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NOSIRP  作者: まるっち
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授かりもの

マ…マ…


マ…マ…


遠くから、近くから

そんな呼び声がする

誰だよ、子供が呼んでるのに酷い親だな…

なんて自分は関係ないとルッツは思いながら目を開いた


ここは何処だろう?


上も下もない無限の黒の中に彼は居た

都会の星の見えない夜空みたいだなと

何処までも続くように見える周囲を見回した

本当にここは何処なのだろう?

どうしてここにいるのだろう?

分からない事が沢山あったが、不思議と不安も恐怖も感じない


マ…マ


「まただ…」

何処かで子供が泣いている

ルッツはその声を辿って黒い世界を進み始めた

歩いていると、この場所がただ黒一色という訳ではないということに気が付く

時々、遠くでキラキラと星のように輝く物があったのだ

そして光は声と連動するように輝いていた

まるで道標のように声と共に光り

声の方へキラキラと輝きながら消えていく

それに導かれながら進むと座り込んだ子供の元に辿り着いた

「…迷子?」


ママ…


顔を上げルッツを見上げた子供の顔には何も無かった

のっぺらぼうというのではなく

顔である場所に大きな黒い穴が空いているのだ

「あ…と…」

流石に言葉に詰まるが

ルッツは気を取り直して聞いた

「名前は?」


…ほし…い…


「名前ないの?名前かぁ…」

ルッツは数秒うーんと考えて何となく頭に浮かんだ言葉を口にした

「ヘンカーとかどうよ」

その瞬間、真っ黒だった周囲が

満天の星空の様に輝き出した

困惑するルッツの前から顔のない子供の姿は消え去り

代わりに彼の頭の中に映像が流れ込んできた


周囲を飛び回るコバエの様な白い光

鬱陶しくてルッツは手で振り払おうとした

手が少し当たるだけでソレは制御を失い、、地面に落ちていく

「マジ何なのwww」

訳が分からないままそんなことを続けていると

頭の中にさっきの子供の声が聞こえた



それがぼくをきずつけるんだ

それはあいつからでてくるんだ



ずっと纏わりつくように飛び回る光よりも

より明るく光る光を見つけたルッツは、この鬱陶しい光を何とかするために

“それ”に向かって進み始めた



『何故逃げるのだカルネウス!』

一層大きな蠢く白い触手の塊が、無数の目をキョロキョロと動かしながら

追いかけていた王に対して叫んだ

「誰が止まるか!主神ポロニアを騙る魔族め!!」

王も言い返しながら崩れた城下街の中を走る

『私こそがポロニアである

カルネウスよ、お前の国を見よ!

ニゲラと魔族により世界は地獄と化している

この世界を救うためにはお前の力が必要不可欠だ!今こそ立ち上がる時だ!!』

「馬鹿にするな!貴様は連中の仲間だろ!

そこら中で民衆の死体を食い荒らしといて何が世界を救うだ!!」

ここまで逃げてくる間に、王は街のそこら中に横たわる魔力あたりで力尽きた人々の死体を

ポロニアと名乗る白い触手の塊と良く似た者達が捕食しているのを見てきた

それに主神ポロニアと名乗る使徒とは直接会ったことは無かったが

王や人々の知る“使徒”という者は

人に似た姿をしており、軒並み美しく

背中に2枚以上の白い翼を持つ者であるというのが常識である

使徒がパラフェトイである事実は

これまで使徒よって隠されてきたので、王の反応は当然とも言える

『落ち着くのだ!あれは食い荒らしているのではない!“救済”である!!

無惨に死んだ人間の魂を救っているのだ!

我々はいつでも人間の味方をしてきた!

お前達が立ち向かうべきは魔族…見よ!

あの巨大な魔族を!!このままではアレがお前の国を壊し尽くしてしまうぞ!!』

王とポロニアの方へどんどん近づく

巨大な黒い人形を言っているのだろう

しかし、王はそれに異を唱えた

「黙れ化け物め!使徒を名乗るのならせめて見た目くらい似せてこい!」

『…この姿はニゲラのせいだ!魔族の策略なのだ!!』


そこへ、都合の悪い事にアルバートがやってきてしまった

「彼こそまさに使徒…!これでハッキリしたな化け物!」

自分達がよく知っている、従来の使徒の姿をしたアルバートを見て

王は目の前のポロニアは完全に敵として認識した

「これ以上あんたの好きにはさせないぞ」

更にアルバートはポロニアと王の間に降り立ち

王を守るように銃口をポロニアに向ける

『アルファウラ…貴様ぁ…!!

この裏切り者めぇええええ!!』

ポロニアが吠えると、近場にいた使徒達が集まりポロニアにぶつかる様にして融合を始めた

これは、使徒による使徒の捕食であり

他の使徒の溜め込んでいた特性などが全てポロニアに収束されていく


「これはまずいな」

相手は使徒の王であり、アルバートは使徒の能力を奪った人間である

魔素の影響で強くなり、更に仲間を吸収し始めたポロニア相手に1人で戦ってはどう考えても勝ち目はない

「逃げるぞ」

アルバートが王を上空へ連れ去ろうとした

が、ポロニアの触手が鋭い刃となって襲い掛かってきて

反射的に防御をしたアルバートの翼を貫いた

「ーゔぅ!!」

エーテルをまとった攻撃だったらしく、貫かれた部分が溶けている

穴が開いた翼ではとてもじゃないが飛ぶことは出来ない

「大丈夫か!?」

「エドリック王…あんたが、奴に喰われたら

もう2度と、人間はこの世界で自由を掴むチャンスを得ることは出来ない

だから何としてもあんただけは逃がさないと」

『諦めろアルファウラ

この世界の覇者たるポロニアに敵うわけがない』

それまで球状だったポロニアは

取り込んだ使徒のせいで歪に形を崩し、人間の体の一部を触手の合間に見え隠れさせながら高笑いした

「ーっ!一体なんなんだ!

何が起こっているんだ!!」

「…今は説明してる暇はない

お互い生き残れたら何時間でも話すから

少し我慢しててもらいたいね」

「なら、せめてあの馬鹿でかいのは一体何なのか!それだけでも教えてくれ!」

王に言われてアルバートは気付いた

四つん這いになり此方をじっと伺うようにしている

あの黒く巨大な人形の怪物の顔がそれ程距離のない位置にあるのを…

それはポロニアも同様のようで

いつの間にかここまで近付かれていた事に酷く驚愕していた


「いつの間に…!

わ、分からない…アレが何かは俺も…」

ただ、急に現れたソレは

魔族ではなく使徒を攻撃していたので

おそらくマルクス側、魔族の味方なのだと思っていたが

それが具体的に何なのか、本当に此方の見方なのかは分からなかった

『あああっ!!カルネウス!!!

カルネウスを寄越せぇえ!!!』

四つん這いなって3人を見ていたソレに気が付いたポロニアは取り乱し

全力を使って王とアルバートに襲いかかってきた

「ーっ!」

アルバートは防御壁を張るも、一瞬で突破された

彼はエドリック王を守るために盾になり、接触した瞬間にエーテル集めて自爆技を出すと決め立ちはだかった

「エドリック走れぇえ!!!」


「ークソォオオオ!!」


エドリック王はアルバートに背を向け全速力で走り出した

『逃がさぬ!お前は私の物だぁあ!!』

あの巨大な黒い人形が右手でポロニアを叩いたのは、アルバートを飲み込もうとポロニアが触手を伸ばした時だった

地面を揺すり地鳴りがするほどの威力でポロニアをグーで上から叩き潰したソレは

ゆっくりと手を上げ、ポロニアに触れていた面を見た


目の前でポロニアが叩き潰された衝撃波で

後方に吹き飛んだアルバートは地面に尻もちをついたまま、目の前でそれを見ていた

「…ま…マジかよ…」

叩き潰されたポロニアはパラフェトイを飛び散らせ、バラバラの人間の一部と共に

元がどんな形だったかも分からないほど、ぐちゃぐちゃになっていたが

まだ辛うじて生きているのか、何匹かのパラフェトイがビクビク痙攣しながら

その場を離れようと必死に地面を這っていた

『…カル…ネウス…

我らが…お前達…を…魔族からま…もってやってる…

こんな…こと…許されない…

また…魔王が…お前達を殺す…だけ…』


「言うけど、言うほど使徒って守ってくれたか?

結局、自分を守るのは自分だったよな」


ルッツの声が頭上から聞こえて

アルバートは目を剥いてそちらを見上げた

あの黒く巨大な人形の怪物の顔が、いつの間にルッツの顔になっていて

彼は驚きのあまり声が出なかった

「…つーわけで、ダメな時はまた自分達で考えるんで

さよーならwww」

巨大な手のひらがバン!とぐちゃぐちゃになっていたポロニアを完全に叩き潰した



城下街などで人間の死体を捕食し

傷を癒した使徒達はマルクス達魔族や

アークトゥルス率いるメルザーガの軍を追い込んでいたが

ある時、それまで統率の取れていた使徒達が急にバラバラに動き始め

しまいには散り散りに逃げはじめた

「一体…何が…?」

防御バフなどで何とか耐えていた、満身創痍になったモンロルナラが

地面に膝をつき天を仰いだ


同刻、目の前の使徒を真っ二つに斬り割き

次の攻撃に備えていたマルクスも

2つに分かれた使徒が、攻撃を仕掛けてくるのではなく

使徒という群体からパラフェトイという小さな個体になり下がり

散り散りに逃げていくのを見て首を傾げた


使徒が撤退し呆気に取られていた魔族の軍勢も、暫くの困惑の後

誰が言ったのか“勝利”の言葉が波紋のように広がり歓声となった

普段は手を取り合わない、獣人達と握手を交わし、肩を組み

皆で空を仰いでこのひと時の喜びに酔いしれたのだ


どうして急に使徒達が逃げたのか

正確な情報が伝わるのは、このニゲラが終わる3日後の話だが

それでも積み上げた屍が多いだけあり

理由など関係なく誰もが戦いの終わりを喜んだのである

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