑った。

目は冷たく、計画は内側で既に練られていた。


「何としてでもアルビオン王国を手に入れる必要がある……」


彼の声は低く、それでも強い意志を感じさせた。


ある重臣が詰め寄るように言った。


「これまで何度か失敗しています。最大の障害は“聖者”ではないでしょうか?」


議場が一瞬静まった。

聖者――噂の英雄の名が囁かれる。


ディートハルトの唇がゆっくり歪んだ。


「ならば、聖者を潰すまでよ」


別の重臣が目を細めて言った。


「しかし、我が方に彼ほどの強者を倒せる者は……」


その言葉に、ディートハルトの瞳が光る。

ゆっくりと、いやらしい笑みが広がった。


「それなら、いい方法がある」


細かい説明がされるうちに、賛成の声が波のように広がる。

案はすぐに決定へ傾いた。


会議が終わるころ、ディートハルトは窓のそばで外の月明かりを見て独り言を漏らした。


「次こそは、必ず――アルビオンを……」


その笑いは静かで冷たかった。

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