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NOSIRP  作者: まるっち
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嵐の前の静けさ

ドロドロに溶け黒い粘液と化したゼノタイムだった物の一部を瓶に詰めてセシルはマジックバックに入れた

「おっさん何してんの早く逃げろって言われたじゃんw」

「…そりゃお前もだろが」

アルバートの事前忠告をうけ

他の仲間は既に魔力の部屋をでて、思い思いに逃げている

セシルはバイロンとの約束を果たすために“使徒の遺体”を回収しているのだ

「じゃ、俺ももう行くわw」

ルッツはスクロールを出して

エルコライルホルンの魔力の部屋へ飛んだ


エルコライルホルンの魔力の部屋には

変わらずアルバートが拘束されている

「ん?どうなったんだ?」

飛んできたルッツを見た彼は、そんな風に今の状況の説明を求めた

「作戦成功だぜw」

「本当にやり遂げたのか…!

やるじゃないか!!」

彼の反応から見るに、どうやら魔力の部屋で死んだゼノタイムの訃報は

アルバートにはまだ届いていないようだ

つまり他の使徒達も同じではないかと

その事をアルバートに伝えると、彼はどうだろうなと肩をすくめた

「魔力の部屋にいると世界から遮断される

そんな場所にいる俺に訃報が届くと思うかい?」

「…そりゃそうかw」


「これからどうする気なんだ?」

アルバートの問いにルッツは暫く考える

目標であった“使徒の殺害”はやり遂げた

「…いや、全部殺さないとwww」

「まあ、連中はゼノタイムを殺した奴を捜すだろうし

もう後戻りは出来ないだろうな」

過去にラディウスが魔王ベスベチュラに殺された時は

使徒の軍勢が魔族領のアデモスを潰そうと攻撃を仕掛けたが

この時はベスベチュラとその配下達の必死の抵抗の末に、ベスベチュラを殺す事は出来なかった

使徒側が受けた損害が思いの外大きかったので、ポロニアの判断により

魔族側の大量の死者をもって復讐は完了したこととされたのだ

「流石に魔族領で魔王を殺すのは簡単な話じゃなくてな

それに、ベスベチュラは不死身だと言われるほどに異常な回復力を持っている

倒したと思っても延々起き上がってくるアイツには心が折れたな」

相手が寄せ集めの烏合の衆なら使徒側が妥協することはないとアルバートは言う

「ポロニアを殺すか、あんたらが全員殺されるか…だ

俺はあんたらを応援してるぜ」

クリスタルレイの城下街へ戻ったルッツは

恐る恐る街の中を歩いた

既に日は沈んでいるが、最近高まっている

反魔王の動きのせいもあり

レプレイスの喧騒はいつになく賑やかで、まだ続いている

特に何か騒ぎが起きている訳では無さそうだが

中央広場の舞台には、数名の今年選ばれた人間達が

どうしていいか分からず、その場で途方に暮れている姿があった

(流石に延々には隠し通せないよな)

その様子を尻目にノーシルプへ急ぐ

どこへ逃げようと、結局は縛りのせいでノーシルプに戻されるのであれば

招かれた者でなければ辿り着けないと言われるあのアパートに居るのが

一番安全だろうというのが彼の結論だからだ

「まーた暫く引きこもり生活かw」

ほとぼりが冷めるまでの辛抱だなどと

まだこの時は悠長に構えて要られた…



バイロンの隠れ家に来たセシルは

彼の前に約束の“使徒の遺体”を置いた

机の上にある黒い液体に満たされた瓶をバイロンはまじまじと眺めた後

「想像とはだいぶ違うがまあいい」

と文句を言いながらもそれを受け取った

「…仕方ねぇだろ、純エーテルの原液をかけたら溶けちまったんだ」

「次は溶ける前の物を持ってこい」

使徒と対峙していないバイロンは、その大変さを知ってか知らずか、そんな注文をつけ

今度はバイロンの方が、セシルの前に小瓶に入った100cc程の純エーテルと、本を差し出してきた

「…何だこの本は」

不思議そうに本を捲り中を見る

内容はどうやらかなり複雑な魔術式らしく、セシルには読解出来ない

「純エーテルを集めつつ

エーテルの研究を進めた

その術式はその産物だ」

アルバートから得たエーテルを操る秘術をヒントに、研究を続けていた彼は

エーテルを用いた攻撃魔法を完成させていたのだ

「周囲に存在するエーテルを集め放つ

技の見た目としては初歩的なファイヤーボールやウォーターガンと大差はないが

“エーテルを集める”という部分が非常に難しい」

エーテルは不安定な物質であり

魔素と結合する事で安定する性質がある

その為、自然に存在する魔素と結合したエーテルを魔素から解離させ

その状態を保つのが難しいのである

マルクスが“全身に浴びるかも”と言ったのは安定を失ったエーテルが

強い魔素の塊である魔族の身体に引かれるということを言っていたのである


それを魔素を元にする、魔力で操るというのだから困難を極めるのも当然だろう

不安定なエーテルを操り幾つもの術式で無理やり安定化させ

その上で放つというこの技は

見た目に反して大技に分類出来るほどの術の工程を踏む必要があり

それだけ必要なリソースも多かった

「私でも一度の使用で魔力切れを起こす」

「…お前がそんな状態じゃ

使える人間なんていねぇだろ」

バイロンはこの世界で一番魔力値が高い人間と言われている

その彼が一度で魔力切れを起こすのだから

彼以外の人間には発動すら出来ないという事になる

「そうだな、人間には扱えない

お前の仲間には居ないか?人外が」

アイスブルーの瞳にジッと見つめられ

何か見透かされているような気分になったセシルは顔を背けた

「…魔族なら…使えたりするか?」

「どうだろうな

ただ、諸刃の剣であることは確かだぞ」

術式を一つでも間違えば

自らが被弾しても文句は言えないとバイロンは言った


使える使えないは後にして

取り敢えず本を持ち帰る事にしたセシルは

それと純エーテルをマジックバックに仕舞い込み、席を立った

「…なあ」

「何だ」

「…お前、使徒討伐に加わる気は…」

「無い」

身も蓋もない返事を返され

だろうななんてセシルはバイロンの隠れ家を後にする

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