表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/30

05-5 こんなにも好き、なのか?(5) 恋に揺れる星夜

王城の中庭。

夜風が木々を揺らし、星々が静かに瞬いていた。


戦いから戻ったレオンハルトは、まだ鎧の埃を落とし切らぬまま、噴水の縁に腰掛けていた。

そこへユリウスが早足で駆け寄ってくる。


「お前っ! け、怪我はないんだろうな……!」


思わず声を荒げる。

安堵と怒りが入り混じり、感情を抑えきれなかった。


レオンハルトは苦笑し、肩をすくめる。


「ありがとう、心配してくれて」

「っ、ち、違う! 心配なんて……してない!」


「じゃあ、なんでそんなにホッとした顔をしているんだ?」

「そ、それは……!」


言葉が出ない。

胸の奥で、熱い何かがぐるぐると渦巻いている。

その正体を口にすれば、もう二度と後戻りできない気がした。


そんなユリウスを見つめながら、レオンハルトは低く囁いた。


「……お前の声があったから、飛び込めたんだ」


星明かりの下で、真剣な眼差しがこちらを射抜く。

ユリウスの心臓は一瞬止まったように感じ、次の瞬間には破裂しそうなほどに高鳴っていた。


「な、なにを……勝手なことを……!」


否定の言葉しか出せない。

けれど本当は、嬉しくて仕方がなかった。


その時――軽い足音が響いた。


「……やっぱり、ここにいらっしゃいましたか」


声の主はロイだった。

彼は二人に近づき頭を下げた。

レオンハルトは、ロイに視線を投げかける。


「どうした、ロイ。何か用か?」

「はっ」


ロイはユリウスに視線を移し、唇の端を上げた。


「ユリウス殿下」

「……な、なんだ」


「突然ではございますが、私ロイは、レオン様に恋していることをお伝えさせていただきます」


夜風が凍りついたように感じた。

ユリウスの顔は一瞬で真っ青になり、言葉を失う。


「正直な気持ちを伝えさせていただきました。おそらく殿下もレオン様のことを……」

「なっ……お、お前、何を言って……!」


ユリウスは、慌ててロイの口を封じた。

レオンハルトは、困ったように頭をかき、ロイをにらみつける。


「……ロイ、言っただろ……ユリウスを困らせるな」

「はっ、申し訳ありません!」


まったく悪びれる様子のないロイ。

レオンハルトは、ったく、と頭を掻き、ロイが走り去っていく背中を見送った。


一方、ユリウスは、胸の奥で暴れる鼓動を抑えられなかった。

それは、レオンハルトを誰にも渡したくない、という独占欲。


(私は……レオンハルトのことを……こんなにも好き、なのか?)


認めたくない。

けれど、もう否定できないところまで来ている。


噴水の水音だけが響く夜。

ユリウスは視線を逸らし、揺れる想いを必死に隠そうとした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ