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NOSIRP  作者: まるっち
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青いスペクトルの光

「ーチィッ!しつこいなぁ!!」

白銀の狼に姿を変えたキースは、エルカトルの草原を颯爽しつつ隼の様に追ってくる使徒から逃げ悪態を吐いた

レプレイスの時は事前に使徒降臨が分かっている為、彼やヴィルヘルムは魔族領に戻っているのだが

今回の降臨は急なことであり、キースも他の魔族同様に使徒に見つかってしまったのだ


マルクスはたまたまノーシルプに戻っていたのでこの難を逃れる事になったが

ヴィルヘルムとキースは何とかして今の状況を打開しなければならない

「クソ!失せろよ!!」

振り向きざまに絶対零度の息を吹き掛けたが、使徒が持っていた盾でそれを退けた

キースは決して弱いわけではない

一国の四天王とまではいかないが、それに近い実力は持っている

それはヴィルヘルムも同じであり、彼がいる場所から南西の方角で火災旋風が巻き起こったが

キースに合流しない辺り、まだ使徒に追い続けられているのだろう


使徒が放った光の槍が、キースの右後ろ足を貫いた

「グぁああ!!」

筋組織が焼き切れる激しい痛みと、走っていた速さのまま

キースは地面を相当な距離転がった

何とか逃げようともがくが、右足は思う様に動かない

そんな彼の目の前に使徒が降り立つ

「クソッタレ!俺を誰だと思ってッ…!」

「ベスベチュラの猟犬、キースでしょう?」

使徒はニッと口だけで不気味に笑う

「お前達は、我々に生かしておいて貰っているという自覚が足りない」

使徒はそのまま、光の剣を出し

ゆっくりとキースに近付いた

広場に大量に転がった魔族の遺体を

満足気にウラノフェンは見下ろしていた

そこへ、四方へ飛び去ったうちの1人の使徒が戻ってくる

そして戦利品と言わんばかりに魔族の死体をまた一つ積み上げた

「いい狩りだった、ほらこの魔結石」

バレーボール大の血濡れの輝く結晶をウラノフェンに見せた使徒が微笑む

更に後から飛んできた使徒も同じ様に大きな魔結石を抱えていた


城下街の“浄化”が済んだ


満足した使徒達は王やスノームースの領主達に警告を与え

彼らは天高い雲の間に飛び去った

使徒の住む場所

それは人間の辿り着けない空の上にある

分厚い雲の層を超え、雷雲や氷の塊が降り注ぎ風が吹き荒れる積乱雲の中にそれはあった

ぽっかりと穴が開いた様な、光すらも吸い込んでしまう真っ黒な球に使徒達は飛び込んでいく

そして、その真っ黒な球を突き抜けた先には、使徒しかいない世界が広がっているのだ


「ポロニア様」


そうウラノフェンが呼ぶと、辺り一体からワサワサと白い物が集まり

白い球体を作り上げた

そしてその球は、モゾモゾと蠢き中から幾つもの目玉がプリッと表面に出てきて、その幾つかがウラノフェンを見る

『魔結石の匂いがする』

白い球体はザワザワ蠢き、その波が一本の腕を使ってウラノフェンの前に手のひらを広げた

「お納めください」

ウラノフェンは大小様々な魔結石をその手のひらに乗せて跪いた


「…エドリック・カルネウスがベスベチュラと不必要に通じていました

今回は不問としましたが、この問題は非常に大きいと私は思います」

幾つもの目の視線が全てウラノフェンに注がれる

『カルネウスは好きだ…とても質がよくそして多産だ

今年も9名…召し上げた』

「その通りです」

『ああ、ベスベチュラ…邪魔だな…』

「始末しますか?」

『旧魔族は強い…我々が如何に改良に改良を重ねこの世界で一番と思えても

奴は…奴らは一筋縄ではいかない

現に“ラディウス”はアレにやられしまった』

「では、このまま何もせず様子を見ますか?」


白い球体の無数の目は瞳を閉じた

そして、次に目を開いた時

青かった瞳の色は金に変わっていた


『“また”人間にやらせよう』



  はまだ生まれたばかりの使徒である

丁度良さそうな人間の男を1人選んで

ヴァセリン・ヴェールとして人間領へやってきた

彼は今だに混沌としたエルカトルの城下街に入り、修道院を探す

そして、見つけた使徒信仰の教会で派手に演説をした


「聞け民衆よ!今また目の前に魔族の支配の手が迫っている!!

王は魔王に騙され、我々の世界は終末へ進みつつあるのだ!

見よ!この混乱を!魔王の呼ぶニゲラが世界を覆う前に目を覚ますのだ!!」


教会の聖職者は、突如現れ演説を始めた彼を煩わしく思い

外へ出そうと彼を取り囲んだが

教会へ祈りに来ていた民衆は、ヴァセリンの演説を望んだ

「やっぱり!ニゲラは魔族のせいなんだ!」

「魔族は根絶やしにしなければ!!」

騒ぎ始める信者達に、聖職者達が鎮まれ!と声を上げた瞬間

ヴァセリンは腰から青く光る剣を引き抜き天に掲げた


「これを見よ!!この剣こそが私が使徒様の伝道師たる証!!

聖なる光を宿す聖剣である!!」

群衆も聖職者もその聖剣を目の当たりにしてどよめく

「あぁ…あれはまさしく…聖書に記されし聖剣の輝き…」

「勇者様だ!」

「どうか哀れな子羊をお救いください!!」

「伝説の勇者様!」

その場の全ての人間が跪き祈りを捧げた

しかしヴァセリンは剣を鞘にしまい首を横に振った

「私はただの伝道師、この聖剣を真の勇者にこれをお渡しするのが役目

勇者はいないか!?魔王を倒し再びこの世界に平穏をもたらす真の勇者よ!!

今こそ名乗りをあげよ!!」

このヴァセリンの演説は瞬く間に城下街

それに留まらず世界へと広がった

それほどに世界の異変は人々に危機感を与えていたのだ…


城の兵舎でこの話を知ったマルクスは無表情ながらいい気分ではなかった

彼は末席とはいえ、今討伐を企てられている魔族領の王ベスベチュラの息子に当たるので当然である

城下街へ一歩足を踏み出せば

街中が打倒魔王に沸き起こり、わざわざ報せなくても耳に届きそうではあるが

魔王へ報せる必要性を感じた

しかし、自分はノーシルプに囚われ魔族領まで帰ることも出来ず

配下のヴィルヘルムとキースも行方が分からなくなっている


各国から“我こそが真の勇者”だとして

集まり始めた冒険者崩れは、今のところベスベチュラの足元にも及ばず

四天王どころか、魔族領に辿り着くことも叶わない輩ばかり

なので、自身の親が負ける結末はマルクスは一欠片も想像はしていなかった

ただ、気になるのは

先の使徒による城下街の浄化

この暴動はほぼ確実に使徒が噛んでいる

そうなると少し話が変わってくる

幼い頃に読んだ遥か昔の文献に

時の魔王が使徒の手を借りた人間によって滅ぼされ、魔族は地の底に追いやられたと書かれていた


ベスベチュラは人間が“好き”だ

人間が主体性を持って攻撃をしてきたところで

子猫が戯れてきているくらいの感覚しか覚えないだろうが

使徒が後ろで操っているとなれば…

「滅ぼしてしまう…」

怒り狂った旧魔族が、人間領で暴れたらどうなるか

きっとそれは災害であり災厄に違いない

そうなってしまうと、彼自身も住む場所に困ってしまう

この最悪なシナリオを回避する方法をマルクスは考えた


(使徒を滅ぼすか)


それは魔族とっての念願であり

そしてこれまでずっと誰も叶えられずにきた壮大な夢である

ベスベチュラの息子、マルクスはこの無茶な話を1%でも叶えられる糸口を探すことを決心した

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