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NOSIRP  作者: まるっち
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餅は餅屋

「貴方の肉を分けて欲しい」

言われた通り、ノーシルプのマルクスの部屋に行ったルッツが彼から言われた言葉は、そんな言葉であった

「wwエロwwじゃないんじゃwww

wwwなかったのかよwww」

ルッツのこの反応がマルクスには分からなかった

何故なら彼は真面目にルッツの“肉”を要求していたからである

「痛みを伴わないよう配慮はします

切り取った後も治癒魔法を施すので問題は無いはず

量としては大体5㎝四方もあれば十分ですが…分けて頂けますか?」

無表情にそこまで話されて、“肉”と言うのが隠語ではなく

どストレートに“肉”なのだと解釈したルッツは、それはそれで何でwwwと笑う事になる

「エーテル由来のケガを直すために必要です」

「ま?集めてる最中に事故でも起きた?」

なら、とルッツはズボンとパンツを下ろして勝手にマルクスのベッドにうつ伏せに寝た

「痛くすんなよ?w」

「それは了承ととって構いませんか?」

尻の肉をほんの少しルッツから受け取ったマルクスは、はじめに言ったようにちゃんと治癒魔法を施した

「ちょっと治癒魔法が痛かったけど

綺麗に治るもんだなwww」

今し方、肉を切り取られたとは思えないようなスベスベの尻を撫でる

「貴方の身体が若く健康な証です」

治癒魔法、回復魔法、奇跡…様々な呼び方のある怪我を治すタイプの魔法は

対象の自己治癒力や免疫の時間に作用し

治す速度を早めているだけなのだとマルクスは言った

「幼い子供の方がよく効き、歳を重ねた個体ほど効果が低く時間が掛かります」

特に魔法に興味がないルッツはへーと聞き流した

そして、マルクスはその受け取った肉で

早速自らの怪我の治療を始める

椅子に座り取り出したナイフで躊躇なく腹部の皮膚に刃を入れた

「うわぁ…」

見ている方が痛くなる光景に、ルッツが変な声をあげる

一直線に切り込みを入れたその部分に、マルクスはルッツから切り取った肉を

細かくミンチにしてから押し込んでいく

「ちょwそれ大丈夫?w」

思ってもみなかった治療方法に思わずそれで正しいのかと聞く

「ポーションの材料にするとかじゃないのかよwww

他人の身体って、上か下以外から入れると拒否反応出て死ぬって聞いたことあるけどwww」

「人間はそうなのでしょうね」

全ての肉を詰め込んだマルクスは、傷口に手を押し当て数秒目を瞑った

「…大丈夫?w」

「…はい、お陰で無事に塞がりました」

「いや何でそれで治るのwww」

「あくまで私の見解ですが…」

純度の高いエーテルを体内に差し込まれた事で

それに触れた部分から魔素が溶け出し

肉体を構成していた物がバラバラになってしまったのだろうという

「アルバートは撫でたら元通りだったじゃんw

その腹の怪我はそれじゃダメだったのw?」

「エーテルの成分が残っていたようです」

傷口の全面にエーテルが付着し、更にその部分に融合していたという

それを取り除いてもその周りの肉体が変質してしまったのか、魔力に殆ど反応しなかったので

ルッツに“肉”の提供を頼んだのだと言った

「私は人間と旧魔族の子

新魔族や旧魔族が同じ方法で傷を塞げるかは怪しいですが

一先ず、人間の肉さえ手に入れられれば

私はエーテルで受けた傷の治療が可能だということが分かりました」

「誰が万能傷薬だwww」


マルクスの部屋を出たルッツは共有スペースへ移動した

「やっぱもっと仲間が欲しいよな〜」

ジクスなんかは条件的にバッチリ合うのだが、使徒と戦うという話しには否定的であった

「ジクスは多分まだフラグが立ってねーんだろうな」

ルッツはソファに足を投げ出すように座り、そのまま横に倒れた

「…ちょっと、おたく邪魔なんだけど」

頭上から降る声に顔を向ける

そこには不機嫌なカノープスが立っていた

「おたく個人に恨みはないけど

今は人間ってだけで酷い目に合わせたくなる

サッサとソファから退きな!

寝るなら自分のベッドに寝な!!

それとも2度と目覚めないように安らかな眠りにつかせてやろうか!?えぇ!?」

キンキン声で捲し立てカノープスは苛つきながらソファを蹴った

そんな彼を見て、ルッツは丁度いいやなんて思った

「まあまあ落ち着けってw」

カノープスにソファを明け渡したルッツは、別の椅子をもってきてそれに座る


「アナタハ使徒ヲ信ジマスカ〜?」


ルッツが急に変な質問をしたので

カノープスは冠羽をブワッと逆立て瞳孔を広げた

「あんたバカか!?

使徒を信じるかって?ふざけんじゃないよ!!

自分を神と思い込んだあのクソ野郎共がメルザーガに何をしたか知らないのか!?」

鳥類型の獣人メルザーガも結局のところ“人間”ではない

使徒にとって“ノイズ”である彼らも

他の獣人種と同じく、使徒の気まぐれに駆除され幾度となく追い立てられた歴史がある

そんな彼らが、使徒を憎んでいない訳がない

「あたしに力があれば!

アイツらの翼を毟って焼殺してやるよ!!」

カノープスのその言葉にルッツはニッと笑った

「使徒を殺したいの?w」

「…!」

カノープスはしまったといったような顔をし、翼で嘴を覆った

その発言がとんでもない失言だったと気付いたのである

辺りを見回し誰もいないのを確認すると、慌てたように今の言葉を訂正しようとした

「こ、殺したいってのは例えっていうか…

勢いで出た言葉で…あたしゃ別に叛逆の意識を示してる訳じゃなくて…」

「俺別に使徒崇拝者じゃねーしwww」

「ほ、ほんとかい…?

徒党を組んであたしを殺しに来たり

使徒にこの事言うつもりじゃ…」

「ありえねーw」

カノープスを安心させた後

その耳元に口を寄せルッツは小さな声で囁いた

「俺、使徒を殺そうと思ってるんだわ」

ぶわわっとカノープスの全身の羽毛が逆立った

言葉が出ないのか、カチカチと嘴を鳴らす彼にルッツは再びニッと笑いかけた



ルッツがカノープスの自室に来るのは2度目である

「同じように使徒を殺したいと思ってる

仲間を集めてるんだけど

そういう奴、知らない?」

初めてここに来た時とは違い

ルッツはカノープスの前にある程度の金額が入った袋を出した

カノープスはその袋を奪うように取ると

中身を確認し、懐にしまった

「まあ、まず獣人は基本的に使徒は嫌いだろうね

レプレイスを見りゃ一目瞭然だろうよ

ただ、使徒は強すぎる

獣人が一丸となって立ち向かったとして勝てる訳がないってみんな思ってる」

先祖代々その遺伝子に刻み込まれた蹂躙されてきた歴史と恐怖のせいで、戦う前から心で負けを認めてしまっているのである

それは、大半の人間もそうであり

どんなに使徒に違和感を抱いても

皆一様に「敵うわけがない…」と諦めてしまっているのだ


「使徒は確かに強くて恐ろしい相手だよな」

そんなことは、実際にウラノフェンと対峙し、この身で実感している

「けど、魔王に最初に立ち向かった時だってそうだったんじゃね?って思うわけ」

魔王の支配していた世界で生きていた人間は、きっと魔王には敵わないと諦めて生きてきたのだと思う

だからこそ、今でも尚

魔王を倒した勇者を讃え、倒したその日を祝い続けるのではないだろうか

「やってみなきゃ分かんねーよ?」

「…おたくはあたしを仲間に誘いたいんだろうけど

あたしは戦わない

適材適所ってもんがあんだろ?

あたしはしがない商人だ」

世間が獣人排除を叫んでから

市場に行くことが出来ず、部屋の隅で埃を被っている仕事道具をカノープスはにが虫を噛み潰したような顔で見つめた

「そうそう適材適所

だからさ、俺に売ってよ

使徒を殺したいほど恨んでて、使徒を倒せそうなくらい強い力か意思を持った獣人の情報を」

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