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05-4 こんなにも好き、なのか?(4) 報せは駆ける

「……聖者様が、拳で暴走の核を砕きました」


ルカの報告に、ユリウスは思わず椅子から立ち上がった。


「な、なんだって……? 核を、拳で……!?」


王城の執務室。

窓から差し込む夕陽が赤く床を染める中、ユリウスの心臓は速く打ち鳴らされていた。


大魔法ですら封じられないとされる魔力核。

それを一撃で粉砕したというのだ。


「馬鹿じゃないのか……! そんな無茶を……」


声は怒りを帯びていた。

だが胸の奥で高鳴る感情は、それとは正反対だった。


(無茶苦茶なのに……どうして、こんなに……格好よく見えるんだ)


言葉にすれば簡単だ。

だが、彼の中で生まれた感情はもっと複雑で、もっと厄介だった。


初めて会ったときは“役立たずの偽聖者”だった。

魔法も使えないのに、何ができるのかと。


なのに――今の彼は。

どんな災厄も、その腕一本でねじ伏せてきた。

そして今日、魔法の極致さえ拳で凌駕した。


「……ユリウス様?」


ルカが心配そうに覗き込む。


「べ、別に! 私はただ……っ、感心してるだけだ!」

「感心……ですか?」


「ち、違う! そうじゃなくて、その……!」


言葉が空回りする。

ユリウスは思わず顔を背け、赤くなった頬を隠した。


(ああもう……。私は……、あいつのことを、こんなにも……)


ユリウスの胸は締め付けられるほどに熱く、そして苦しい。


ルカは小さく微笑んだ。


「……きっとご無事で戻られます。あの方は、必ず」

「……そんな事は分かってる」


ユリウスはそっぽを向きながらも、その言葉にほんの少し救われていた。

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