勇者になりたい男達
戦士達は3人のパーティーだったらしく
まず一番背の低い男が試合場に上がってきた
「我が名はシルヴェストン・マルタン!
卑怯な技はなしだ、いざ尋常に勝負」
マルタンは試合用の剣を抜き切り掛かってきた
彼のレベルはルッツより若干高い
前までのルッツなら背中を向けて逃げ出していただろうが
自分でも意識しないで剣を使いマルタンの攻撃受け流すことが出来た
「おわっ…!」
それはまぐれではなく、何度も向かってくるマルタンの太刀筋が
不思議と見えるのである
「ぬぅ!ちょこまかと!!」
何度攻撃しても全て受け流される事に腹を立てたマルタンは、次第にその太刀筋が荒くなり単調に、そうなると隙も大いに増える
単純化した攻めを見切ったルッツは、素早く相手の脇腹に剣をヒットさせた
「ぬがっ!!」
マルタンは変な声をあげ、痛そうに脇腹を抑えて後ずさる
「マルタン、交代だ」
次に出てきたのは一番背の高い男
彼は剣を抜き構えてから名乗る
「ジョナサン・パテンデン
俺はそう簡単にはいかないぜ」
高所から振り下ろされるリーチの長い攻撃
何度か当たりそうになるのを、間一髪で避けながらルッツは彼の攻略法を探る
そして、相手の高身長を逆手にとって近距離での攻めを試みた
パテンデンは一振りが大きため、動作にもたつきが生じるうえに
自分に近ければ近いほど対応に遅れるのが分かったからだ
(こいつは足だ…!)
パテンデンの足に一撃入れたのとほぼ同時にルッツの肩に激痛が走った
見れば右肩に突き立てるように剣を刺されている
「ーっいってぇええ!!!」
しかし、相手もモロに攻撃を受けたので
その場に膝を折ってもんどりうっている
「今のはドローだな!」
ルッツがはじめに話しかけた戦士の男が、拍手をしながら声を上げた
そして、ルッツの所まで歩いてくると
肩を押さえて悶えていた彼に手を差し出してきた
「俺はノエル・ガルヌラン
お前ただの盗賊崩れだと思ってたが、なかなかやるじゃねぇか」
名前は?と聞かれルッツは答えると、ガルヌランは彼を立たせた
「さっきはすまなかった、お詫びに何か飯を奢ろう
一体どこで習ったか知らないが素晴らしい動きだった」
マルタンとパテンデンも謝ってくる
ギルドの建物の中に戻り、ガルヌランの奢りで料理を注文すると
最初の刺々しい態度は一転して3人はフランクに話しかけてきた
何でも3人は魔王討伐の為にはるばるラビフィールドからやって来たらしく
ここに来る前はラビフィールドで兵士として働いていたのだと言う
「魔王の討伐!勇者!大冒険!
これは幾つになっても男のロマンだ
自分が勇者だと思ってきた訳じゃないが
少しでもこの話題に触れたいのさ」
「まあ、ワンチャン勇者だったらとはみんな考えてるよな」
ガハハハ!と男達は笑う
「レプレイスで語り継がれる伝説の勇者様は、なんでも農民の出だって話しだ
そう考えると身分じゃねぇんだよ」
マルタンはそういい、ビールをぐっと飲み干した
身分に囚われないという思想は共感できるが、魔族の友達が居る身としては
あまり魔王討伐にワクワクは出来ないルッツは、運ばれてきたトマホークステーキに手を伸ばす
「そういえば、お前は何レベルなんだ」
「俺?今は42だぜ?」
ガルヌランはルッツのレベルを聞くと少し驚いた
「2人ともどっちかっていうと後衛の格下にやられたのかよ」
「俺はドローだ!負けてない!」
「いや確かに負けたが、コイツの動きはレベルに見合わないぞ」
今まで雑魚と馬鹿にされることしか無かったルッツは少し気分が良かった
3人とはまた手合わせすると約束をして
その足でエドリック王の鍛錬を受けに行った
ルッツは鍛錬場で待っていた王に
ギルドでの事を話し、そして…
コテンパンに負け続けた
「ちょwまっwwwなんか今日一段と厳しくない?www」
王にしばき倒され、地面に突っ伏したルッツは苦言を呈した
「あ?そりゃお前調子に乗ってるからだ」
確かにルッツは元の彼からは想像が付かないくらい強くなった
だが、まだまだ王にしてみれば弱い
少し褒められただけで、天狗になっているようでは
すぐに足元をすくわれるぞと王は厳しく言った
「どんなに高レベルになっても強くなった気になるな!
そういう油断がお前を弱くする!」
ギルドでルッツに負けたマルタンがいい例だと王はいう
確かに彼はルッツよりもレベルは上であったが、ルッツの見た目とジョブで完全に油断していたのだ
「…王様は馬鹿みたいに強いじゃん
それでもそんな意識でいんの?w」
「当たり前だ、俺より強い奴なんざ世界に沢山いる
王という立ち場だからこそ気など抜けん
強い奴は大体がそうだと俺は思っている」
ルッツはコレに思いたる事があった
老ゾンビミゲルを救出したダンジョンに同行してくれた2人である
あの2人は、魔力をセーブしてはいたものの
巨大ウジを軽んじる事はなく
全力で踏み潰して、確実に息の根を止めていたのである
「あーなんか納得w」
「…お前は精神の修行も必要そうだな」
ルッツがある程度強くなったことと
他の人間と手合わせの数をこなせるようにと、王がクリスタルレイの騎士団への入隊を勧めてきた
「先の反乱で何人もの兵士を失ったので席も空いている、どうだ?」
「えー、俺の夢は国を作って王になる事なんだけどwww
騎士になりたい訳じゃないだけどwww」
「ずっと騎士でいろとは言わん
騎士は常に互いに手合わせを繰り返し鍛錬を積んでいる
そこへ入らないかと言っているんだ」
「好きな時に辞めていいなら?w」
こうしてルッツは当初目指していた
王室入りを遂げることになったのだ




