素材を求めて
バイロンの隠れ家を後にした2人は城下街のメインストリートまで戻って来た
「…モリオンもアダマントも鉱石だな」
南門周辺に集まる工房になら売っているだろうとセシルは言う
「それアレっしょ?高いんだろ?www」
先のエーテルの事もあり
ルッツは半笑いでそう指摘した
「…まぁ、安くはねぇよな」
両方とも魔力耐性を高める防具や装飾品には必ず使われるポピュラーな鉱石ではあるのだが
レアリティはC~Bと入手が用意という訳ではない
「…数を集めようと思うとなかなか集まらない
が、鉱山なんかに潜れば
一つ二つは必ず手に入るくらいのレアリティだ」
「絶妙に面倒いやつwww」
「…まあ、だが“もう一つ”はどうだ」
セシルはハッキリと言うのは避けた
バイロンが要求した素材の3つ目が何だったか思い出し、ルッツも渋い顔をする
「正直言って入手難易度は一番低いな」
3つ目の素材“獣人の肝”読んだ名の如くの物であるのなら、獣人を殺す必要がある
「でもそれ倫理的にどうなのwww」
今の時世的に獣人を殺して肝を抜いた所で咎められたりはしないだろうが
ルッツ個人の感情的には出来ればやりたくない方法ではある
「…あの騒動のせいで城下街にあれだけ居た獣人が、1人も歩いてねぇ
奴ら何処にでも湧くから居るには居るんだろうが…
…チッ…少し前なら自分で殺らなくても唸るほど道に転がってたのによ」
セシルは獣人の殺害と、その内臓を抜き取ることに対して
あまり抵抗を感じてはいない様子だ
「俺は殺人はヤダなw鉱石集めね?w」
「…獣人は人間じゃねぇよ
…でもまあ、隠れてる連中を探し出すのも面倒臭ぇしな…」
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「冷やかしなら帰れよ」
“レドモンド装具店”へルッツと2人でやって来たセシルは、店の中に並ぶ
数々の装備品を眺めている時に後ろから声を掛けられた
「…よぉ、デリック」
「あ、気合の入ったおっさんw」
「何の用だ?装備品を作りに来た用には見えないが」
訝しげに2人を見る彼は今の今まで工房で製作をしていたのだろう
あちこちを煤で黒く汚し、金属と機械油の臭いをさせていた
「…ベルグレンツ火山に潜ろうと思ってるんだが、来るか?」
ベルグレンツ火山はコモンゲラートとエルカトルの南の領境にそびえ立つ活火山である
山頂の火口には赤と黒の禍々しいマグマが渦巻き、場所によっては二酸化硫黄のガスが発生している危険地帯である
一方で、ここの火山洞では高レアリティの鉱石を大量に手に入れることもできる場所でもある
「活火山の火山洞か…」
今までで群を抜いて危険な場所への誘いに
流石のデリックも直ぐに返答を返すことが出来なかった
そこへ、この店の店主レドモンドがのしのしと足音を立ててやって来た
「どうした、何か問題でもあったか」
ツルツルの頭に玉のような汗を乗せ、対照的にチンストラップ風の剛毛ヒゲが目立つガチムチ体型の大柄の男が3人を睨む
ルッツは見下ろされながら、どうして鍛冶屋のオヤジは大体こういう風貌になるのだろうと思いながら笑いを堪えるのに必死になった
「…ベルグレンツ火山に向かう為にコイツをパーティーに招待してた」
ルッツやデリックからしてみれば大男のレドモンドだが
セシルにとっては別になんてことはない相手だ
「ほう、ベルグレンツか…いいな!
いいぞ行ってこい!」
「いや、まだ行くとは…」
否定する彼の話など聞かず、レドモンドはカウンターのメモ用紙にサラサラと文字を書き破りデリックに突き出した
それは前回のゲリリート山へ行った時と同じく、鉱石の買取りリストだった
「最近じゃ魔王討伐ムードで防具の需要が上がってるってのに
その材料が高騰してる上になかなか入ってこねぇ!
取りに行ける奴が工房に居るならそれに越した事はねぇからな!!」
大きな手でデリックの背中をバンバンと叩き、レドモンドはガハハと笑うのだった
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城下街から馬車に乗り、ベルグレンツ火山に程近い町を目指す
2つの村を経由して辿りスクフェアの町に辿り着いた頃には夜になっていた
ここで適当な宿に泊まり明日に備える事になる
節約のために一つの部屋を3人で共有することになったが
デリックはこれに不快感を示していた
「…探索の猶予は4日だ、強制送還される前にこの町には戻らなきゃならない」
町からならデリック1人でも馬車で帰れる
最悪なのは、火山での強制送還
湾を挟んでノルウォギガスが近い場所でもある為に、高レベルの魔物が潜んでいる可能性が高い
「ああ、そうだ
工房長が鉱石を沢山採って来れるように気を利かせて装備品を貸してくれた」
マジックバックから2組の耐火グローブと、耐火ブーツを取り出して2人に渡す
「…お前のは?」
「俺は装備して来た、後は…
ほら、簡易的だがガスマスクだ」
チユノバス廃坑で使った魔素用のガスマスクよりも軽く構造が簡単な物だが
これで十分だとデリックは言った
「…事前情報だと下に潜るほど鉱石は出るらしいが、ガスやマグマ溜まりの危険が増す
過去に魔獣の目撃情報も入ってる
…おい、お前
前みたいにただ着いてくるつもりなら迷惑だ、そういうつもりなら宿屋に待ってろ」
「いやいや、今回はちゃんと戦力になるぜ?www
あんま期待しないで欲しいけどなw」
王や騎士団、ギルドでの特訓でレベルも戦闘スキルも上がっているルッツはそう調子良さげに笑った




