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NOSIRP  作者: まるっち
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誰にとっての悪か

マルクスは言った


魔王ベスベチュラは人間が“好き”だ

しかし、その一方で強力な旧魔族であり魔王である

人間の魔王への関心をこのまま放置すれば

いずれ魔王が行動を起こしてしまうこと

そうなれば人間領は未曾有の災害に襲われる

それでは困るのだと彼は言った


てっきり、自分が魔族だから

魔王様が大事!討伐なんて人間許さない!

みたいな感情なのだと思ったルッツの予想は大きく外れた訳だが…


「魔族領では安心して生活が出来ない魔族もいます

この人間領の平穏を守るためにも

早急に魔王討伐をやめさせなくてはならない

例え、今回の人間達の魔王討伐への関心を削ぐことが出来たとして

使徒がいる限り何度でもこの事態は起こる

私の平穏を手に入れる為には使徒を…」

「…兄ちゃんも使徒が憎いのか」

「憎い…?いえ、使徒は邪魔です」


邪魔だから消したい

冷静に思えて、なんとも魔族らしいなとルッツは思った

「使徒に会ったことあるけど

アレに勝てる見込みあんの?

兄ちゃんそんなに強いの?」

一度間近でみた使徒ウラノフェンの恐ろしさをルッツは忘れられない

戦わなくても分かる、圧倒的強者の風格

彼が強いと思っているエドリック王ですら、使徒の前では雑魚なのかも知れないと思うような強大な相手なのである

「私は魔族的にはまだ幼児、それに人間とのハーフであり

旧魔族としての強みは魔力値の高さと回復能力程度、勝てません」

「魔族と人間のハーフなの?www

マジか、魔族と子供作れんのかwww」

大事なのはそこではないのだが

ルッツはもうそれが気になって仕方ないようだ

「私は協力者を求めています

人間のように大っぴらには出来ませんが

使徒討伐を企てているという訳です」

「それ、俺に話すって事は

俺が加わるかもって思ってるよな?w」

マルクスは無表情だが頷いた

「いやwwwあのさwww

確かに俺にとっても使徒は邪魔だけど

俺そもそも強くないしwww」

「貴方の強みは人間であること

我々魔族が腕をもがれる攻撃でも、人間なら擦り傷で済む場合がある

ただ、使徒の攻撃力自体が高い場合はその限りではありませんが…

どちらにせよ、貴方が協力を申し出たからといって

明日にでも討伐に向かうような真似は致しません」

共有スペースで机を拭いていたジクスを見つけたルッツは

なんだか久しぶり会った彼に声を掛けると

ジクスの方も少し驚いたように彼を見た

「少し見ない間に逞しくなったね」

「王にしごかれたり、冒険者にしごかれたり、今は騎士団でしごかれてるからなwww」

今日までの経緯をサラッと話し

ルッツが今、レベル42まで上がったと聞いたジクスは感心し褒めてくれた

「こんな短期間で想像を絶する努力をしたんだね、本当にすごいよ

ルッツは出会ったばかりの頃からは想像が出来ないくらい強くなった

ははは、もう俺も越えられちゃう」

「なあ、ちょっと話があるんだけど

俺の部屋来ない?」

ルッツの誘いにジクスは少し悩むような素振りを見せる

「エッチな誘いじゃねーよwww」

「あ、真面目な話しなんだね?いいよ」

ジクスは共有スペースの掃除を大方済ませ

ルッツについて行った


「…俺の部屋なんか変?w」

部屋の中を見渡すジクスを見て、ルッツは思わずそんなツッコミを入れた

「ううん、ルッツはもう何人かの住人の部屋に入ったことがあるとは思うけど

実は住人によって、最初の部屋の中に置かれてる家具が微妙に違ったりするんだよ」

「え、部屋の家具ってみんな後から好きな物を置いてんじゃねぇの?w」

「住人以外は辿り着けないんだから

家具の配送とか無理だよ?」

ルッツの部屋にあるのはベッド、一対の机と椅子、更に小さな衣装ダンス

それらは全て質素な安物だ

「…たまたま空いてた部屋がそうだったてこと?」

「違うよ、個人の部屋の内容は

入居者が自室への扉を開ける瞬間に決まるんだ

ルッツが“きっとこんな部屋だろう”って思ってるまま具現化するんだよ」

「なら事前に言えってw

そしたら豪華な部屋想像したのにww」

「昔そういう実験をしたけど上手くいかなかったんだよね

なんかよく分からないぐちゃぐちゃした部屋になっちゃって可哀想だったな」


ジクスに椅子を譲り、ルッツはベッドに腰を下ろし本題に入る

「ジクスは使徒を倒そうと思ったことある?」

それまで柔和な笑顔だったジクスの表情が一変した

「もしさ、使徒を倒したいって奴がいて

そいつか使徒を倒す為に仲間を募集してるとしたら…どうする?」

「この世界の使徒を根絶やしにしたい

俺たちの人生を取り戻す為に

…でも、無理だ勝てないよ」

ジクスは使徒を憎んでいる

ノーシルプという人間の為の楽園を創ろうと考え至るまでに、散々使徒の駆逐は考えた

だが、どう考えても彼らには敵わない

だからこうして、隠れて使徒の支配から逃れる方法を模索しているのだ

「なんで勝てないって決めつけてんの?」

自分だって同じことを聞かれたら

「勝てないから無理」と答える癖に

ルッツはジクスに敢えてそんな質問を投げた

「ルッツ…使徒に会ったんだよね?

一瞬でも勝てると思った?

目の前で見つめられているだけで命を落としそうな、焦燥感に襲われたんじゃないの?」

「例えばだぜ?

レベル100になったら勝てるんじゃね?

1人じゃ無理なら、レベル100の奴100人で立ち向かったら…勝てるんじゃね?」

「わ…分からない…」

「バカみたいな事言ってるのは分かってるぜw

でもどうなのかなって思ってさ

実際使徒と戦った人間っていないと思うから

そもそも、勝てないっての思い込みなんじゃないかなーって最近思ったんだよなw」

ルッツに言われて、ジクスは確かにそうかもと小さく呟く

「だとしても、俺のレベル43なんて使徒にしてみたら雑魚だよ」

「まあ、そうだよな〜

レベルはまだまだ足りないよな

せめて魔王くらい小指で倒せないとwww

…いっそのこと俺らで勇者目指してみるか?」

急に勇者を目指すと言い出したルッツに

ジクスは呆気に取られたが、ふぅとため息を吐きながら柔和な笑顔に戻った

「ルッツって発想が面白いよね」

「人間の楽園を創ってる奴がいう?www」

部屋を出て行こうとするジクスの後ろ姿に

考えといてよとルッツは言葉を投げる

呆れたように、はいはいと返事をして彼は出て行った


「最後に勝って語られるのが正義なら

その敵が誰だって負けた奴が悪に違いないってね」

今のままでは到底勝ち目はないが

ここまで這い上がってきたルッツだからこそ

やってやらない事はないと強く信じていた

彼の原動力は、全て老ゾンビミゲルと人間領で平穏に暮らす為なのである

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