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NOSIRP  作者: まるっち
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ラッパの音

それは人間が到達出来ない、空高い雲の中に浮かぶ

この世で最も黒い穴で起こっていた

蠢く巨大な純白の球体に幾つもの小さな目玉がプチプチと発生し

異形のザワザワと蠢く球体の周りに、使徒達が集まり始めた

百人あまりの使徒がその場に集まると

一段と大きな目玉が蠢く球体の内側からメリメリと表へ出てくる

『皆の者…ゼノタイムとアルファウラが消えた』

蠢く巨大な球体が発した不思議な声に使徒達は騒ついた

『アルファウラは単独行動を好む

しかし、ゼノタイムが帰って来ないのは異常だ

クリスタルレイで何かが起きている

調べに行け』

空に開いた穴の様な球から

翼をはためかせ使徒達がクリスタルレイに降り注いだ…

「一体何が起こっているんだ!?」

クリスタルレイへ急な召集を受けた各領の領主達が集まって来た

通されたのはいつもの会議室ではなく謁見の間

しかし玉座に座るのはエドリック王ではなく、使徒プルトン

そしてその周りには数十人の使徒が立ち

エドリック王は玉座の前の階段下に跪いていた

謁見の間に着いたばかりのサモーズ領主のヘルロフ・ルッベルスは

見たことのない状況に戸惑いながら

既に到着して王の更に後ろで跪く他領の領主達の列に加わる

「…集まったな

早速だが、同胞ゼノタイムの行方がレプレイス以降分からなくなっている

お前達、心当たりはないか」

使徒降臨のセレモニーの後

ゼノタイムは何処かへ歩き去ったまま帰らなかった

その日選ばれた者達も、時間と共に1人

また1人と家に帰って普段の生活に戻っている

エドリック王はその話をプルトンに伝え

領主達もそれ以上の事は知らないと顔を見合わせた

「…宜しい、では少々手荒だが

ゼノタイムの行方は此方で探させてもらう」

謁見の間が徐々に薄暗くなり、屋根を激しく叩く雨音が響き渡る

雷鳴と共に採光窓が幾度となく明滅し

そして、城下街の上空を覆い尽くした

堆い積乱雲から使徒が雨粒と共に市街に降り注ぐ


市民達は武器を手に降りてくる無数の使徒に恐れ慄き混乱した

使徒達は人間を殺す事はなかったが

彼等の放つ異様な殺気と初めて起こった異常な事態に震え上がらない者はいなかった


そんな異常な状態の中、謁見の間の玉座へ続く階段下の空間が歪み

1人の使徒が姿を現した、彼は階段を足早に登ると玉座に座るプルトンに耳打ちをして下がった

「王よ、この街のあちこちに魔術的な迷宮が幾つもある様だが?」

「それは防衛としての構造です

他国や武装勢力から、この都市を守る為の構造であって…」

「あくまでゼノタイムの行方は知らないと言うのだな」

稲光と共に見えたプルトンの顔には8つ目があった

王はゴクリと生唾を飲み込み、分りませんと頭を下げる

そんな分からないと言う王の脳裏には1人の男の顔が浮かんでいた

(…いや…まさか…そんな事が…)


「何だ、風が強くなってきたな」

セシルと2人でダスカの隠れ家に来ていたデリックは

小屋がガタガタと音を立てるのを聞いて窓の外を見た

建物の周りに生い茂る木々がワサワサと枝葉をしならせ揺れているのが見える

「…大丈夫か?この小屋吹き飛んだりしねぇよな?」

「正直怪しい、補強しとくか

ほら手伝えよ」

セシルに板材と釘を渡し、工具を持って扉を開けると

扉が吹き飛びそうになって、慌てて2人で扉を閉めた

風が吹くたびに、ガタガタと震える箇所に補強用の板を当て釘を打っている時

デリックは遠くに見える空に、巨大な積乱雲を見てあぁ…と声を漏らした

「…どうした」

「凄いのがある、ありゃ丁度城下街のあたりじゃないか?」

ズボンのカーゴポケットから望遠鏡を取り出したデリックはそれを覗く

セシルはそんな事どうでもいいのか、板に釘を打ち続ける

「…マジかよ」

そんなデリックの呟きに、あ?と顔を上げた瞬間

セシルは肩を掴まれ強引に小屋の中へ引きずり込まれた

「おい!補強するんじゃねぇのかよ!」

「それどころじゃない!

城下街に使徒の大群が降りて行ってる!

…クソッ!一体何が起きてる!?

あんたは真人間じゃないだろ!?隠さないと…!」

使徒の大群が城下街に押し寄せる理由は分からないながらも

人間とは言い難いセシルが見つかってはいけないとデリックが焦る一方で

その明確な理由に心当たりのあるセシルは、動揺してはいなかった

置いてあった自分の荷物を持ち、セシルが小屋の扉に手をかけるので

デリックはその腕を掴み彼を見た

「何しようとしてる」

「…別に城下街に戻ろうって訳じゃねぇよ

ただ一緒に居て仲間だと思われたら

お前がとばっちり食うだろ

確か、この山の北側に洞窟があった筈だから俺はそっちに移動する」

デリックはそれを聞くとセシルに小型の虫型発信機を渡した

「もし、助けが必要なら

こいつのココを押せ」

「…小せぇボタンだな…押せるかこれ」



使徒の軍勢が城下街へ押し寄せる様子を

マルクスはエルコライルホルンから見ていた

「…動き出しましたか

坊ちゃん、どうなさるおつもりで?」

隣に立つモンロルナラは不安そうに問う

「あの量の使徒を相手にしては勝ち目はない

私が狙っているのは首魁であるポロニア」

「ポロニアさえ討てれば勝てると?」

「総崩れはするでしょう」

それにとマルクスは続ける

「魔王でなくとも使徒が殺せる

キースとヴィルヘルムが持ち帰った情報をうけて

そろそろ燻っていた火種が爆発するはずだ」



「おい、外着を羽織れ」

それまで静かに手帳に何かを書いていたバイロンがそれを止め

キッチンで家事をこなす使い魔に話し掛けた

「はいはい…何?お出掛け?

何処に行くんだ?」

「分からん」

時間が惜しいとほんの数分の外出さえ嫌うバイロンが、行き先も定めずに出掛けるというので

使い魔の男は変な顔をしながらも

主人の命令は絶対だと適当な上着を羽織る

「当分、いや場合によっては戻って来られないだろう

必要な物は全て持っていけ」

「マジで一体何処に行くんだよ」

何もかもが分からないミステリーツアーの誘いだが

使い魔の男はたまにはそういうのも面白いか、なんて楽天的に考え

ポケットにハンカチや財布、筆記用具に最低限のエチケット用品を入れた

「それだけでいいのか」

「何とかなるっしょ」

かく言うバイロンもいつもの手帳や財布、ポーションを幾つか持っただけの身軽な装いだった

「ま、あんたは何処に行ってもどうとでもなりそうだもんな」

「それはお前の方だろう」

バイロンはチラッと玄関の方を見ると

あまり時間がないなといい、実験室に早足に移動した

「何か持っていくのか?」

「いや」

バイロンは実験室にあった素材や資料、研究途中の物を魔法で一瞬のうちに破壊し尽くした

「いや待ってw気でも触れたのかじーさんw」

「全て頭に入っているのでさほど問題はない」

バイロンはそう言いながら

床に散乱した自分で破壊した道具などを足で蹴りよけ、場所を使った

その床に、落ちていたチョークで魔法陣を書く

数分もしないうちに魔法陣を書き終えたバイロンが詠唱すると

それは淡く光を放った

「いくぞ、ぐずぐずするな」

魔法陣に乗った2人は眩い光に包まれ、一瞬強く発光し

次の瞬間には魔法陣もろとも跡形もなく消え去っていた



ノーシルプのキッチンでお湯を沸かし

棚からお茶の葉を取ろうと手を伸ばしていたジクスは、はたとその手を止めた

「…来る…!!」

彼は火を消し共有スペースに走り込んだ

ソファに寝転がり、のんびりとしていたルッツは驚いて飛び起きる

「ルッツ!防火壁(ファイヤーウォール)が破られた!!

何かが近付いてきてる!備えて!!」

「えっ?この場所って招かれないと来られないんじゃ…」

「その術式を破られたんだ!!」

そこまで聞いてルッツは何が向かってきているのかピンときた

「マジか…ヤバいじゃんwww

備えてってどうすりゃいいの?www」

「俺も分からない

だけど、巧妙に隠してあった術を見つけて

それを破ったんだ…相手はかなり強いはずだ」

ノーシルプの玄関扉が、コンコン…とノックされる

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