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NOSIRP  作者: まるっち
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プライド

ルッツは王に連れられ兵舎の庭まで来た

そこでは今非番の者達が、稽古をつけていたり

自主練などの鍛錬に励んでいる

王は兵士達の試合を腕組みし眺めていた中年の男を見つけると声をかけた

「パスカル、丁度いい所にいた」

「…エドリック王、何の用だ?」

パスカルはクリスタルレイの騎士団長を務める男であり

エドリックの従兄弟でもある

エドリックのことを王と呼びながら、何処か不遜な態度はその関係性と先の反乱のせいだろう

「この男を暫く騎士団に置いてくれ」

王は隣に立つルッツの背中を押し、一歩前に出させた

「暫く?殉職するまでではなく?

そんな半端な奴は…」

パスカルは王の要求にケチをつけようとしたが、ルッツを見て目を剥いた

「ラナン…ふむ、いいだろう

見る感じ伸びしろのありそうな若者だ」

「では頼む」


エドリックとは別れ、団長のパスカルに着いてくるように言われたルッツは素直に彼に従った

「クリスタルレイの騎士団は団員に対して住む場所の世話もしているが…」

「帰る場所はあるから大丈夫w」

「そうか、まあいい一応案内しておこう」

兵舎の中へ通される

「ここの建物には医局と食堂、居住区があり

団員なら全て無料でサービスを受けることが出来る」

二階にあがり角の部屋の前まで来ると、パスカルは扉を開いた

「ここは団長室、私の執務室だ

私は基本ここか、庭にいる」

入るようにと促され、中に入るとパスカルは部屋の鍵を閉めた

「入団書を書いてもらう

そこに座ってくれ」

ルッツはペンと紙を渡されたので

それを出来るだけ埋めるが、そもそも騎士団員になれるような人物に自分のような身分は含まれていないのだなと

再確認させられるような書類であった

「…ほう、字も書けるのか」

ルッツから受け取った書類に目を通しながら、感心したようにパスカルは言う

その後、引き出しから騎士団員の証を出しルッツに渡した

「明日の朝5時から庭での鍛錬に参加してもらう、今日は帰っていいぞ」


かくして、ルッツは次の日から騎士団に通う日々が始まった

早朝から始まる鍛錬

入団したばかりの人間が現場に出るまでに早くても1ヶ月は掛かるらしく

その間はひたすら鍛錬に励まねばならない

ルッツはここで日がな一日、他の騎士達にしごかれる事になる

王から受けた特訓よりも厳しいトレーニング内容だが

それを周りの騎士達はこなしいているのだ


心が何度も折れそうになりながらも

何とか他の騎士達に追従し、1週間が経った頃

庭での鍛錬中にパスカルに後で部屋へ来るようにと言われ

その日の課題を何とか終え、ヘトヘトになった状態で団長室に向かった

兵舎の二階へ登る階段で、不意に知った顔とすれ違う

「あ、金髪の兄ちゃん」

それは紛れもなく同じノーシルプの住人であるジョージ・マルクスであり

彼は立ち止まり、声を掛けてきたルッツに視線を向けた

「…何か?」

「そういえば、あんた騎士だったなって」

「用がないのであればこれで」

マルクスは階段を颯爽と降りて行く

「用があれば会話できるってことかw」

彼の塩対応に怒るとか悲しむとかではなく

そんな解釈をして、ルッツは団長室の扉を叩いた


ややあってから入れと言われ

扉を開けたのと同時に、むっと鼻についた部屋の中の臭いにルッツは少し眉を顰めた

「…団長、どういったご用件で?」

「お前専用の装備が出来上がった」

執務用の机の横に、1人分の鎧と剣がある

それは普通の成人男性の物よりも少し小さめである

「俺専用?え、ただで貰えるの?w」

早速着てみろと言われたが、いつも革の鎧などの軽装しかしないため

こういう鎧の着方が分からない

「どうやって着るのwww」

「何だお前、そんな事も分からないのか」

パスカルが立ち上がりルッツの隣に立つ

「先ずジャンベゾンを着る」

彼がルッツにパッド入りの上着を着せてくれるが

その手つきは妙にイヤらしくルッツの体を撫でているように思えた

「ズボンはこれだ、履き替えろ

ホーズは…付けてやろう」

ホーズは股引きなのだが、そこで疑惑は確信に変わった

パスカルの手がルッツの局部に何度も触れる

普通の人なら、気持ち悪がるのだろうがそこはルッツである

「次は脚部の装備を…」

鎧掛けから装備を取り外す為に背を向けたパスカルの背中にルッツは抱き付いた

「扉を開けた時から纏わりつくようなエロい臭いがしてた…

なあ、ここでナニしてたのか教えてよ」

ルッツはパスカルの腹側に回した手を、ゆっくりと下へ這わせた

「…ラナンキュラス…そうなんだろ?」

振り向いたパスカルの上気した顔

うっとりと蕩けた瞳にルッツを映し、彼はルッツの頬を撫でた

娼館ローズポッドで使っていた源氏名を呼ぶということは

あの時の客の中に彼がいたという事である

勿体ぶるようにパスカルの股間を撫で、その耳元に囁いた

「俺のこと覚えててくれたんだ?

ローズポッドの徒花、ラナンキュラスのことを…

ねぇ、花を摘む時はどうするんだっけ?」

妖しく微笑みパスカルの唇を奪った



「おーい兄ちゃん、何してるのー?」

兵舎の庭で1人打ち込み台にひたすら攻撃を加えていたマルクスにルッツが、声を掛けた

ヘラヘラと手を上げ近づいて来る彼を、一瞬チラッと見てマルクスは無言のまま打ち込みを続ける

「あれー?聞こえなかった?」

「何か用ですか」

すぐ近くにまで来たルッツに抑揚のない機械的な返事が返る

「さっきすれ違った時、パスカル騎士団長の部屋から帰る途中だったんだろ?

…俺が行くより前にヤッてたのあんただよな?」

「それが何か?」

「あ、否定はしないんだwww」

ルッツはまさかの返事に思わず笑う

「前におっさんと部屋に呼ばれた時とか

そんな風には見えなかったんだけど

案外、好き者なんだなw」


マルクスの攻撃のラッシュが打ち込み台に入り、根本の部分の木がバキッと音を立てて折れ

人型のカカシが鈍い音をたてて地面に転がった

そんな攻撃を放った後でも呼吸一つ乱さず、マルクスは剣を鞘に収めた

「いいえ」

「好きでもないのに抱かれてんのwww」

「従った方がことが上手く進みます」

そう言いながら、カカシを抱き起こし兵舎の壁に立て掛ける

よく見れば、そんなカカシがもう何体もあった

「あ、長いモノに巻かれるタイプねw」

マルクスの見た目はかなり整っている

スラリと長い手足、程よく引き締まった身体、肌は透き通るように白く

美しい金色の短髪と整った顔の中に目の覚めるようなサファイアの瞳を持っている

その美しさに、きっと何処かの高貴な生まれなのだと思わずにはいられない


この綺麗な男に欲情するパスカルの気持ちが分かる気がするとルッツは思いつつ

そんな男が何故ノーシルプに居るのか気になっていた

「騎士団員は衣食住が保証されてるのに

何でノーシルプなんかにいんのw」

「…これは忠告です、その名を軽々しく口外すべきではありません」

一日の鍛錬を終え、帰路に着いたマルクスの後ろをルッツはついて行く

着いて行くというか、帰る場所が同じなのでどうしてもそうなってしまう訳だが

何となく手持ち無沙汰なルッツは

少し足を早め、彼の隣まで来て話し掛けた

「昼間の話、どうしてノーシルプに?」

丁度、件の場所へ向かう為に不思議な路地裏に入ったところだ

「魔女を追うためです

…私からも一つ宜しいですか

貴方はあの時、嘘をつきましたね」

マルクスは足を止めルッツに向き直った

え?と惚ける彼を見下ろす目は冷たい

「あの時は感じられなかった

魔女の気配を貴方から感じる」

「そんなこと言われてもw

何かされたかなんてよく分かんないしwww

だとしてあんたに関係なくね?w

てか、何でそんなこと分かんの?」

ノーシルプへの特殊な道に入っているので、人通りはなく

ルッツとマルクスの2人しかその空間には存在していない

「私は魔族です

魔女は犯罪者であり討伐対象

そして我々は人間を守る義務がある」

「…魔族なのwww

魔族って案外何処にでも居るよなw

今魔族とかバレたら殺されるじゃん

俺に言っちゃって大丈夫なのwww」

「貴方では私には勝てない」

つまり、口を封じるのは簡単だということだ

マルクスはルッツから視線を外し再び歩き始めた

「殺気エグw

俺の魔族の友達と恋人は危険だからって魔族領に帰ったけどその方がよくない?」

「ノーシルプからは離れられません

それに私はここでやらなければならない事がある」

「え?何?」

ノーシルプの玄関が見えてきた


「魔王討伐の阻止、或いは使徒の駆逐」


彼の声は抑揚がなく感情が感じられないが

その言葉には強い意志を感じた

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